入学
神や天使、悪魔が住む世界がある。だが人間達はそんな事知る余地も無い。
3年前、1人の人間の少年が神様に拾われた事に物語が始まった。
少年を拾った神様の名前はアマノと言った。だがアマノは少年の目の前で死んでしまった、ある神が仕組んだ戦いによって。
その戦いを仕組んだ神はクルーニャと言う。だがその神はその人間の少年によって地獄に落とされた···はずだった。
「緊張する」
少年はアマノの力をアマノの目と共に引き継ぎ、神になった。
その少年が僕だ。今日から人間の世界で学生として歩む。目の前には大きな学園、季節は春。本当は中学1年生として入学したかったけど···仕方ない。
「大丈夫!ジャックならすぐに馴染めるよ!」
隣には僕に勇気を与えるお姉ちゃんがいる。
血が繋がっている訳じゃないが僕にとって本当のお姉ちゃんと変わらない。
名前はリン。僕のリン姉ちゃん。
「じゃあ、僕は先生の所に行く」
「じゃっ!また!」
僕もお姉ちゃんもそれぞれの教室に向かう。僕は担任の先生の元へ、お姉ちゃんは高等部へ。
しばらくすると先生と共に僕が生活していく教室に向かった。
「一応聞くけどその髪、地毛かな?」
先生は僕の真っ白な髪を横目で見ながら言う。
校則違反だったかな?
「はい」
「じゃあ、魔導師なの?」
「いえ」
「けど魔法は使えるんでしょ?それとも霊媒師?」
「なんで魔法を使えるって分かったんですか?」
「······」
先生はエスパーなのか?一瞬で僕が魔法を使えると見破った。もしかしたら正体もバレているかもしれない。
「じゃあ、待っててね」
先生がそう言って教室に入って行き、しばらくすると「入って来なさい」と言われた。
僕は深呼吸して教室に入る。
「髪が白い?魔導師か?」
「そんな事よりすっげぇ〜可愛い!違う世界から来た見たいだ、神秘的って言うかなんて言うか」
などと入ってすぐに聞こえた。みんな僕を見ながら何を言うか待っている。
「転校···してきた?···ジャックです、よろしくお願いします」
パチパチと拍手された。みんな見た感じいい人そうだ。
なんだか安心した。
「ジャックは···アーサーの隣だな」
先生がそう言うと1人の男の子が立ち上がって
「先生!アーサーは女子苦手だよ!俺の隣にしたら?」
「おまえ、隣に来て欲しいだけだろ···」
みんなケラケラと男の子を見て笑う。男の子は少し恥ずかしそうに座る。
雰囲気が良い、ここなら僕も普通に学園生活を送れそう。
「静かに!そんな理由で席は変えません!それにジャック君は男ですよ!制服良く見てみな」
先生がそう言うとみんないっせいに僕を見てきた。
そしてよーく制服を見ながら
「「「ええー!」」」
「確かに中性的だけど···いや、女だろ!」
僕は少し恥ずかしくなりながらも先生が指定した1番後ろの席に着く。
あまり女と間違えられるのは好きじゃないが···慣れっ子だ。
「あのー、って寝てる」
隣のアーサーと言う子は寝ていた。金髪だが···この人も地毛かな?
「まだ、俺は···?え?誰?」
僕に気付いたようだ。眠そうに目を開けて目を細めて見てくる。
印象は爽やか少年、この人も優しそうだ。
「え!転校生の···あ、よろしく、俺はアーサーだ、だよ、気軽にね、よろしく」
アーサーは突然顔を伏せて顔を赤くする。そしてチラチラと僕を見てくる。何か言いたいのかな?
「何か言いたいの?」
「いや、えっと···俺は女子が苦手なんだ、だからって気を使わなくても良いけど···顔を伏せてても別に嫌いな訳じゃないから勘違いしないで、ね?」
「···」
寝ていたから聞いてなかったのか。しかも顔を伏せているから制服をよく見ていない。
「よく見て、僕、男だよ?」
「え?あ、ああー!本当だ!なーんだ!ははっ」
アーサーは慌てながら少し恥ずかしそうに頭を抑える。
「よし!君の名前は?」
「じゃ、ジャック」
「ジャック!困った事があったら遠慮なく言ってくれ!気を使わなくていいぞ!」
男だと分かった途端雰囲気がガラリと変わった。
見た目は気にしないんだな。
「ん?髪が白?魔導師か?」
「え?違うよ···」
「あ、白髪···美少女···君って!」
アーサーは何か気づいたように立ち上がる。
「アーサー!後で職員室来い」
「え?」
だがアーサーは職員室に呼ばれ休み時間に入る。大声で立ち上がったから今頃軽く怒られているだろう。
アーサーが職員室に向かったと同時にクラスの皆が僕の周りに集まって来た。
「ジャック君って魔導師なの?」
「え?違うけど···」
「じゃあ霊媒師かな?魔法使える?」
このクラスは先生だけじゃなく生徒までエスパーなのか?なぜ魔法を使えると分かるんだ?何かカラクリがあるのか?
「なんで魔導師だと思ったの?」
「だって髪が白いしょ?魔導師は9割髪色が特殊だから!もしかして···知らなかった?」
「あ、いや、そうなんだ」
どうやら魔導師、それと霊媒師と呼ばれる者はほとんどが髪の色が特殊らしい。 入学からしくじった。
「けど、ジャック君が男で良かった〜、私のアーサーが取られる所だった」
「私のって、勝手にアーサーを取らないの!」
休み時間が終わると授業が始まりアーサーがチラチラと僕を見てくる。何かカンに障ることでもしたかな?
「ど、どうしたの?」
「昨日···夜、俺を助けたのはジャックだろ?」
「···」
昨日の夜、魔導師2人に男の子が 1人が襲われていた。それを助けたのは確かに僕だが···まさか助けた人がアーサーだったとは···。
それにさっき魔導師じゃないと答えたから、誤魔化すのが難しい。
「あ、アーサーだったんだね?まさかこんな場所で会うとはー!」
「ジャック、君って魔導師じゃないんだろ?なのに昨日の2人の魔法を受けて何とも無かった···魔法を使ったようにも見えなかった、君は何者だい?」
ヤバい、怪しまれている。どこが怪しい点か分からないが···取り敢えず嘘をつかないように誤魔化そう。
「彼らの魔法が弱めだっただけだよ」
「嘘だ、奴らはSランクの反魔導師、つまり1番ヤバい位の犯罪者って事だ、そんな彼らの魔法を2発食らって耐えた····奴らも君に恐れて逃げた、有り得ないんだよ」
やらかした。もう少し魔導師について詳しく調べるべきだった。まさか入学早々正体がバレかけるとは。
それにアーサーは賢い、変に誤魔化したら更に怪しまれる。
そうなったら仕事も学園生活も安心して出来ない。仕方ない···
「絶対に言わない事を約束してくれ」
「分かっている」
「僕は···この街の神様なんだ」
「···厨二病?いや、学年的に中二病か···」
「違う!」
せっかく言ってやったのにボケで返すなんて···なんか悔しい。
「けど、誤魔化しているだけかもしれない···放課後、それを証明してくれ、してくれないなら君の正体を一生探る。」
「·····ストーカー体質」
「違う!」
放課後。僕はアーサーを連れて街にある小さな森を訪れる。
森に入ると小さな森に収まるはずの無い大きな空間が現れる。
中央には廃墟のようなビルがありその周り草原で囲まれている。更にその草原を囲むように森が続いている。
「こんな小さな森にこんな場所が···だがこれは魔法の類だろ?」
「こっち」
僕はアーサーを案内しながらビルの上まで飛ぼうとする。
「え?宙に浮いてる?それ魔法?」
「いや、もしかして···飛べないの?」
「普通は飛べないよ!すげぇ!」
どうやら魔導師は神や悪魔と違って飛ぶことが出来ないらしい。仕方ない。
「分かった、ほら」
「うあ!飛んでる!」
僕はアーサーを浮かせてビルの屋上まで来る。
ビルの屋上は広くお花畑になっている。少し離れた場所には白雪姫が入っていたガラスのケースのような物がある。
「これは?人!?まさか···白雪姫?」
アーサーはガラスに入った美しい白髪の人を見て驚く。
眠ったように死んでいる。だが肌ツヤは良くまるで生きているようだ。
「この人は元々この街を守っていた神様、僕の目はこの人の目なんだ。」
「綺麗な···人だね」
「元々僕は人間だった、この人が死んだ時に僕を神にした、大した証拠じゃないけど信じてくれるかい?」
アーサーはコクリと頷き僕をゆっくり見てくる。思ったよりあっさり信じてくれた。
普通ならもっと戸惑ったりするはずだけど···話が早くて助かる。
「名前は?」
「アマノ···僕の1番の人だよ、永遠にね」
僕の正体が神様ってのがバレたのは痛かったが、まぁ良い。きっと良い方に繋がってくれる。
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