覚悟
土曜日が終わり日曜日が終わった。
そして月曜日が始まり同時に学園が始まる。
その日はいつもと違い教室がざわついていた。
「様子がおかしい」
「···」
アーサーは何か知っているようだった。
そしてホームルームの時間が来ると先生が教室に入ってくる···はずだった。
教室に入って来たのはシェン先生ではなくミハエルだった。
「え?ミハエルさん?」
「皆、落ち着いて聞いてください。シェン先生が亡くなりました」
クラスの皆は更にざわめく。
「2日前、ユグドラシル内にスパイとして潜入していた科学者によりシェン先生は殺されました。今日から俺がこのクラスの先生です」
その日クラスの雰囲気は暗かった。
シェン先生は明るく生徒思いの優しい先生。
ユグドラシルに来て2週間と言う短期間だったが生徒達は皆シェン先生の死を悲しんだ。
そしてその日の夜に葬式が行われた。
ユグドラ学園の先生やミハエル、いやミハエル先生は真っ黒な服を着て参加した。
僕とアーサーとアリスも制服を着たまま参加した。
葬式が終わった頃には外は真っ暗だった。
関係者の人達が葬式の片付けをしている中、アーサーはミハエル先生の元へ行く。
「あの、ミハエル···先生」
「何だ?」
ミハエル先生は目も合わせずに椅子に座りながら目を細めた。
「な、なんでシェン先生が科学者のスパイに殺されたなんて嘘を付いたんですか?」
「これが正しい嘘の使い方だから」
ミハエル先生がそう言うとアーサーは少し悲しそうな表情をして、
「俺が先生を殺した、ようなものだ」
「死んでも仕方ない事をしていた悪人だ、仕方ない」
「····分かってるんです。俺は、もっと強くならなければならないんです」
アーサーがそう言うとミハエル先生は椅子から立ち上がりアーサーの頬を叩いた。
「黙れ、父親の復習しか考えないヒヨっ子が」
「···自分の愚かさが許せないんです」
「ほぉ?じゃあ絶対に許すな」
ミハエル先生はそう言ってその場を立ち去る。
アーサーは膝を落とし泣き崩れる。
決して悲しさで泣いている訳じゃない、何がアーサーを泣かせているかはアーサー自身も分からない。
愚かで未熟な自分が嫌になる。
「悪いのは七つの大罪でもシェン先生でもない····俺だった」
そしてアーサーは泣き疲れながらも寮へ帰る。
だが向かったのは自分の部屋では無く僕の部屋だった。
アーサーは僕の部屋の前で立ち尽くす。
だがノックをする事はせず自分の部屋に戻る。
クラスの雰囲気が暗かったのは1週間で終わった。
そして金曜日の放課後、アーサーはミハエル先生の元へ行く。
「何の用だ?」
「俺には師匠が居た···けどその師匠は2年しか俺に鍛えてくれなかった。その師匠は七つの大罪のラースより明らかに強いが俺から会う事は不可能」
ミハエル先生はアーサーを見て目を細めながら、
「何が言いたい?師匠の自慢か?」
「単刀直入に言います、俺の師になって下さい」
「先生は師匠みたいなものだろ?」
「違います、魔導師として鍛えてください」
「分かった。まずは24時間365日、体に魔力を覆い続けろ」
「は?不可能です!まず1時間も持たない、それに寝る時は無理ですよ」
「じゃあ師にならない」
「逆に先生は出来るんですか?」
「出来ない。だが強くなりたいんだろ?」
「わ、分かったよ!」
アーサーはそう言って部屋を出ていく。
そして学園の屋上で瞑想をしながら体に魔力を覆う。
授業でやったように体に丁寧に魔力を覆う。
1時間経った頃には汗が大量に出ていた。
そして息苦しくなって過呼吸になり魔力を解除する。
「はぁはぁ、馬鹿だろ!俺でも2時間で限界だ!」
アーサーは呼吸を整えてメモ帳とペンを取り出す。
そして最高記録を書き留める。
「魔力の事をもっと研究しなければ」
アーサーは体に適した魔力の量を調節して魔力を覆う。
徐々に魔力を最小限に抑える事によって長時間魔力を覆う事が出来た。
初日は全身動けなくなるほど慣れなかったが徐々に全身を慣れていった。
そして研究してか1ヶ月が経った時には魔力が見えないほど魔力を抑えれるようになった。
「最高記録5時間。1つ分かった、慣れるしかない」
1ヶ月経ったその日アーサーはミハエル先生に呼ばれた。
「まだ24時間出来てない」
「馬鹿か?普通に考えて無理だ」
「まじでこの人教師かよ···」
「魔力を覆う訓練は怠るな。それよりも···再来週、この島にSランク魔導師達が集まり戦い競い合う大会がある」
アーサーは悟ったように顔を上げた、
「つまり、俺はその大会で1番になれば良いんですね?」
「もし優勝できなかったら···復讐は止めろ」
「え!?な、なぜ!?」
いきなりの事にアーサーは慌てた様子になる。
「大会で優勝出来ないなら七つの大罪は倒せない」
「·····分かった」
(再来週の大会でSランク魔導師を全員蹴散らしてやる)
アーサーは覚悟を決めた様子でその場を去る。
ミハエル先生はそんなアーサーを見て、
「あの目···七つの大罪を殺す気だな。君は無意味な事をする子じゃない、復讐を止めて友達と楽しく暮らした方が良い。悪いが優勝させる気は無いよ」
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世間ではある事が話題になっていた。
それは悪の科学者達の組織が捕まった事。
だが警察や魔導師が捕まえた訳では無かった。
「七つの大罪が科学者を捕まえたらしいぜ?」
「聞いた。だけど実験体にされてた魔導師達は皆殺されたって」
「科学者の資料や薬品も全て七つの大罪が回収したらしいな」
まだ捕まっていない悪の科学者も居るだろう。
だが七つの大罪が居る限り大きく動く事は出来ない。
「誰か轢かれたぞ!」
ここはどこの国でどこの街か分からない。
少なくともユグドラシルではない場所で血塗れになって1人の男が倒れている。
そんな彼に人々は近づき様子を見る。
「私は医者ですが彼はもう助かりません、一応救急車を呼びましょう」
医者だと名乗る男の言葉を聞き周りの者は血塗れの男の命を諦めた。
「避けろ」
そこに1人の少年が現れる。
見た目からして不気味な雰囲気な少年、だがもっと不気味なのは目元と首と腰に2つずつ付けた女性の手首のような物。
「君、魔導師か?まさか魔法で治すのか?」
「魔法なんて頼るな、お前らは人間だろ」
少年はそう言って血塗れの男の傷を見る。
「頭の傷は大丈夫、問題は肺だな。おい、お前医者だろ?医療道具は無いか?」
「え?このケースにあるが手遅れだよ?私はプロ中のプロ、ケースの物だけなら尚更。それに君は子供だろ?」
「さっさとよこせ」
少年は医者からケースを奪いケースを広げて傷口の中を医療道具でいじくる。
血塗れの男は痛みにより悲鳴を上げ暴れるが、少年は構わずに男の治療を続ける。
そして少年は医者に向かって、
「おい、俺の目元の手を避けてくれ、見えない」
「あ、はい」
医者は少年の目元の手を取り外す。
すると少年は片目を潰しながら苦しそうな表情で治療する。
時間が経つことに少年は息を荒くする。
「ハァハァハァハァ!良し!クリア!」
少年はそう言って飛び跳ねて医者に先程預けた手を強引に奪い目元に手を付ける。
そして呼吸を整えてその場を立ち去ろうとする。
「信じられない?手遅れだったはず、命を取り留めた!」
医者が血塗れの男の体を触りながら言った。
周りの者は驚いた表情で少年を見るが話しかけようとはしなかった。
だが1人の老人だけは少年に近づき、
「奇跡を見たよ、まるで神様の様じゃ。本当にありがとう」
少年は老人の方を振り返りニヤリと笑って、
「治すのも難しくて面白かった」
老人は少年を不思議そうに見ながらも手と手を合わせ少年にお辞儀をする。
少年は気配を消し、姿も消してその場を立ち去った。
「ケッケ。また暇になった、けどラースが再来週にゲームがあるって言ってた····次も楽しめるかな?」
すみません。
僕ジャック達と同じ学生なので明日からテスト期間に入ります。
その為9月5日まで休載します。
次の投稿は9月6日、日曜日の予定です。m(_ _)m




