決意
僕がアーサーを連れて街に戻ると日が落ちていた。
街の公園でアーサーを下ろす。その時のアーサーは複雑な気持ちだっただろう。
助けられて悔しいが、助けられて安心している。
アーサーの気持ちが真理の義眼を使わなくても分かった。
「やっぱり友達で居たい、だから君を止める」
僕がそう言うとアーサーは間を開けて鼻で笑った。
「ラストを殺した。まだ友達で居たいと言うか?」
「···後悔も罪悪感もないって顔だね。分かった、必ず君を人に戻してやる」
冷静を装ったが···ショックだった。同時に悔しさが込み上げてきた。
だからこそ、変わり果てたアーサーを止める責任があると思った。
「···本当の俺と友達で居てくれるなんて、やっぱイカれてるよお前」
「アーサーを止められるなら、イカれた自分にだってなるさ」
「ありがとな···また明日」
そう言った時のアーサーは優しい表情を浮かべていた。
僕にはアーサーが何に感謝しているか分からなかった。
アーサーと友達で居たいし、アーサーを止めたい。
それでも今回アーサーがした事は、ショックだ。
そして止められなかった自分が憎い。
翌日。
僕は複雑な気持ちになりながらも学園に行った。
アーサーは包帯や湿布で昨日の傷を手当していた。
この学園に人殺しは僕を含め2人になった。
「おはよう」
「おはよう。先生が放課後部室で待ってろってよ」
今日は久しぶりにアーサーと挨拶を交わした。
そして疑問に思う。普段部室に顔を出さない先生が僕達に用事があるなんて·····。
きっと大した事じゃない、そう思っていた。
放課後。
僕とアーサーとアリスの3人は部室で待機していた。
しばらくすると先生と学園外の人が3人入って来た。
「この方々は魔導師協会の者だ」
魔導師協会。
魔導師、霊媒師を支援する団体である。
魔導師のランクを決めるのも魔導師協会の者である。
「単刀直入に言う。君達3人は違う学園に転校してもらう」
わーけ分からない。なぜ転校しないといけないんだ?
「まずこれを見てくれ」
協会の者が見せてきたのは転校先の学園の図と説明だった。
構造やセキュリティまで詳しく書かれている。
「3年以上前から建設していた魔導師と霊媒師の子供の為に造られた学園、この学園からは卒業まで外出する事が出来ない。大丈夫、この学園にはデパートや遊園地、なーんでも揃ってる」
「結論から言います、俺は嫌です」
アーサーは転校したくないらしい。
そりゃそうだ。卒業まで出れない学園で暮らせば七つの大罪に復讐するのはずっと先になる。
「最年少Sランク魔導師のアーサー君だね?最初は君をら自由にしようと考えていたが····話し合いの結果、未来の希望と言う事で転校させる」
「未来の希望?まるで何か敵が居るような言い方ですね?」
「魔導師の命を狙う七つの大罪が居るのは知っているだろ?この学園は若者の魔導師や霊媒師を守る為に造られた」
「じゃあ俺はここから逃げる」
アーサーがそう言うと協会の者は呆れた顔をしながら拳銃を取り出す。
「この拳銃は麻酔銃だ、もう分かるだろ?いくら魔導師でもゼロ距離で避けるのは困難の技。それに敵は七つの大罪だけじゃない」
「七つの大罪以外にも命を狙う奴が?」
「はい、人権を無視して魔導師の体を調べようとする科学者です。他にも魔導師の体や臓器を売って金にしようとする者、いくらSランク魔導師の貴方でも学園に入ってもらいます」
「はぁぁ、ウェザー!」
やはりアーサーは逃げる気だったらしい。
だが魔法を放とうとしたアーサーに協会の者は容赦無く麻酔銃を打つ。
アーサーはよろめきながら床に倒れ込む。
良かった、僕が止める必要が無くなった。
「もしかして、この街に帰って来れませんか?」
「卒業まで。明日向かいに行きますので荷物をまとめといて下さい」
協会の者はそう言って部室を出ていった。
「クラスの者には先生から言っとく。いきなりの事で動揺してるだろうが····皆、元気でね」
先生は寂しい表情を浮かべて部室を出る。
「僕、この学園来たばっかなのに····」
「取り敢えずアーサーの家の人を呼びましょ?アーサー眠ちゃったから」
何だか面倒な事になってきた。街を守る神様なのに····街を離れないといけないとは。
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外から見ても中から見ても豪邸だ。そんな場所に七つの大罪は新たなアジトを構えていた。
「ラストが死んだ?何それ···皆服を汚してまで僕を騙したいの?」
仕事から帰って来たスロウスとエンヴィーはラストの死を知らされた。
だがラストと仲の良かったスロウスからしたら信じ難い事だった。
「ま、まさか本当?死体は?どこ!!」
だが皆の表情を見て真実だと気づく。
そしてグリードがラストの死体を布で隠しながら持ってくる。
「そんな、アーサーに殺されたのか?だが奴はリーダーと一緒に居たはず····どういう事だよ?」
スロウスは目に涙を浮かべながらラースを見る。
「それは···」
「リーダーのジュースに睡眠薬を入れられた、仕方の無いことだ」
ラースの言葉をかき消すようにプライドが言う。
ラトニーは(嘘で庇った?)と思いながらも何も知らない顔をする。
「てめぇー!肝心なとこでもドジふみやがって!」
だがスロウスは冷静さを失いラースの胸ぐらを掴む。
「おい、悔しいのは分かるが怒りを向ける相手が違わねぇか?」
「黙れプライド、スロウスの好きにさせろ」
プライドが口を挟むがエンヴィーがプライドを睨む。
だがスロウスは、
「分かっている···」
と言って自分の部屋に向かう。
スロウスが部屋に入ると皆解散する。
1階ではラストの死体が寂しく横たわっている。
ラストの死体の周りではエンヴィーとプライドが話をしている。
「必ず神の裁きがくだる、必ずだ」
「エンヴィー、お前神を信じるタイプなんだな」
「神は我の命の恩人、王は我に生きる意味を見出してくれた人、孫は我の全て」
「その歳で孫は居ないだろ···」
そんな気楽な2人とは違いラースは部屋で1人仲間を死なせた事に責任を感じていた。
「皆にはアーサーと組むと言った。だがプライドに見張らせていた、俺の責任だ。俺が···しっかり仲間にその事を言っていたら」
部屋の明かりを付けずに薄暗い中、ただただ悔やむ。
「どんなに悔やんでも命も時間も戻らない、だが····お前には俺が居るだろ?」
1人ベッドの上で悔やむラースの背後からバアルが現れる。
そしてバアルはニヤニヤとしながら、
「2つ目の願いを言え」
「ば、バアル···人の命を、ラストを生き返らせれるか?」
「容易い、だが命は1つの願いに付き1人」
「決めた、2つ目の願いは、ラストを生き返らせる事だ」
「願いは叶えた」
バアルの言葉を聞くとラースは急いで部屋を出て1階に降りる。
だが急ぎすぎて階段から転げ落ちる。
「まさか、神の力!?」
「エンヴィー、多分今回は悪魔の力だ」
1階では既にエンヴィーとプライドがラストの目覚めを目撃していた。
ラースもそれを見て、
「奇跡みたいな···スロウス!降りて来い!」
スロウスはラースの叫びを聞きゆっくりと部屋のドアを開ける。
そしてラストが立ち上がっているのを見て、
「嘘·····ラスト!」
「スロウス?あ、俺助かった?奴は、アーサーは死んだか?」
「もっと言うことあるだろ!」
「ん〜。燃えた城の家賃どうするの?」
スロウスはラストに抱き付きながら泣いて喜ぶ。




