表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛を知らない神様  作者: ビター
ラース編
109/113

別れ

 

  静かだった。

  そして手元が暖かかった。

  ギュッと誰かに手を握られているような温もりだ。


  「んんッ·······あれ?」

 

  死んだはずの少年、アーサーが目を覚めた。

  天国や地獄にしては見覚えのある光景だ。

  病棟にしか見えないし、アーサーが寝てる場所もベッドにしか見えない。


  「ひでぇ悪夢·······でもないらしい」


  ふと手元を見ると、見慣れた少女が眠ったままアーサーの手を握っていた。


  「アリス······そう言えばアリスは死んだんだっけ?けど何か変だ」


  アーサーは恐る恐るアリスの頭を撫でるように触る。

  よく見ると、肌色が良くて死人には見えない。

  呼吸もしている。


  「生きてる·····俺も君も······生きている」


  無意識に涙が流れた。

  そしてアリスの手を強く握る。


  「ん······アーサー?目が覚めたの······ね?」


  目を覚ましたアリスは、目を細めて言った。


  「うん、長い長い悪夢からやっと目を覚ましたよ」

 

  数日前まで、アーサーもアリスも死んでいた。

  2人が生き返った原因·······それは遡ること2日前。


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  美叶からアーサーとアリスの死を聞かされ、僕は酷く落ち込んだ。

  だが、僕には落ち込んでる暇なんて無かった。

  ソロモンの指輪、それを天界に引渡しに行かなくてはならないからだ。

  それに、犠牲を出しすぎた·······失態が大きすぎる。


  「クルーニャ·······絶対に逃がしはしない·······何年立ってもお前を負かしてやる」


  天界に着くと、あちらこちらで神や天使が忙しそうにしていた。

  悪魔達が犠牲になり、その悪魔達が人々を多く殺したからだ。

 

  「あらまっ!!ジャック君やっと来た?指輪は?」

 

  こんな状況でもふざけた口調なロキは、僕を見て手招きをする。


  「持って来た。ラースは死んだ······島の人々も半分以上死んだ·······僕の失態だ·······僕が責任を負うよ」

  「そう。君の失態かは知らないけど、取り敢えず何があったか見せてもらう」


  ロキはソロモンの指輪を受け取り、僕の頭に手を乗っけた。

  神々の中には記憶を見れる者が存在する·······今ロキは僕の記憶を直接見ているのだ。


  「ありゃりゃ、思った以上に酷いな。取り敢えず主神の皆を集めてどう対応するか話すよ。君も来てくれ」


  ロキは僕を連れて神界に向かった。

  1時間後、主神と呼ばれる最高権力を持つ神がロキを含めて5神来た。


  海と地震の神、ポセイドン。(ギリシャ神話)


  狡知の神、ロキ。(北欧神話)


  死者の守護神、アヌビス。 (エジプト神話)


  破壊と再生の神、シヴァ 。(インド神話)


  艮の金神、スサノオ 。(日本神話)


  この5神が神々を仕切っている。

  そして、この5神の最高責任者がロキと言うことになる。

 

  「そやつ誰だ?」

  「ジャック君だよ」


  ポセイドンは、僕の事が誰か分からなかったらしい。

  無理もない、5年振りだから。


  「髪の毛白色だったか?」

  「アマノの力を受け継いだ影響で白になったはず」

  「女になったのもアマノの影響か?」

  「そうじゃない?」


  ――そうじゃない。


  「普通に男だから」

  「じゃあなんで女装なんかしてる?」


  ――女装はしてない。


  「そうゆう見た目なの。結構気にしてるんだから止めろよな。いや本当にさ」

  「すまん。ところで、殺気が無いな······成長?したようで何よりだ」

  「·······いや、そんな事ないよ」


  本当に成長してたなら、同じ過ちは犯さなかった。

  主神達と話す事で、感情を紛らわせたいが······やっぱり僕は人間らしい。

  冷静には居られない。

 

  「皆座って、取り敢えず記憶を共有するから」

  「成長したと言えばロキもだな」

  「そうゆう君は変わらないね。あ!褒め言葉さ」


  大きなテーブルを囲み、全員が宙に浮く椅子に座る。

  すると、ロキから放たれた緑色の魔力が他の主神の頭の中に入っていく。


  「あぁ。取り敢えず死んだ人間達······どうする?」


  アヌビスがため息を付いて言った。

 

  「流石に死にすぎだ。悪魔達が殺したのだから記憶を消して生き返らせて良いんじゃないか?」

  「シヴァ君に同意、逆に異議ある奴居んの?」

 

  シヴァとロキは悪魔達によって死んだ人間を生き返らせる考えらしい。


  「わしは任せる。元々わしは主神なんて向いてないし」

  「良いと思うよ」

  「私も」

  「じゃあ決定!人間復活!あ、ジャック君もそれで良い?」


  記憶を消して人間を生き返らせる。

  僕の頭にはたった1つの疑問が過ぎる。


  「記憶を消すってのは?具体的に?」

  「え?あー、そこのとこどうなのシヴァ君」

  「悪魔襲撃の記憶を地震と津波の記憶にすり替える。そうすることで荒れ果てた島は地震の被害だと辻褄が合う」

  「だってさ、他に質問は?」


  とても良い対応だと思うが······まだ質問はある。

 

  「僕の正体を知ってる者の記憶は?どうなの?」

  「あー、どうするシヴァ君?」

  「······ジャックに関する記憶、全てを消す」

  「だってさ、ジャック君友達に忘れられちゃうね。けど安心しなよ、僕は忘れないからさ」

  「うん、けど2人が生き返るだけで満足だよ」


  その後、ソロモンの指輪の保管方法の見直しや、悪魔達の体の状態、ラースやバアルの事について話された。

  そして、


  「じゃあ最後に、クルーニャについて話す」


  ロキがそう言った瞬間、皆の表情が変わった。

  おどけていた者達が、やっと神々らしい表情になった。


  「調べて分かったのだが、クルーニャはわしの弟ゼウスの同期だった。奴は魔法も使えん雑魚神だったはずなのだ······なのに、アイムやマモンを唆し、我々を言葉巧みに操り、奇石の戦いを引き起こした。何よりゼウスを殺した」


  拳を握り、悔しそうにポセイドンが言う。


  「奴は最初から雑魚神なんかでは無いし、今では最強だ。それに目的が楽しみたいの1つ、そうゆう欲の無い奴は手強い」

  「まずどうやって地獄を抜け出した?」

  「外から開けたんだ」


  皆がいっせいに僕の方を見る。

  どうゆう事だ?と言いたそうな目で。


  「どうゆう事だ?」

  「奴はついこの前まで別の体で行動していた。だから外から門を開けれた。奴なら門番アバドンを操り、門を開ける事を出来ておかしくない」

  「でも地獄に居る間は魔法どころか思考も出来ない、奴が別の体を使うなんて考えれない」

  「封印される前に別の体に入ったんだ。きっと万が一を考えて用意していたんだよ」


  皆、納得したように前屈みになっていた姿勢を楽にさせた。


  「問題はどうやって倒すかだよね。ちゃんと死ぬのかな?」

  「俺は迷惑かけなければ何でも良いんだが······説得出来ねぇかな」

  「無理だろ。それに、我々が滅ぼされないと言う保証はどこにもない」

  「奇石、あれさえ取り替えせれば何とでもなるのだがな」


  皆考え込む。

  クルーニャはそれほどに強大な力を手に入れ、復活してしまったのだ。


  「奇石はクルーニャ自身の体と融合していた。取り返すのは不可能に近い。けど、僕がアマノに貰った真理の義眼なら勝てる」

  「何言ってんの?負けたんでしょ?」

  「たった1回さ、それに、僕には作戦がある。奴を倒すには奪う事を考えちゃダメなんだ。奴を倒すには与えなければならないんだ」

  「じゃあ、クルーニャ対策は君に任せていいんだね?実際君がぶっちぎりで強いし、文句は無いけどさ」

  「3度目の正直さ、絶対にクルーニャを負かす。僕の絶対は絶対だ」


  話は以上だった。

  ロキは最後に、


  「もう必要以上に人間に関わっては行けないよ。僕も怒られるんだからね?」


  と優しめに忠告された。

  アーサーとアリスに、『さよなら』も『ありがとう』も伝えれないけど、幸せに生きて欲しいとは思う。

  2人ともっと話をしたかったけど、僕は自分の幸せを願って良いような人間ではないから·······2人が生きるこの世界を守る事だけをする。

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  ユグドラシルは復興しつつある。

  ミハエル先生の再生魔法がかなり役に立ったからだろう。

  少し壊れかけた街に、アーサーとアリスは足を運んだ。


  「あれから津波が来たんだけど······死人は居なかったらしいよ」

  「あれだけの災害で死人が居なかった、神様が起こした奇跡見たいね」

  「奇跡·····確かにそうだね」


  歩いていた2人は、瓦礫に挟まった男を見つける。

  黒いマントで顔は見えないが、赤髪の男性だと言う事は分かった。


  「今助けます、植物魔法!」


  アリスは、樹木で瓦礫を退かし、男性をゆっくりと地面に寝かした。


  「コイツ!?」

  「何でこんな場所に?」

 

  男性は2人が良く知る人物だった。

  名はラース、ついこの前まで、反魔道士組織七つの大罪のリーダーとして活動していた男だ。


  「生きてるわ、早く雲で病院まで連れて行こうよ」

  「――ラース」

  「アーサー?」


  アーサーは気絶して眠っているラースを前に、微動だにせず突っ立っている。

  アリスも嫌な予感がして落ち着かない。


  「こいつは人を殺しすぎた·······世の中には生まれてきてはいけない者が居るんだ。それがラースだ。ウェザー――」

  「アーサー止めて!!」


  アーサーの右手から放たれる禍々しい魔力を感じ、アリスは咄嗟に叫んだ。


  「クラウン」

  「え?」

 

  だが、アリスの予想とは反し、アーサーはラースを自身の創った雲に乗っせた。


  「病院に連れて行く」

  「······生まれてきてはいけない者じゃなかったの?アーサー」

  「生まれてきてはいけない者だけど、死ぬ必要は無いだろ。生まれた命を否定する事は、良いことだと思えないよ」

  「ありがとう。アーサーのそうゆうとこ尊敬するわ」

 

  アーサーはアリスと共に、人間であるラースを病院まで運んだ。

  その時、アーサーの気持ちは全てを許せたかのように、スッキリしていた。

  まるで泣きわめいてさっぱりした感覚だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ