2つの再会
数日前。
ラースは、七つの大罪のアジトだった、崩壊した城を訪れていた。
まだ壊れてない壁を触り、感傷に浸る。
壊れた城はラース自身かのようで、思い出を思い出す。
「ラトニー、とうとう1人になっちまったよ」
しばらくして、瓦礫に何かが埋まっているのに気付く。
黒っぽいが人のように見える。
ラースは、恐る恐る瓦礫を退かした。
「······まだそんなとこで寝てたか」
そこに居たのはバアルだった。
ラースは哀れみと悲しみの表情を浮かべ、バアルを抱き上げた。
そして、瓦礫の近くに穴を空け、バアルの墓を作った。
「律儀だな。人を殺し回る悪魔には見えない」
突然、背後から聞こえた声に、思わずビクッと反応した。
透き通るような、生体から出る声だとは思えないくらい不気味な声。
それと同時に、どこか欠けているような美しさがある声でもあった。
「誰だ?その雰囲気、まさか神か?」
「そう、神だよ」
振り向くと、声の持ち主が高い位置の瓦礫に座っていた。
着物のような軍服のような黒い服、真っ白い肌、整った顔に体、微かに輝く黒髪、髪にデコられた赤い紐、中性的な若い男性。
表情は無表情で、常に余裕があるそいつはラースが今まで見てきた何者よりも勝っていた。
それが見ただけで分かった。
「実はずっと君を見ていたんだよ」
男は表情を変えずに言った。
「俺を?なぜ?」
「共感だよ。君に勝って欲しいと思った。だから、君に協力したい」
「ぜひ·····協力感謝する」
男の協力を断る事は出来なかった。
機嫌を損ねる真似をするのは、危険を招くからだ。
勿論、男を信じきってはいないが、信じたフリをして力を借りるのはラースにとって都合がいい。
「具体的に、何に協力してくれるんだ?」
「ユグドラシルに居る魔導師を皆殺しにしよう。君と私とソロモンの指輪の力で」
「だけど、あの島には白髪が居る」
「大丈夫、私に任せてくれ·······彼より強いから」
ラースにとって信じられない事だったが、男の言葉には信頼できる何かがあった。
それでも、嫌いな神との協力、腑に落ちない事だった。
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有り得ない事、それに限りなく近い光景を目にしていた。
僕は今、天界に居る·······ある男と一緒に。
「それは、感動の表情か?この姿で会うのは久しぶりだな」
男は僕が良く知る神だった。
「ジャック、何か言ってくれないか?会話がしたい」
声は不気味で、どこか欠けているような美しさがある。
「······クルーニャ」
クルーニャ······そいつは、6年前に僕が地獄に封印した存在だった。
そして、ついこの前までプライドやルーナとして僕の前に現れた存在。
プライドの姿は子供の姿で、器でしかなかった。
つまり、目の前に居る男が、プライドの本当の姿なのだ。
「名前、呼んでくれてありがとう」
そしてこいつは、僕が知るクルーニャ以上に神を超えた存在になっている。
とゆうのは、僕が封印する前に、クルーニャがある強大な力を手に入れたからだ。
「お前が出てきたと言う事は、地獄の門を直接開けたと言う事·······有り得ない事だけど、実際に起きている」
「俺は今、デモ.ゴルゴンが残した力、完成した奇石を体に取り込んでいる·······これで真理の義眼を持つお前を超えた」
奇石、かつてデモ.ゴルゴンと言う神の死と共に現れた奇妙な存在。
奇石には膨大な魔力が含まれている。
それ以外の事は、奇石を自分のものとしたクルーニャにしか分からない。
(はやく島に戻らなくては······指輪の悪魔達を魔導師達だけで凌ぐのは不可能だ)
もう一度クルーニャを封印してやりたいが、流石に無理がある。
「言ったろ?やることが終わったらゲームに招待すると」
「来いよ、こっちは急いでる」
周りには誰も居ない·····これなら周りを気にせず戦える。
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島の外では、フェリーに乗り込む島の住民で溢れ返っていた。
「出発だ!」
「待てよ!まだ多くの子供たちが残って居るのだぞ!」
「仕方の無いことだ·····行け!!」
勿論、フェリーに乗れない人々も大勢居る。
島の中でも、外でも絶望が待っている。
島だけでなく、世界の危機が誰の目にも見て分かる。
「2隻のフェリーがこちらに向かって居るらしいぞ!」
「けど、間に合わないんじゃないか」
島の外にも悪魔達が迫ってくるのを見て、人々は絶対する。
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島の中にある病院、その地下にアーサーは訪れていた。
大きな爪が腹に刺さったアリスを抱えて。
「霊媒師か魔導師の医者は居ますか?」
「私は霊媒師だ。けどアーサー、その子は既に死んでいる」
地下では、うずくまる患者を看護師や医師が慰めている。
病気や怪我で島の外まで逃げきれないのだ。
それに、出たところで身が危険に晒されるだけだ。
「じゃあせめて、爪を抜いて手当をして下さい」
アーサーはアリスを医師に預けると、地下を去ろうとする。
「待て!まさか·····行くのか?Sランク魔導師だからって行くのか?君が戦わなくても誰も責めたりしない。この子と一緒に居てあげたらどうなんだ?」
医師は、慌ててアーサーを引き止める。
「俺自身が責めてしまう」
アーサーは、そう言って地下を去った。
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病院を出たアーサーは、真っ先にラースを探した。
上空に居る黒いマントを羽織った男、たくさん居る悪魔の中から一瞬でラースを見つけた。
「理由なんてどうでもいい、正しくなくてもいい、俺は奴を殺す」
創った雲に乗り、上空に向かう。
まだ、ラースはアーサーに気付いていない。
「俺は望んで過去に戻る」
アーサーはラースの背後に回ると、剣をダーツのように投げた。
ラースの頭にドンピシャに刺さる位置だ。
だが、剣はラースに触れず、弾かれたようにアーサーに飛んで来た。
アーサーは、間一髪で剣を掴む。
「·····誰かと思えば、俺の仲間を次々と死に誘ったアーサーじゃないか」
ラースはアーサーに気が付いた。
「意識せずに磁力を放てるのか?意識外の攻撃を防げるのか?待て待て······それって、どんな攻撃も効かないんじゃ」
仕掛けてすぐ、アーサーは、自分に攻撃手段が無い事を悟る。
剣も、魔法も、ラースの前では無力。
「俺を倒しに来たのか?けど、その不安な表情、俺を倒せる表情じゃないよな?」
「あぁ、不安だ。俺がお前を殺したあと、お前がちゃんと地獄に行くかが」
2人は、燃え盛る島の上で睨み合いを続ける。
「なぁ、1つ聞きたい。俺のやってる事がなぜ悪い事なんだ?」
「単純にムカつくからに決まってんだろ。次口を開いたら口に太陽詰め込む」
「喜ぶ者がたくさん居るのだよ?」
「ウェザー.サン!」
アーサーは宣言通り、ラースの口に向けて太陽を放った。
だが、太陽は弾き飛び、アーサーに跳ね返る。
太陽を避けたアーサーは、ニヤリと笑い、雲でその場から逃げるように去った。
「逃げるだと?奴らしくない·······ん?」
ラースは、自身の周りで弾かれている雨に気付く。
天気自体は雨では無い。
雨を降らせているのは、ラースの上を浮かぶ小さな雲だ。
磁力魔法で濡れる事は無いが、雨が弾く光景は目障りだった。
「何を企んでるか分からないが······逃がす訳には行かないな!」
ラースは、黒く大きな羽根を広げて、アーサーを追う。
「そうだ、着いてこい。俺が地獄に案内してやる」
アーサーの目に、光が無かった。




