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愛を知らない神様  作者: ビター
ラース編
107/113

2つの再会

 

  数日前。

  ラースは、七つの大罪のアジトだった、崩壊した城を訪れていた。

  まだ壊れてない壁を触り、感傷に浸る。

  壊れた城はラース自身かのようで、思い出を思い出す。


  「ラトニー、とうとう1人になっちまったよ」


  しばらくして、瓦礫に何かが埋まっているのに気付く。

  黒っぽいが人のように見える。

  ラースは、恐る恐る瓦礫を退かした。


  「······まだそんなとこで寝てたか」


  そこに居たのはバアルだった。

  ラースは哀れみと悲しみの表情を浮かべ、バアルを抱き上げた。

  そして、瓦礫の近くに穴を空け、バアルの墓を作った。


  「律儀だな。人を殺し回る悪魔には見えない」

 

  突然、背後から聞こえた声に、思わずビクッと反応した。

  透き通るような、生体から出る声だとは思えないくらい不気味な声。

  それと同時に、どこか欠けているような美しさがある声でもあった。

 

  「誰だ?その雰囲気、まさか神か?」

  「そう、神だよ」


  振り向くと、声の持ち主が高い位置の瓦礫に座っていた。

  着物のような軍服のような黒い服、真っ白い肌、整った顔に体、微かに輝く黒髪、髪にデコられた赤い紐、中性的な若い男性。

  表情は無表情で、常に余裕があるそいつはラースが今まで見てきた何者よりも勝っていた。

  それが見ただけで分かった。


  「実はずっと君を見ていたんだよ」

 

  男は表情を変えずに言った。

 

  「俺を?なぜ?」

  「共感だよ。君に勝って欲しいと思った。だから、君に協力したい」

  「ぜひ·····協力感謝する」


  男の協力を断る事は出来なかった。

  機嫌を損ねる真似をするのは、危険を招くからだ。

  勿論、男を信じきってはいないが、信じたフリをして力を借りるのはラースにとって都合がいい。


  「具体的に、何に協力してくれるんだ?」

  「ユグドラシルに居る魔導師を皆殺しにしよう。君と私とソロモンの指輪の力で」

  「だけど、あの島には白髪が居る」

  「大丈夫、私に任せてくれ·······彼より強いから」


  ラースにとって信じられない事だったが、男の言葉には信頼できる何かがあった。

  それでも、嫌いな神との協力、腑に落ちない事だった。


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  有り得ない事、それに限りなく近い光景を目にしていた。

  僕は今、天界に居る·······ある男と一緒に。


  「それは、感動の表情か?この姿で会うのは久しぶりだな」


  男は僕が良く知る神だった。

 

  「ジャック、何か言ってくれないか?会話がしたい」


  声は不気味で、どこか欠けているような美しさがある。

 

  「······クルーニャ」


  クルーニャ······そいつは、6年前に僕が地獄に封印した存在だった。

  そして、ついこの前までプライドやルーナとして僕の前に現れた存在。

  プライドの姿は子供の姿で、器でしかなかった。

  つまり、目の前に居る男が、プライドの本当の姿なのだ。

 

  「名前、呼んでくれてありがとう」


  そしてこいつは、僕が知るクルーニャ以上に神を超えた存在になっている。

  とゆうのは、僕が封印する前に、クルーニャがある強大な力を手に入れたからだ。


  「お前が出てきたと言う事は、地獄の門を直接開けたと言う事·······有り得ない事だけど、実際に起きている」

  「俺は今、デモ.ゴルゴンが残した力、完成した奇石を体に取り込んでいる·······これで真理の義眼を持つお前を超えた」


  奇石きせき、かつてデモ.ゴルゴンと言う神の死と共に現れた奇妙な存在。

  奇石には膨大な魔力が含まれている。

  それ以外の事は、奇石を自分のものとしたクルーニャにしか分からない。


  (はやく島に戻らなくては······指輪の悪魔達を魔導師達だけで凌ぐのは不可能だ)


  もう一度クルーニャを封印してやりたいが、流石に無理がある。


  「言ったろ?やることが終わったらゲームに招待すると」

  「来いよ、こっちは急いでる」

 

  周りには誰も居ない·····これなら周りを気にせず戦える。

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  島の外では、フェリーに乗り込む島の住民で溢れ返っていた。

 

  「出発だ!」

  「待てよ!まだ多くの子供たちが残って居るのだぞ!」

  「仕方の無いことだ·····行け!!」


  勿論、フェリーに乗れない人々も大勢居る。

  島の中でも、外でも絶望が待っている。

  島だけでなく、世界の危機が誰の目にも見て分かる。


  「2隻のフェリーがこちらに向かって居るらしいぞ!」

  「けど、間に合わないんじゃないか」


  島の外にも悪魔達が迫ってくるのを見て、人々は絶対する。


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  島の中にある病院、その地下にアーサーは訪れていた。

  大きな爪が腹に刺さったアリスを抱えて。


  「霊媒師か魔導師の医者は居ますか?」

  「私は霊媒師だ。けどアーサー、その子は既に死んでいる」

 

  地下では、うずくまる患者を看護師や医師が慰めている。

  病気や怪我で島の外まで逃げきれないのだ。

  それに、出たところで身が危険に晒されるだけだ。


  「じゃあせめて、爪を抜いて手当をして下さい」


  アーサーはアリスを医師に預けると、地下を去ろうとする。


  「待て!まさか·····行くのか?Sランク魔導師だからって行くのか?君が戦わなくても誰も責めたりしない。この子と一緒に居てあげたらどうなんだ?」


  医師は、慌ててアーサーを引き止める。


  「俺自身が責めてしまう」


  アーサーは、そう言って地下を去った。


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  病院を出たアーサーは、真っ先にラースを探した。

  上空に居る黒いマントを羽織った男、たくさん居る悪魔の中から一瞬でラースを見つけた。


  「理由なんてどうでもいい、正しくなくてもいい、俺は奴を殺す」


  創った雲に乗り、上空に向かう。

  まだ、ラースはアーサーに気付いていない。


  「俺は望んで過去に戻る」


  アーサーはラースの背後に回ると、剣をダーツのように投げた。

  ラースの頭にドンピシャに刺さる位置だ。

  だが、剣はラースに触れず、弾かれたようにアーサーに飛んで来た。

  アーサーは、間一髪で剣を掴む。

 

  「·····誰かと思えば、俺の仲間を次々と死に誘ったアーサーじゃないか」


  ラースはアーサーに気が付いた。


  「意識せずに磁力を放てるのか?意識外の攻撃を防げるのか?待て待て······それって、どんな攻撃も効かないんじゃ」


  仕掛けてすぐ、アーサーは、自分に攻撃手段が無い事を悟る。

  剣も、魔法も、ラースの前では無力。


  「俺を倒しに来たのか?けど、その不安な表情、俺を倒せる表情じゃないよな?」

  「あぁ、不安だ。俺がお前を殺したあと、お前がちゃんと地獄に行くかが」


  2人は、燃え盛る島の上で睨み合いを続ける。


  「なぁ、1つ聞きたい。俺のやってる事がなぜ悪い事なんだ?」

  「単純にムカつくからに決まってんだろ。次口を開いたら口に太陽詰め込む」

  「喜ぶ者がたくさん居るのだよ?」

  「ウェザー.サン!」


  アーサーは宣言通り、ラースの口に向けて太陽を放った。

  だが、太陽は弾き飛び、アーサーに跳ね返る。

  太陽を避けたアーサーは、ニヤリと笑い、雲でその場から逃げるように去った。


  「逃げるだと?奴らしくない·······ん?」


  ラースは、自身の周りで弾かれている雨に気付く。

  天気自体は雨では無い。

  雨を降らせているのは、ラースの上を浮かぶ小さな雲だ。

  磁力魔法で濡れる事は無いが、雨が弾く光景は目障りだった。


  「何を企んでるか分からないが······逃がす訳には行かないな!」


  ラースは、黒く大きな羽根を広げて、アーサーを追う。


  「そうだ、着いてこい。俺が地獄に案内してやる」


  アーサーの目に、光が無かった。

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