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愛を知らない神様  作者: ビター
ラース編
105/113

アーサーの選択

 

  僕は、またもや天界に訪れていた。

  理由は、ロキに呼ばれたからだ。


 

  「ジャック君、君·····人間界の方の七つの大罪をどれくらい知ってる?」


  ロキは、再開して初っ端から質問してきた。

  ロキが言う七つの大罪はラース達の事だ。

 

  「それなりに。1回交戦した·······全員顔と呼び名は覚えてるけど、4人死んで2人確保、もう1人はご存知ですよね」

  「そのリーダーは最近死んだんだっけ?」

  「2日前に······そのリーダーがバアルとの契約者。既に七つの大罪は壊滅したよ」


  僕がそう言うと、ロキが少し鼻で笑ったように見えた。


  「残念、バアルは最後の願いを叶えていたんだよ」

  「つまり······バアルによって魂を取られて死んだって事?」

  「違う違う。内容はこうだ······死んだ後に悪魔として生き返らせる」

 

  ――そうきたか。

  指輪が無い理由、ロキが笑った理由、魔導師協会が焦ってた理由、全ての辻褄があった。

 

  「ラースは生きてる。それも、より強力な悪魔になって」

  「話が早い!さすがジャック君!指輪回収のついでに悪魔狩りも任せたよ!」


  次は、僕が鼻で笑った。


  「任せてくれてありがとう、本当に感謝するよ、ロキ」

  「その笑み·····まさか、君、人間に殺らせる気かい?」

  「任せたのはロキだよ。やり方や方法は言われてないから」

  「そうゆうの最高だね。今回も目を瞑ってやるよ」


  ロキは嬉しそうに笑う。


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  天界から帰り、寮に戻る。

  僕はすぐさま、アーサーの部屋を訪れた。


  「悪い話があるんだけど」

  「悪い話?少し怖いが·····言ってみろよ」


  アーサーの部屋は少し荒れていた。

  床に缶やコンビニ食品のゴミが散らかっている。

  ゲーム機もつけっぱなし。

  オマケに、アーサー自身には寝不足と疲れが見える。


  「結論から言うよ。ラースが悪魔になって復活した」

  「······ごめん、もう1回言ってくれ。ラースが復活した?」

  「ラースと契約していた悪魔バアルが3つ目の願いを叶えた。バアルは死亡したけど、ラースは3つ目の願いで生き返った。しかも、悪魔の力と体を得て」


  アーサーは疲れた体を硬直させ、一瞬時が止まったかのように動かなかった。

 

  「良い話の間違いだったな」

  「神の王からラースを始末、あるいは確保するよう命じられた。けど神の王はルールとか常識とか気にしない神なんだ」

  「俺に譲ってくれるんだな?」

  「死んでも良いなら」

  「良い、俺に譲ってくれる」


  アーサーの返事は即答だった。

  死んだような目が輝き出し、やる気と希望に満ち溢れている。


  「良いけど良く考えて······相手は悪魔になった男。魔導師だった頃ですら最凶の魔導師と呼ばれ、アーサーが勝てない男だったんだよ?普通に考えて勝てるわけないから」

  「んな事分かってる!覚悟はできてる!だから黙って俺に譲れ!」


  肉体的にも精神的にも、正常でないアーサーはいつもよりキレやすい。

  だけど、理解して欲しい事がちゃんとある。


  「いいや!分かってないね!全然分かってない!アーサーが死んだ時を考えてた?そんなに周りの人を不幸に近づけたい?」

  「俺の周りには大したモノは無い。復讐を誓ったあの日から俺のごく普通の幸せは無い。決着······物事には決着がある。俺も奴と決着をつける。それに、ラースを倒せば世界が幸福に近づく」


  アーサーは近くにあった缶を片手で潰しながら言った。

  相当ストレスが溜まってるらしい。

  それでも今回は腹を割って話そう。


  「それじゃあラースと同じだ。世界や人々の幸せを言い訳に、自分や他人の命や人生を潰していくラースと同じだ。それに······アリスはどうするの?アリスは小学校の頃からアーサーに気があった。けど、今までアーサーは気付かなかった。それは復讐で周りが見えなくなっていたからだ」

  「······待て、つまり、アリスは俺の事好きなの?」

  「今ですら気付かなかったんだね。話によればアーサーは2年か3年行方不明だったらしいね。アーサーが街に戻った日、それは僕が街の学校に通い始めた1週間前······アリスは、アーサーが生きていた事を知り、妖撲滅部に足を運んだんだ」


  困惑するアーサー。

  全てを知られていた事に、アリスが自分を思い続けていた事に、困惑している様子だ。


  「けど·······俺はラースを········」

  「ラースを倒し、生きて帰れる事、それを約束して欲しい。そして復讐より大事なモノが身近にある事を実感して欲しい。回りくどくてごめんね······その優しい目を見たいが為に、長々話をした」


  アーサーは泣いていた。

  理由は分からないが、その目には優しさと覚悟と決意がある。

 

  「俺も少し手一杯になっていた·······ごめん」

  「ごめんは分かった。そして?」

  「ありがとう」

 

  僕とアーサーは、次の週末にラースの元へ行く。

  僕はソロモンの指輪を回収しに、アーサーはラースを倒しに。


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  その週末の1日前の夜。

  アーサーはアリスの部屋に訪れた。

  ついこの前まで、目にできていた隈はもう無い。

  顔もスッキリして、健康な表情と体だ。

 

  「アーサーから来るなんて珍しいね。何の用?」

  「少し話があって」

  「·······入って」


  アーサーは緊張しながら部屋に入る。

  目の前に居る女の子が自分の事を好きでいる。

  そんな状況で平常で居る方が無理な事だ。


  「紅茶あるんだけど、飲む?」

  「あ、飲む······ありがとう」


  紅茶を入れるアリスを前にして、アーサーの目は泳ぐ。

  どこを見ていいか分からないのだ。

  パジャマ姿のアリスに、少しドキマギする。

 

  「どうぞ」

  「どうも」

 

  テーブルと紅茶を挟み、座る2人。


  「話って何?」

  「えっとさ、俺さ、明日さ······居ないんだよ」

  「居ない?どうゆう事?部屋に居ないって事?」

 

  言いたい事が言えない。

  アーサーは、どうでもいいような事を口にしてしまう。


  「いや、居ないってのは·······うん、そゆこと」

  「何を隠してるの?ハッキリ言ってよ」

  「·······つまり、俺はアリスに感謝してる·····日頃の感謝をしに来た」

 

  アーサーは戸惑う。

  どこまで伝えたら良いのか分からない。

  おかげで話がまとまらない。


  「もしかしてプライドを追う気?明日居ないってのは1人で、いいや、あるいはジャックと一緒に、プライドを追いに行く気でしょ?そうでしょ?」

  「·······全部話すから、俺を許して」


  結局アーサーは、ラースが復活した事、ラースを倒しに行く事、全てを話した。


  「つまり、死ぬかもしれないから別れを言いに来たの?」

  「死ぬ気は無い·····ジャックと約束した」

  「けど、こうして私の元を訪れたって事は不安だからでしょ?それは、万が一の保険をかけたって事よ」


  ぐうの音も出ない。

 

  「俺はアリスが大事。それはアリスが俺を大事にしてくれるから。今だって本気で俺と向き合ってくれてる」

  「そうやって感情を盾にして、私を連れてかないんだ」

  「連れてかないのは俺の問題だからだ。俺とラースの決着だから」

  「建前を使うな!私が女だから、どれだけ強くても私は軽く見られる。アーサーの言う通り私は本当で向き合ってる。けどアーサーは本気で向き合ってくれてる?」


  またもや、ぐうの音も出ない。

  人間関係の問題、それにぶつかるのは、今までアーサーが周りの人達と本気で向き合って来なかったから。

  アーサーは、ツケが回ってきたんだと思った。


  「これからちゃんと向き合う。だからあと1日許して下さい」

  「ダメよ。ジャックに言われたんでしょ?私がアーサーが好きだって」


  アーサーは、悪事を咎められたような表情をする。

 

  「やっぱり。そうゆうのずるいわ。確信を得てから行動するなんてずるいわ。私を舐めないで」

  「明日、絶対生き残る。絶対ラースに勝つ、だからこれからの俺を見てて······ちゃんと生きるから」


  アーサーは深く頭を下げた。

  どうしようも無いわがままを、聞いてもらうために。


  「本当に私の事が大事なら、ラースより私を取って欲しい。けど、ラースの所に行くと言うなら、私はアーサーと縁を切る······私の心は私だけの物にする。好きな方を選んで、復讐か私か」


  アーサーは人生で1番の決断を迫られる。

  今か未来か、憎しみか愛か。

  今までの人生を救う為、未来を捨てるか。

  これからの人生を救う為、今までを無駄にするか。

  決着は、そう遅くは無かった。

 

  「決めた、俺は――」


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