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愛を知らない神様  作者: ビター
ラース編
102/113

悪魔達の共闘

 

  竜巻に巻き込まれたはずの美叶は、愛瑠と共に無事だった。

  それに気づいたラースは、床に座り込んだまま考え込む。


  (俺の気づかないうちに美叶を守ったな)


  次に地面に転げ落ち、気絶し姿を消す悪魔達に目線をやる。


  (悪魔達は死ぬか気絶すると強制的に元の場所に転移される。見たところまだ1匹も死んでいない·····わざとか?生死を問わない方が楽なのに·····わざと難易度を上げて楽しんでるのか?)


  ラースは悪魔達の医療魔法により完全に体の修復を終えた。

  そして悪魔達と戦っているプライドを見上げ、舌打ちをした。


  「俺の仲間は殺すくせに、赤の他人を生かすか······絶対に許さん、如何なる事があろうとこの気持ちと覚悟は揺るがさない」

 

  上空ではプライドが迫り来る悪魔を1匹1匹丁寧にさばいていた。

  拳、肘、蹴り、絞め技に投げ技、魔法、スレッド、あらゆる技を使い、できるだけ魔力や体力を使わない動きをしつつ敵を片付ける。

 

  「緩さん?ラースもバカだな。覚悟していたんだろ?奪われる覚悟をしていたから奪ったのだろ?人が人を殺す時、自分や身内が殺される覚悟が伴う·····お前もその1人だったはずだ。自己の感情を優先してしまうのは人間らしくて醜いぜ」


  ラースの独り言が、遠くに居ながらも聞こえてたようだ。

  プライドはラースを嘲笑いながら悪魔達をさばく。


  「やっぱ数が多い」


  プライドはある事を思い出しながら戦っていた。

  数年前見た光景を思い出していた。

  それはデモ.ゴルゴンと言う神が、最高神と呼ばれる高い位の神々全員を相手にして戦った出来事だ。

  最高神はおよそ200神くらいだったが、全員が魔道士と比べものにならない強さだった。

  デモ.ゴルゴンを知らない者がほとんどだった当時、誰もがあまりにも無慈悲で可哀想な戦いだと思った。

  だが勝者はデモ.ゴルゴンただ1人と言う結果で終わる。

  プライドは今、デモ.ゴルゴンがクリアしたゲームを自分もクリアしてやると思っているのだ。


  「あの時デモ.ゴルゴンは誰1人殺さなかった······俺もそうするぜ」


  両手を大きく開き、左右に居る悪魔達に向けて風圧を放つ。

  すると、プライドが放った風圧を受けた悪魔達はたちまち眠りについて消えてしまう。


  「ケッケッ、まだまだ居るな」


  それを何度か繰り返し、数を減らす。

  数時間後、ダメージを負いながらも悪魔達を200匹近くまで減らせた。

  だが妙なる事に、悪魔達が風圧を避け始めた。

 

  「もしや」


  プライドはチラリと下に居るラースを見る。

  ラースは指輪を額に当てて、ブツブツと独り言を言っている。

 

  「数が減ったから難しい命令を聞くようになったのか······なるほど、数が減るだけ強さは上がるか」


  プライドはニヤリと笑い、更に上空に上がる。

  つられるように、悪魔達がプライドを追いかける。


  「天気魔法····ウェザー.サン」


  動きを止めたプライドは、巨大な魔法陣から更に巨大な太陽を出現させる。

 

  「安心しろ、死なないように手加減する」


  太陽は悪魔達に落とされ、直撃する。


  「ウェザー.サン解除」


  悪魔達に直撃した瞬間、太陽は消えてしまう。


  「いくら雑魚でも、疲れたな」

 

  残りの悪魔は50匹程度。

  だが、プライドも無傷では無い。

  傷付いた体、少なめの魔力、治療する程の傷では無いがダメージを負っている事には変わりない。


  「見た感じ最高神レベルの上位悪魔ばかり······まぁ、俺の敵ではないがな」


  プライドは近づく。

  敵意も殺意も無く、ただ悪魔達に近づく。

  そして1人、また1人と拳や蹴り、魔法を放つ。


  「ケッケッ、あと10匹!」


  プライドは殴られ、投げられ、魔法を打たれながらも残りの10匹を倒した。

 

  「慣れない体で動き過ぎたか·····妙に疲れた」


  片腕を抑えながらも、ラースの元まで下がる。

 

  「お見事、だがコイツはどぉだ?」


  ラースの指輪からゆっくりと奇妙な黒い影が現れる。

  その影は徐々に形になって、宙に留まる。

 

  「ラスボス····いや、中ボスか」

  「神々には特に強い主神と呼ばれる者が居るが·····コイツはそれに匹敵する······悪魔王ゼブルだ!」


  大きめの体、それを上回る大きさの黒い虫のような羽根、触れば切れそうな長い爪、血のような赤い目。

  そんな姿をした悪魔王が指輪から出てきた。

 

  「悪魔の世界には本物の七つの大罪が居たらしいが·····コイツは暴食の悪魔ベルゼブブの孫だ」

  「俺が倒せないとでも?」

  「神と違い、人は自ら試すんだぜ」


  ラースがそう言うと、ゼブルが羽根を広げ、プライドの首を掴む。

  プライドはすぐさま手の平から魔法を放とうとする。

  だが手は動かなくなっていた。

 

  「磁力魔法」

 

  ラースはプライドの手に向けて磁力を放っていた。

  その為動かなくしていたのだ。


  「思い込むな、俺がいつ魔法を操れないと言ったのだ?」

 

  プライドの手から放たれた電気の塊は独りでに動き、ゼブルの腹に当たる。

  痺れたゼブルは、プライドの首から手を離す。

  同時にプライドが後方に吹き飛ぶ。


  「磁力は常にお前を縛っている!」

  「ケッケッ、お前は常に感情に縛られてるな」


  プライドはムクリと動き、床に足をめり込ませた。


  「まさか磁力に耐えるつもりか?やばいな·····ゼブル!早く奴を始末しろ!」

 

  同時にゼブルの指先から光線が放たれ、プライドの胸を貫く。

  プライドは血を吐いて、胸を抑える。


  「やった!その調子だ!トドメだ!」


  更に、ゼブルの指先に大きな魔法陣が現れる。

  魔法陣から出た黒い炎がプライドを飲み込む。


  「姿が無い·····燃え尽きたのか?だとしたら······あっけなさすぎる」


  ラースは妙な違和感を覚える。

 

  「何か胸騒ぎがする。ぜっ、ゼブル·····俺の元へ来い······ゼブル?何やってる!はやく――」


  背後を振り向いた瞬間、ラースの背筋が凍り付いた。

  ゼブルの姿が消え、皮膚が燃え尽きたプライドが血を流して立っていた。

  それがラースの見た光景だった。


  「な、なんでもアリかよ」

  「移動魔法·····アイ.モーメント」


  ラースの体は恐怖で動かなかった。

  目の前に居る弱々しい神が、自分の生死を決めれる事を悟ったのだ。


  「試すか人間、俺を殺せるか·····まだ試すか」


  磁力魔法を攻略された今、ラースに戦う手段が無いように見える。


  「好きに選べ」


  プライドはゆっくりとラースの顔に手を伸ばし、ラースの額に指を当てる。

 

  「何やってる!小僧!!」


  そんな叫び声と共にバアルが現れ、プライドを1発殴り、ラースを抱えて行く。

  同時に、プライドの顔に付いていた複数の手が床に落ちる。

  プライドから距離を取ったバアルは、諦めた表情をしてるラースの頬を1発叩いた。


  「貴様!まだ3つ目の願いを叶えてないだろ!奴に殺されるならば願いを叶えて死ね!」

  「あ·····すまん······」

  「それが嫌なら奴を倒せ、俺も今回だけは手を貸す」

 

  ラースは目に光を取り戻し、自身の両頬を叩いた。


  「倒す」

  「よし!」


  2人は立ち上がり、目の前で下を向いているプライドを見た。

  プライドの目は死んでいるように見える。

  燃えた皮膚は徐々に再生している。

  手が取れた今、プライドの表情や目がハッキリ見える。

  今のプライドは怒っているようにも、泣いているようにも見える奇妙な表情だ。


  「息が·····できない」

 

  プライドは下に落ち、燃え尽きた手の破片を見て苦しそうにした。

  そんなプライドを見て、バアルは目を細めた。


  「息が出来ないだと?神や悪魔は息が出来なくても問題ない······なのに息が出来ないだと?」

  「きっと比喩表現だろ、息が出来ないような苦しさ·····もしかしたら今がチャンスかもしれん」


  恐る恐るプライドに近づく2人。

  外が暗くなり始め、滑稽さが増す。

 

  「小僧、神器は持ったな?」

  「持った」

  「なら2人で近距離戦を制するぞ」

  「あぁ」


  2人は素早く動き、プライドの目の前から姿を消す。

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