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愛を知らない神様  作者: ビター
ラース編
101/113

ソロモンの指輪

 

  「んーー!!!」


  ラースの縫られた口の奥から聞こえる喚き声。

  頭が割れるように痛く、眼球がジンジン痛む。

  視界が奪われ、真っ暗な世界······不安と恐怖を増す。

  瞼を開けば、かろうじて光が見える·····だがそんな余裕は無い。

  痛みを堪えるので精一杯······のはずだった。

  この状況でまだ、ラースは考えるのを止めなかった。

 

  (体が動かない·····見えない糸······確かさっき魔力操作スレッドとか言ってた。そう言えばプライドが1度だけ魔力の使い方を説明した事があったけ?その時にスレッドとか言う魔力の糸を出す技があると言ってたような気もする。教わっといて良かったとも言ってたな?まさかユグドラシルに居る間に誰かに教わったのか?白髪·····あるいは生徒として接してたプライド·····いや、そんな事は問題じゃない。問題は魔力の糸は刀で斬れないって事だ。いや、そんな心配より俺が時間しだいで死ぬって事だ·····早く指輪を取り戻さなければ)


  痛みを忘れた訳では無い、ただ自分の使命を忘れていなかっただけだった。

  それだけでラースの体は動くようになっていた。


  「じゅ····じ!磁力、魔法!」

 

  縫われていた口を無理やりこじ開ける。

  口の皮が破れ、血を吹き出しながらも喋った。


  「醜い」

  「死は俺に生ぬるい、だから死にはしない」


  ラースは見えない糸に縛られたまま宙に浮く。

  そして見えない糸を磁力で吹き飛ばす。


  「そこにある事を認識した事で磁力が生じた!」

  「笑うな、吐き気がする」


  だが美叶は容赦なく糸を放ち、ラースの右足を切り落とす。


  「もう慣れたよ、痛いのに慣れた」

  「一瞬の攻撃は認識できないだろ?」


  ラースの閉じた目からは、血を流れ出ている。

  左手、右耳、顔の皮、美叶は次々とラースの体の一部を切り落とす。


  「泣いて謝れ!!でなければ死ぬまで切り刻むぞ!!」

  「はぁぁぁぁ······図に乗るな!!!」

 

  ラースはため息をついたかと思えば殺意を込め、怒鳴った。

  同時に、ラースを中心に家具や糸が周りに吹き飛ぶ。

 

  「今のは?」


  美叶は少し違和感を感じた。

  ラースが物や糸を認識せず、磁力を生じさせていたからだ。

 

  「プライドが言うには魔法は進化するらしいが······今実感した」

  「進化したとでも?例えそうでも僕が負ける要因には、ならない!」


  美叶は音を殺し、糸をラースの首元まで持っていった。

 

  「ん?」

 

  だが妙な事に首に糸が触れられない。

  糸とラースには小さな磁力が生じているようだった。


  「俺に触れないだろ?お前が俺を追い詰めてくれたおかげで自分の弱さに気付き、新たな強さを手に入れれた。感謝する·····敬意を評して殺してやる」


  ラースは血で汚れた瞼を開き、人影を確認する。

  そしてその人影に手を向ける。


  「あぁ!!」


  美叶は磁力で吹き飛ばされ、壁に体を打ち付けられた。

 

  「調子こいてくれたな」


  更に、美叶の体を宙に浮かせ、床に打ち付けさせる。

 

  「がぁ!」


  血を吐く美叶。

  内蔵が潰れ、体が動かない。


  「痛くないけど·····体が動いてくれない」

  「形勢逆転·····だ!」

  「ああああああああぁぁぁ!!!」

 

  ラースは美叶を踏み潰し、必要以上に痛めつけた。


  「女に優しい方であるが、俺と戦いに来たお前は女と思っていない·····傷つきたくなければ喧嘩売るなって話だ」

 

  片方しかない足で美叶を蹴り、片方しかない手で美叶を殴るラース。

 

  「ストレスが発散できた·····確かさよならしに来たのだったな?おめでとう、夢は今叶う」


  刀を手に取るラース、血を流し倒れる美叶。

  破壊された城は滑稽な程悲しい。

 

  「え·····る、僕は·····ただ、君の、神様になりたかった·······私の天使」


  体を引きずり、近くに倒れている愛瑠の体に近づく。

  美叶は泣きながら愛瑠の手を取ろうと手を伸ばしている。


  「さよなら」


  手が届く一歩手前、美叶の手はラースに踏まれ、刀が美叶の体を突き刺そうとする。

  だが刀は美叶を突き刺す前に折れ、それと同時に玄関のドアが勢い良く開かれる。

  ラースはゆっくりとドアで方に目線をやる。


  「この様子、楽しんだようだな」

  「来たか、プライド」


  ドアから現れたのは無表情のプライドだ。

  ラースが瞬きした瞬間、プライドはラースの目の前に居た。


  「この女に俺の居場所を教えたのはお前だな?」

 

  プライドは質問に答える代わりにラースを蹴り飛ばす。


  「ぶはァ!!」

  「酷い傷だな、美叶」


  吹き飛んだラースを無視し、倒れている美叶に話しかけるプライド。


  「ルーナ·····?」

  「はい残念!ルーナはプライドでした!いっつも近くに居たんだぜ?お前の復讐相手」

 

  プライドはボロボロで今にも死にそうな美叶を嘲笑う。


  「あぁ、そうなんだ······天使も悪魔も表裏一体だったのか······最後に貴方に会えて良かった」


  美叶はそう言って気を失った。

 

  「そうかい、良かったな」


  プライドは不満そうな顔をしながら、美叶と愛瑠の手を握らせると、美叶に治癒魔法をかけた。


  「復讐も殺しも絶望も悲しみも怒りも、全部美叶には要らない·····美叶が持っててもつまらなかった」


  プライドの表情は顔に付けた2つの手で見えない。

  だが先程から部屋の奥で、倒れたままのラースを見ている事は目線で分かる。


  「クククッ、なぜその女に優しさを与えて俺の仲間には死を与えた?神様は分からないな〜」

  「理解しなくていいさ、プレイヤーはゲームを理解しなきゃならないが、ゲームがプレイヤーを理解するなんて事無いからな」

 

  ラースは倒れている机によしかかりながらニヤニヤと笑っている。

  失った右手、左足、潰れた目、切れた腹、負傷だらけの体。

  明らかに、もう少しで死ぬ状況に見せる表情では無い。


  「ソロモンの指輪を知ってるだろ?かつてソロモン王が使ったとされる悪魔を召喚できる幻の指輪。今の俺は王だ、ソロモンの指輪を使う王様だ」


  ラースは美叶から取り返したと思われる指輪を、左指にはめる。

 

  「全悪魔、召喚だ」


  指輪の禍々しい紋章から出てきたのは、星の数ほど居る悪魔達だった。

  指輪から飛び出すように、城の天井を破る者すらいるほど数が多い。

  瞬く間に視界全てが悪魔達で埋まった。


  「全悪魔、軽く10億は居るな」


  多くの悪魔が黒い羽根を背中に付け、宙に浮いている。

  皆目が死んでいて、意識がないように見える。


  「神と天使と悪魔はじゃんけんのような性質を持つと聞いた。神は天使に強く、天使は悪魔に強い·····そして悪魔は神に強い。バアルが言うには白髪でも全悪魔には勝てないらしいが·····お前は尚更だろ?」

  「やるだけやるさ」

  「あっそう。悪魔共、治療できる者は俺の元へ、他はその邪神を始末しろ!」


  ラースの命令で悪魔達はいっせいに動き、20人ずつプライドに襲い掛かる。


  「ケッケッ、人間のお前が神である俺の可能性を語るなんて·····本当におこがましい」


  プライドの視界には悪魔しか居ない。

  絶望があるなら今この状況が絶望だろう。

 

  「取り敢えず範囲技で吹き飛ばす·····ベール.シャリン」


  プライドを中心に竜巻が現れ、半径100メートルを余裕で吹き飛ばす。

  悪魔達は次々竜巻に巻き込まれ、地面に転げ落ちる。

  だが皆死んではない。

  かろうじてだが生きている。


  「意外と消せないな、1億もダウンしなかったか」

 

  転げ落ちる悪魔達を見下ろしながらニヤニヤと笑う。

  楽しくて仕方ないって顔だ。


  「あれほどの範囲魔法を放つとわ·····周りの悪魔が守ってくれなかったら死んでいた」


  ラースは魔法で作られた盾によって無傷だった。

  それどころか先程の傷がほとんど無くなっており、失った目や腕も治っている。


  「ゲーム開始」

 

  再び、悪魔達がプライドを襲う。

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