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愛を知らない神様  作者: ビター
ラース編
100/113

偽神の復讐

 

  愛瑠一行は頭に刺さったナイフをゆっくりと抜いた。

  同時にラースも腰に身に付けた短めの刀を取り出す。

 

  「脳がダメなら心臓を刺すか」


  手を前に伸ばし、愛瑠を素早く手元に引き寄せる。


  (妙だ。抵抗する気配がない)


  奇妙だった。

  愛瑠は磁力に身を任せていた。

  ラースは罠かと思いながらも、愛瑠の心臓を刀で一刺しにした。

  だが愛瑠は、死ぬどころか怯む事なくラースの首を掴む。


  「な!」

  「死ね」


  ラースは略奪魔法が発動したかと思い焦った。

  だがその焦りは一瞬にして消えた。

  有り得ない、そう思える事があったからだ。

  まず心臓を刺されて死なない、それに血が一滴も出てない。

  動揺した。

  だが、すぐに愛瑠を磁力魔法で吹き飛ばした。


  「使える?略奪しなかった?」


  また疑問が湧く。

  愛瑠が略奪魔法でラースの魔法を略奪しなかったからだ。

 

  「殺せないならバラバラにするだけだ」


  次に、ラースは床に落ちてるナイフに手を向けた。

  4つのナイフは磁力で生きたように動き、愛瑠一行を切り裂いていく。

  指、肉、耳、至る所を切り裂き、体を徐々に小さくしていく。


  「やはり痛みは無いのか?」

  「無いよ、痛みを知るべきなのは君だけだ」


  愛瑠一行は宙を舞うナイフに対抗するかのように空中を舞い始めた。

 

  「視界を奪ってやる」


  だが、ナイフは愛瑠一行の両目を潰した。

  4人は怯む代わりにすぐにナイフを掴んだ。


  「そのナイフはくれてやる」


  自身の体と進む方向にある物の間に引き寄せる磁力を生じさせる事で、ラースの走るスピードは異常な程早くなる。

  更に、自身と天上や壁の間にも引き寄せる磁力を生じさせる。

  すると、壁や天上もラースにとっては足場になる。


  「練習したかいがあったよ」


  素早く室内を走り回り、次々と愛瑠一行の腕や足を切り落とす。

  愛瑠一行は空中で思うがままに斬られていく。


  「ふんっ、最強の魔道士に勝った俺は本当の最強だな」


  愛瑠一行の体がバラバラにされるのは3分もしなかった。

  ラースは少し満足したかのように刀を布で拭いた。

  だが刀には血がついていない。


  「いてっ」


  気を抜いたラースは天上から足が外れ、頭から床に落ちた。


  「まだ調整が難しいな」

  「君は最強じゃない、弱さも自覚できないのか?」


  電子音のような声が背後からした。

  ラースは慌てて背後を振り返る。

  そこにはバラバラの体が何かしらの力でくっ付く途中の愛瑠一行が居た。

  もはや人間では無い。


  「図に乗ったね」

  「焦った時、それは隙になる·····敗者はいつも焦る。勝者はいつも可能性を忘れない·····謎を切り離して考えていたよ」


  ラースは余裕の表情を見せた。

  目の前の敵は圧倒的だと言うのに。


  「女が居ない理由を考えていなかった·····正確には女だから置いてきたと勘違いしていた。お前は既に敗北して死んでいたのだな?」


  素早く走り、くっ付こうとする愛瑠一行の体を再び切り裂く。

  愛瑠一行はバラバラになって倒れ、ラースはドアの方に目線をやる。


  「エンヴィーが言ってたのを思い出した。糸を使う女だと····桃色の髪の·····美叶とか言う名だったはず」


  何秒か緊張と静けさが続く。

  しばらくすると入口のドアが開き、1人の女性が姿を現す。

  白いワンピース、白い麦わら帽子、桃色の髪――美叶はラースと初めて目を合わせる。


  「やっと、やっと会えた。さよならする為だけに君の元に足を運んだんだ」

  「そりゃありがたい。お望み通りさよならだ」


  先手必勝、ラースは美叶に手を向けて磁力魔法を発動させる。

  美叶の体は少し浮き、ラースの手元まで引き寄せられる。

  美叶の体は刀で貫かれる。


  「さよなら」

  「ごめんね、フリーハグはお断りなんだ」


  だが、貫かれた腹は糸で出来ており、傷は一切無かった。

 

  「体を糸にできるのか?」

  「糸魔法、モード墨子悲糸ぼくしひし


  美叶の体は糸になって広がり、ラースの体を一瞬にして縛った。

 

  「やっ、ヤバイ!磁力魔法!」


  反発した磁力が発動した事で、ラースを中心に糸になった美叶が四方八方に散る。


  「間に合った·····この傷、魔法が間に合わなかったら秒で体が真っ二つになっていた」


  ラースは深めに切れた腹を手で押えた。

  切れた腹からは血が止まらない。


  「この傷では戦えないな。悪いがお前の相手は本物の悪魔にしてもらおう」


  腹を押さえたまま左手の指を探る。

  だが、ラースの探し物は見つからない。


  「指輪が無い·····まっ、まさか!?」

  「その反応、はやりこの指輪に何か強力な力があるんだね?」

  「いつ、取ったんだ?」


  美叶が手に持ってる禍々しい指輪、それがラースの探し物だった。

 

  「取ったのは愛瑠だよ、最初に取ったんだ」

  「してやられた·····ムッかつく女だ」

 

  ラースはそう言い、近くにあったテーブルクロスを腹に巻いた。

 

  「止血したつもり?」

  「俺は忌々しい魔道士だ、忌々しい魔法を使って止血する」


  腹の傷は切れた肉と肉が磁力で引かれ合い、止血されていた。


  (だがこの状態を維持したまま戦うのは集中力がいる·····早めに蹴りを付けたい)


  切り札を取られたラースは表情以上に焦っていた。


  「手加減はしない、勿論慈悲もない」


  美叶は愛瑠のバラバラになった体を糸で縫い合わせ、近くにあった布に包まれた長物を手元に引き寄せる。

  そして、布の中から日本刀を取り出す。

 

  「皆は休んでて、後は僕がやる」

  「イカれ女め、なぜ魔道士は皆想像力が無いんだ?想像力が無いから死の未来を察せれない·····分かったなら大人しく死ね······断るなら残酷に殺すぞ?」


  愛瑠一行の体は全て縫い合わせられた。

  美叶の周りでは日本刀が宙に舞っている


  「お前が私の家族や仲間を殺したから追ってきたのだろうが!!想像力が無いのはお前だ!魔道士達を殺してただで死ねると思ったのか!!私の弟や愛瑠の安らぎを奪った事を泣いて悔やませてやるぞ!」


  ラースの発言は一瞬にして美叶を怒らせた。


  「やってみろ。お前は魔道士の為、俺は全人類の為に戦う·····覚悟が違うんだよ。例え全人類の為になってなくとも責任と覚悟だけは本物だ、そうしたいと言う過程は本物だ」

 

  お互い宙に舞った。

  美叶は糸で、ラースは磁力で虫のように激しくしなやかに室内を動く。

  最初に傷を追ったのはラースだった。

  美叶はラースとすれ違う瞬間、日本刀を離し、10本の両指から放つ糸でラースの指を3本切り落とした。

 

  「くっっ!!痛い、だがお前はもっと痛いだろ·····」

 

  だが美叶はラースに左手を切り落とされていた。

  痛みを我慢するラースには余裕が生まれる。


  「お前に殺られた人々に比べれば痛くない·····苦痛はお前が存在する事、それだけだ」


  美叶は何気ない顔で切れた腕から糸を出し、落ちた腕に繋げた。

  切れた腕は糸により繋がる。


  「繋げたところで使い物にはならない」

  「それはどうかな?」


  美叶の左指は細かく滑らかに動いた。

  指に神経が通っているのだ。


  「馬鹿な!?神経や血管をも繋げたのか!?そんな医者みたいな事を!?」

  「焦った時隙になるのではなかったのか?勝者はいつも可能性を忘れないのではないのか?言ってる事と行動がチグハグだけど大丈夫かい?僕だって島で何もしてなかった訳じゃないんだよ」

  「あ、安心しろ·····少し驚かされただけで勝敗に変わりはない。お前の弱点が分かったからな」

  「あっそ」

 

  ひあ汗をかくラースに追い討ちの糸を指から放つ。

  だが美叶の放った糸はラースの刀により全て切られてしまう。


  「強がりでは無かったのか?」

  「まぁな」


  ラースの刀には魔力が纏われていた。

  ただ、それだけでは素早く動く糸を正確には切れない。

  刀と飛んでくる糸の間に引き寄せる磁力を生じさせる事で、FPSのエイムアシストのような効果を生んだのだ。


  「一気にケリをつける」

  「魔力操作·····スレッド」


  距離を縮めようとした途端、ラースは前後左右から糸に引っ張られている感覚に襲われた。

  だが不思議な事に糸は見えない。


  「か、体が·····動かない」

  「教わっといて良かった」

 

  美叶は糸で日本刀を操り、ラースの体首元目掛け日本刀を振るった。

  だが、日本刀は磁力によって弾き飛ばされてしまう。

 

  「やはり、目に見える攻撃は防げるのか」


  美叶は確認したかのように頷く。

  指は微かに動いている·····何かを操る指の動きだ。

 

  「目に見えない物、あるいは認識出来てない物に磁力は生じれない·····確信した」

 

  一瞬の静けさと共にラースの両目は潰された。

  両目には糸が貫通し、血が吹きでている。


  「ああああああああぁぁぁ!!!」

  「黙れ」

 

  美叶は叫ぶラースの口を糸で縫ってしまう。

  そして、糸を手元に引き戻し、糸を使って上空に止まる。

 

  「血も涙もない悪魔には、血の涙を流してもう·····仕上げには後悔の言葉、それを聞かせてくれたなら死なせてやろう」


  ラースを見下ろす美叶の目には珍しく感情がある。

  その感情は歪な怒りだ。

  その目で、跪いて泣きわめくラースを見下ろしている。

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