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第21話 いざ、オリエンテーリング

第21話~いざ、オリエンテーリング~


 公爵令嬢シャーロット・フリューゲルがF組のパーティーへ加入した。


 その驚天動地の事実は瞬く間に学院中を駆け巡り、リカルドとパメラの精神を大きくすり減らしたのは言うまでもない。


 あれからオリエンテーリング当日である六月の中旬である今日を迎えるまで、実に様々なことがあった。当然だが、渦中の人であるシャーロット自身は様々なところから質問攻めにあっていたのだが、シャーロットはただ一言、“私があのパーティーに入ることに何か問題があるのかしら?”と言って、群がる野次馬たちを一掃したのだ。


 そうなってしまえば公爵令嬢たるシャーロットにそれ以上何かを言えるはずもない。周囲の目は必然的に他の三人へと移ることとなった。


 リカルドとパメラは日々、誰かしらに事の真相を追及され、いつでもどこでも質問攻めにあうというまさに地獄絵図を展開することとなっていた。廊下を歩けば、“なんでフリューゲル様がお前たちなんかと!!”と言って責めてくる生徒がいたり、食事をしていれば、“あんた達なんてフリューゲル様にふさわしくないわ!!”と非難されたり。


 自分たちにすらなぜシャーロットがわざわざF組の、しかもその中でも嫌われ者になっている三人のところに来たのかは分からないのに、そんな理不尽なことを言われてもというのが二人の偽らざる本音だった。


「パメラ、大丈夫か?」


「無理……、ほんとに無理……」


「耐えろ!人の噂も七十五日、そのうちきっとみんな忘れるはずだ!!」


「そんなに長い間、耐えられないよ……」


「パメラ!?しっかりしろパメラ!!」


 オリエンテーリング当日の朝にも関わらず、談話室ではこの理不尽な周囲のプレッシャーに晒され続けたパメラがグロッキーな状態となっていた。それを必死に慰めるリカルドであったが、彼自身も疲弊しきっていることは言うまでもない。それでもパメラを思いやれるところが、彼が見かけと違い芯の通った奴だとレインが認めた所でもあるのだ。


「あら、おはよう。二人とも早いのね」


 そんな陽光照る朝の談話室に似つかわしくない陰鬱とした空気を纏う二人に朗らかに挨拶をしたその人こそ、今一年生の間で話題で持ち切りのシャーロット・フリューゲルだった。


「大丈夫パメラ?顔色があまりよくないようだけど、今日のオリエンテーリングは参加できそう?」


「あ、はい!へ、平気ですよ!?私は元気です!!」


 お前のせいだ馬鹿野郎などとは口が裂けても言えるはずもなく、パメラは空元気をシャーロットへと見せるしかない。その様子にリカルドは陰で目じりに涙を浮かべたことも、言うまでもないことだ。


「今日までいろいろとお話をして私たちの距離も縮まったと思うし、きっと課題もなんなくクリアできると思うわ」


「そう、だね…ですね!きっとうまくいくはずだよ…ですよ!!」


 男爵家のパメラにとって公爵家のシャーロットは上も上。はるか天上人だ。ゆえに言葉がおぼつかず、敬語と普通の言葉が入り混じってしまうのだが、これでもましになった方だ。そう言った面ではシャーロットの言う、距離が縮まったとの弁もあながち間違いではないのかもしれないが、リカルドがそんなパメラに対してこの数日で何度目かわからない涙を流したのは、これもまた言うまでもないことだった。


「それで、レインはまだなのかしら?」


「ああ、どうもまだらしい。寝坊するやつじゃないからそろそろ来るとは思うんだが」


 パメラと違い、なんとか普通にシャーロットに対応するリカルドだが、彼もまた内心では心臓ばくばくだ。シャーロット本人から敬語はいらないと言われているが、はいそうですかといきなり敬語を捨てられるものではない。現にパメラはそのせいで言葉がおかしくなっているのだが、そこは流石リカルドと言ったところであろう。きっと本人はそんなことを褒められても嬉しくはないだろうが、それでもそのリカルドの態度がシャーロットの気をよくしている一因でもあるのだから、これはもうどうしようもないことなのだ。


「ふふ、楽しみね」


 そう言って微笑みを見せるシャーロットに、リカルドとパメラはシャーロットが自分たちのパーティーに入った意外すぎる理由に予測は立てているのだが、もしそれが本当だとしたらそれこそ貴族の世界が騒然となってしまう事実だ。だからこそ二人は何も言わずにその予測を自分の胸にしまっている。


「なんだ三人とも早いな」


「違うでしょうレイン。早いなじゃなくて、まずは挨拶をするべきじゃないかしら?」


「ん?そうだな、おはよう」


「はい、おはよう、レイン」


 そんな中現れた渦中の人レインと、明らかにレインが現れた途端にさら機嫌のよくなったシャーロットの様子を見て、自分たちの予想が的外れではないことを確信した二人は、これから先もきっと続くのであろう胃痛に頭を悩ませるのであった。


 ◇


 ルミエール魔術学院が保有する大森林は広大だ。その広さはフォーサイトの街を数個入れてもまだ足りない大きさであり、なんの準備もなしに入り込めば、それこそ熟練の魔術師でも命を落とすと言われるほどの危険度を誇る。


 野生動物はもとより魔物の生息も多く、さらには危険な野草、毒草の種類も豊富。すでに独自の生態系を作り上げた大森林内は魔素も濃く、その上で自然に作り上げられたトラップの類もその数は枚挙にいとまがない。


 それゆえこの大森林はこう呼ばれることもある。


“魔境”


 未だにその最奥まで到達した者はおらず、実体の解明が進まない未踏破の森。その危険度はハンターギルドが出している危険度マップでも最高難度の星五つであり、もはやそれだけでいかにこの森が危険な場所かがわかるというものだ。


 そんな森での学院生、しかも新入生である一年生が挑むオリエンテーリングはもちろん危険ではあるが、流石に学院側も死者を量産したいわけではなく、もろもろの保険をかけたうえでの行事となっている。


 まず第一にオリエンテーリングは森の一番浅い場所に限局されており、深部では行われることはない。浅い場所であれば基本的には野生動物か弱い魔物しかおらずトラップなども即死性は低い。怪我を負うことはあるかもしれないが、それでも命の危険は低いのである。


 そしてこれも当然ではあるが、絶えず教師陣が巡回しているため万一何かあってもすぐに救援に向かえるようにもなっている。もちろん生徒に見つからないように配置された布陣であるが、それでも教師が近くにいるという事実が大森林における行事でも生徒に与える安心感は強く、この行事が滞りなく行えている要因となっているのだ。


 二重、三重にとられた安全策のおかげでこの行事における死亡者はこれまでゼロ。それでも最悪の事態を想定し、この行事への参加に当たり誓約書を書かされることは有名だ。仮にこの行事で命を落とすことになったとしても、それはあくまで自己責任であり、学院側には何の落ち度もないという誓約書を。


「あんなの書かされたら否が応でもいろいろ意識しちゃうよ……」


「心配すんなって。これまでの死亡率はゼロだし、教師もいたるところに隠れてる。油断さえしなきゃそうそう危険なことはないはずだ」


「そうだけど……」


 万が一の事態になった際、学院に一切の責任はないというための誓約書。それを書くことで否が応でも自分たちが今いる森が、命の危険を孕む物だと認識させられる。


 すでに泣きそうなパメラをリカルドが慰めながら殿を務め、前衛にシャーロット、パーティーの真ん中にレインが配置された布陣でついに始まったオリエンテーリングの舞台である大森林に足を踏み入れたレイン一行。


「大丈夫ですよ。きっちり警戒していれば問題ないはずだわ」


「う、うん……」


「それにもし何かあっても私が守るからそんなに心配しないで?ね、パメラ」


「あ、ありがとう……。フリューゲルさん」


 そう言ったシャーロットの言葉に、なんとか落ち着きを取り戻したパメラ。


 そうして森を進み始めたレイン達だったが、この時レインは何か良くないものを感じていた。それが何かははっきりとは分からなかったが、この行事、何事もなく終わってくれそうにはないなと、レインは誰に気付かれることなくこっそりとため息を吐くのだった。


いよいよ始まったオリエンテーリング!果たしてレイン達に待ち受けるものは何なのか!!リカルドとパメラの胃は最後まで持つのか!!こうご期待ください(笑


三日ごとの更新でお届けする予定ですので、また次回も読みに来てください。

ブックマーク、評価の方して頂けると作者が泣いて喜びます。長く続く作品にしたいと思いますので、お手数ではありますがぜひよろしくお願いいたします。


広告下に私の他作品のリンクを貼ってありますので、そちらも合わせてよろしくお願いします。

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連載中である他作品、 【『この理不尽な世界に復讐を~世界に虐げられた少年は最強の龍となり神に抗う~』も引き続きよろしくお願いいたします。
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