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第133話 謎の組織は支配する

第133話〜謎の組織は支配する〜


『どうやら組織の根は相当に深いようだ。我が国の聖教会にも裏切り者がいるぞ』


 正直な話、ファニアスの情報にそれほど驚きはしなかったと言うのがレインの本音だった。


 フォーサイトでの事件に鑑みても、あれが組織の力だけで行われていたとは考えにくいほどの規模だ。しかもそれが組織の行なっていることの一端に過ぎないと考えれば、すでに各国に組織が巣食っていると考えるのが自然。


 と言うよりも、もはや各国の貴族が組織に所属していると考えてもおかしくはないのだ。


 半魔人というキメラの合成に始まり、それをマリット海洋王国という港からの入国しか認めないという半分閉鎖されたような国を販路としている事を考えても一組織の犯行としては規模が大きすぎる。


「裏切り者の特定は可能か?」


『すでに聞き出した情報から目星はつけているが、割と上位の貴族が混じっていてな。下級貴族ならともかく、全部をなんとかするとなると事を公にしなければ無理だ』


「だろうな。ならとりあえず信用できるところだけに情報を流して警戒するのが無難か」


『すでに団長には報告をあげてある。とりあえず潰せるところから潰すと言っていたが、レインの言っているようになるのだろうな』


「とりあえずこっちもそろそろ終わる。目処が立ち次第戻るから引き続きシャーロットたちを頼むぞ」


『無論だ。レインの頼みとあれば是非もない。それにこのような状況であればレイン抜きに公爵家に恩を売っておくのは大事だからな。全力で守る事を誓おう』


「頼んだ」


 今の短いやり取りだけであまりに情報が過多。最初からわかっていたことではあるが、やはりこの組織の底が知れない。得体が知れない。これを本気でなんとかするには世界的な協力が必要不可欠となるだろう。


「悪いがお前には俺と一緒に来てもらうぞ」


 兎にも角にもここでの仕事を終わらせるのが先決。そう決めたレインはシャルフを伴い、キドニー商会の中を闊歩する。


 すでにこの商会内のボスである男の部屋はシャルフから聞いている。というよりシャルフが進んで案内をしてくれているため、レインはただついていけばいいだけだ。


「ここです」


 そう言ってシャルフが案内した執務室の扉をレインは何の躊躇いもなく開ける。先ほどまでシャルフといた部屋とは違い、部屋の中は豪華絢爛。なるほど、ここが商会長の部屋であると一発でわかる作りだ。


「どうした?何か問題でも……」


 部屋の奥。そこに座っていた男、キドニー商会の商会長であるジェニーが顔を上げ、そしてレインと視線が合う。そしてその横に立っているシャルフを見てジェニーは全てを理解した。


「……任せておけばいいと言っていたと思ったのだがな」


「僕もそのつもりだったんだけどね。こんなイレギュラーが来るとは思わなかった。先に言っとくけど抵抗はやめた方がいいよ。多分僕が百人いたところでこの少年には勝てないから」


 レインに対するシャルフの評価に目を見開いたジャニーだったが、目がレインとシャルフを交互に動き、ことの真偽を自分の中で確かめているのだろう。


 見た目、というより実年齢も含めてまだ学生であるレインに対し、裏の組織、しかも世界を股に掛ける組織の幹部がそこまでの評価をしているのだ。ジェニーとしてはどれだけ信じられなくとも信じなければならないのだ。


 商人というのは情報の真偽を見極められてこそ一人前。逆に先入観に踊らされ、それを見誤るのは三流以下。だからこそ見た目では到底信じられないレインへの評価を、シャルフの情報から見直す必要がある。


「本当、なのだな……?」


「僕はさっき自分の命を最優先にしてこの少年から逃げようとした。組織から粛清も、クライアントである君のことも全て投げ捨ててだよ。後のことを考えず、文字通り脇目も振らずに

逃走を選んだけどそれは叶わなかった。多分何度同じことをしても逃げ出すことは不可能だよ。これだけ言えば君なら理解できるだろ?」


 シャルフの言う通りそれだけ言えば十分だった。そもそもシャルフほどの男が、全てを捨ててまで逃げ出そうとしただけでも大事だ。しかもそこまでして逃げられなかったと言うのだから、シャルフの言っていることを疑うだけ無駄というもの。


「そうか……」


 だからこそジェニーは理解する。どうやらここが自分の年貢の納め時なのだと。


 そんな様子をレインはただ黙って見ていた。本来なら自分が同じ役目をするつもりだったし、場合によっては力ずくで情報をはかせるつもりだったのだが、どうやらシャルフの言葉で全てを理解するだけの頭がジェニーにはあるらしい。


 見た目や偏見に惑わされず、しっかりと物事を客観的に見ることのできる目。それがジェニーにはあると言うことは、紛れもなくこの男は一流の商人なのだろう。


「君の目的は何だ?」


 だからこそジェニーはレインに問う。裏の世界を牛耳る組織の幹部がここまで言う者が、一体ここに何をしにきたのかと。


抵抗が無意味であるのなら、なるべく被害を出さないことが肝要。そのためにはレインの目的を聞き、それに答える必要がある。


 それはどこまでもジェニーが商人であるが故の考え方。リスクを減らし、その上で自分の利をとっていく。商いをする以上、どこかで損をすることはある。であるならその損をどれだけ減らすのかと言うところに、商人としての力量が現れる。


 そこまでを計算してジェニーはレインに目的を聞いた。


「お前らがゴースデル商会から買い取った半魔人。あれは今どこにいる?」


 レインもそれを全て理解した上でそう聞いた。レインの力があれば、この商会を潰すことなど容易。この屋敷にいる全ての者を殺し、完全に再起不能にすることも可能だ。


 だがそれはあまり旨味がない。リスクばかりが増えるだけで、この先に何も繋がることがない。だからレインは余計なことを聞かず自分の知りたいことだけをジェニーに聞いた。


「西側の大陸に売った」


 そんなレインの思惑を再びジェニーも察してそう答える。この少年は強いだけでなく頭も回る。ここで暴れることもできるだろうに。それにメリットがないことを理解して必要な情報を得ることだけに的を絞っていると瞬時に判断して。


「どこの国のどの商会に売った?」


「西側の玄関口。砂漠の国、ガント。そこのリオット商会に全て売った。我が商会はただの中継地であり仲卸。それ以降の販路も使用方法も何も知らない」


 問いに対する答えだけの会話。だがその短い言葉の裏では、まさに行間を読むが如しの心理戦が繰り広げられていた。


 ジェニーはいかに情報を渡さず、だがレインを刺激しないようなギリギリを探り、対するレインは迅速にかつ正確な情報を得ようとしている。


 主導権はレインにあるのは間違いないが、それでもそこを上手く躱すジェニーという構図。対価が自身の命であるジェニーではあるが、ここまでは上手くいっていると思っていた。


「最後の質問だ。お前は俺につく気はあるか?」


 だがその質問に対し、それまで淀みなく答えていたジェニーの口が止まる。


 その質問はこれまでのものとは明らかに質が違う。もし間違えれば、その瞬間自分の命はもとよりこの商会は呆気なく崩れ去る。そういう類の質問だ。


 生き残るか破滅するか。まさに天国か地獄というその質問に、ジェニーの脳内はどう答えるのが一番最適なのかを必死に導き出そうとしていた。


「諦めたほうがいいよ。ここはイエス以外の答えはない場面だよ。どのみち僕たちの先はもう絶望的なんだ。なら少しでも可能性がある方に賭けたほうがいいと思うよ?」


 そう言ってシャルフはジェニーを諭す。すでにこの商会で行われていることがレインの耳に入っている以上、明るみになるのは時間の問題。


 だとするならここでレインを何とか躱したとしても、そのうち組織に潰されることになるだろう。ならばレインについて、少しでも組織から生き残る道を探る以外に道はない。それがシャルフの判断だった。


 ジェニーはその意図もすぐに察し、様々なことを想定した上で判断を下す。何が一番リスクが低いのか。何が一番自分にとっての利となるのか。


 そしてその結果はやはり簡単に出ることになる。


「君に従おう」


 圧倒的強者は時に一人で盤面をひっくり返すことができる。それがレインによって証明された瞬間。世界を裏で支配しようとしている組織の基盤に、小さなひびが入った瞬間だった

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連載中である他作品、 【『この理不尽な世界に復讐を~世界に虐げられた少年は最強の龍となり神に抗う~』も引き続きよろしくお願いいたします。
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