お年頃なレオン
「そういや、なんでお前王族たる俺に正座させてんだよ!この悪女!」
は・・・?
いきなり口が悪くなった。と言いたいところだが今までこの部屋に入ってから話していたのがおとなしすぎただけで実はこっちが素だ。とりあえず話がずれそうなので正論でねじ伏せる。
「悪いことしたからでしょ!」
「うっ!・・・俺に口答えするのか?というかお前変だよ?今までミリアは口答えなんかしなかったし俺にそんな上から目線とったりしないし・・・」
まあ私は一応未来の王太子妃って感じでおとなしくしてたけど?
「それより話を戻します。多分ですけど、あなたはフリオ嬢のことが好きなんでしょう?」
「え?いや違う、でも、」
かなり戸惑ってる様子。魅了の魔法に負けないくらい好きな子がいたのね。私という婚約者がいながら・・・。でもまてよ?こいつはしょっちゅう仕事をさぼって私をいじめに来てたわよね?
そんな暇ないはず。まあ関係ない。
「とにかく!そんなあいまいな気持ちで婚約破棄しちゃダメでしょう?皆を困らせたらだめですよ!」
「うーん」
まだ考えてるのかこの王子は。どうせ考えたって魔法のせいでわかりはしないんだから無駄よね。
「また俺に命令した!てか俺はそんな中途半端な気持ちで婚約破棄なんか・・・破棄なんか・・・うぅっ」
!?レオンが急に泣き出してしまった。体調でも悪いのだろうか。慌ててレオンのもとに駆け寄りしゃがんで顔をのぞき込む。
「うぅ、、、ひっく、、、うぅっ」
「ちょっと大丈夫?いまお医者さん呼ぶから、ちょっと待ってて」
「いい、医者なんて呼ばなくていいから」
「体調悪いの?」
「違う」
「じゃあどうしたの?」
「なんで、婚約破棄したのか、自分でもわからなくって、取り返しがつかなくなって、」
「なって?」
よかった。混乱してただけみたいだ。でも魔法でされたとはいえ、私のことなんか大っ嫌いなんだから婚約破棄しても別にそこまで気にする必要ないじゃない。
ちょっと誤解しそう。
レオンの眼は左目が紫で右目が赤とオッドアイなのだ。かなり珍しい。髪の毛はつやつやの漆黒の黒!
目つきは鋭くてにらまれただけで動けなくなりそう。
そんな目が、これ以上ないほど不安に揺れていて子供みたいに思えてくる。
かと思えばまた強気になって。
「こんなブス、婚約破棄する側にもなってみろよ!しかも性格も王子に口答えするほど歪んでるしなあ?」
眼に涙をためながらウルウルした目で見られて言われても・・・。前みたいにその鋭い目でにらまれながら言われていたらもうちょっと説得力があったかもしれないのに。あまりにもあからさまに強がり過ぎて
つい本音をこぼしてしまう。
「そんな顔で言われましても・・・」
「う、うるさい!だまれ顔面偏差値マイナス!」
うーん。マイナスというほどひどくはないと思うのだけれど・・・。
はっ。違う違う。
「とにかく大丈夫ですか?休みますか?どうしてもというならベットも使わせてあげますけど・・・」
「いらないっ!」
顔を少しだけ赤められてそっぽをむいてしまった。
なんかいつもと立場が逆で新鮮だ。
「あ、どうしても、どうしてもというなら一緒に寝てあげないこともないけど・・・」
するとレオンは小さな声でどうしても、どうしてもという。
まさか本当に言うとは。
「んー聞こえないなー」
ほんとは聞こえてるけど、声が小さいぃ!
「一緒に寝ろ!」
また命令口調。
でもまあ許そう。
「ふふ、はい!」
するとレオンが先にベットに寝て私も向かおうとするといきなり腕を強引に引っ張られる。いきなりだったので反応できずそのままレオの上に覆いかぶさってしまう。
「へえ。大胆だね」
「ちょっ!これはレオンが」
「やっと名前読んでくれた」
名前を呼んでしまうとレオンが心の底から嬉しそうに笑うのでじっと見てしまう。
「見んな」
そう不機嫌そうに耳元でつぶやく。
「ふぁ!くすぐったいってば!」
思わず変な声が出てしまったではないか。くすぐったいと訴えるが・・・。
「可愛いぃ~」
真っ赤になってジト目で見ると可愛いとか言ってからかってくる。
そしてあろうことか、元婚約者の私の首に顔を埋めてくる。というかこれはキスされてない?どさくさに紛れて。
そして、舐めた。
「ちょ、そんなとこ舐めないで!」
恥ずかしすぎて顔が熱い。するとレオンはにやにやしながら全身をなめまわすように見る。
「俺に従っとけばいいんだよ。前みたいにな?」
「前はこんなことしなかったでしょ!?」
「あ、また逆らった」
「あ、しまった」
なんだかんだ言ってレオンのペースに乗せられてしまっている。
婚約破棄されたばっかでいろいろ家族にも話さないといけないし手続きとか忙しいのに~!
「お仕置き」
後ろにハートが付きそうなくらい甘く耳元で低い声でつぶやいてくる。
すると今度は場所が入れ替わってレオンが馬乗りになっている。
その状況に慌てていると今度は私が抵抗できないように両手を捕まえられる。レオンの手は私の1.5倍くらいあるんじゃないかというほど大きくて余裕で捕まってしまう。
え、これやばいんじゃない?
「や、やめてっ」
そんな私を無視して私の胸に顔を埋めてくる。むにゅ、と柔らかい部分が顔を包む。
「や、やぁ・・・」
なんか変な感じがする。そして内側に吸い付く。
「んっ!」
やっぱり何か変でムズムズしてなんだか気持ち悪い。でも気持ち悪いともちょっと違う・・・。
「や、めて。はぁはぁ//」
「ごめんもう無理。可愛すぎ」
さすがにやばいとたじろぐ。せめて言葉で何か言わないと・・・。
「やめ、なさっい!」
やめてとこんなに言ってるのにもうもはや聞こえてないみたい。こんなレオン初めて見た。なに?やっぱレオンもそういうお年頃なのかな。うーん、、、成長を喜ぶべきなのか。いやそれとはなんか違う気がする。