婚約破棄されました。
いくつものきらびやかなシャンデリアに照らされて、黄金に輝くパーティー会場。
そのにぎやかな会場を凍らせたのはこの国の第一王子であった。
「ミリア・エル・ホワイト、貴様との婚約は今この場を持って破棄し、新たにこのアリース・フリオ嬢との婚約をする!」
前代未聞の発言にここにいる人の大半はまだ理解が追い付いていない様子。そして婚約破棄をされたミリアはやっぱりとでもいうような表情だ。
そしてミリアの友達や親族は顔にはそれほど出していないようだがどの人を見ても怒っている。
ミリアは勉強も魔法も容姿もすべてにおいてトップだった。運動は除いて。
しかも振る舞いも同じ年の子よりも大人びていて貴族らしさを感じさせる品のいい子だった。しかも爵位も公爵家ときたのでもう、完璧としか言えなかった。それに第一王子と年が近かったのですぐに生まれてすぐに婚約の話が来たらしい。もしかしたら生まれる前から話が合ったのかも。
それで公爵家当主、漆黒を思わせる黒色の髪に優しそうな青色の目が特徴なヒュー・ラルド・ホワイトはいくら王族からの申し込みとはいえ、娘をそれはそれは溺愛していたためきっぱり断った。
だが国王はあきらめなかった。
国王『ミリア様をください!!』
父上『嫌ですぅ』
なぜか立場が逆転していたと母はお腹を抱えて笑って、つられて笑ってしまった。
というかお父様ったら国王様に対して失礼極まりないどころか、しゃべり方が気持ち悪くなっていた。
このやり取りは生まれてわずか1日から8か月と15日にもわたったそうだ。結局お父様が折れたらしい。そんなこんなでお父様がやっと折れてあげたというのにこの私の婚約者、第一王子である
レオン・スウ・フィールドは、わたしが16歳の学園の卒業パーティーに婚約をぽいっしたのだ。
お父様は怒りとうれしさが混じっている様子。
国王様は顔面蒼白。
というか、ぼーっとしている場合じゃなかった。こんな皆が楽しみにしていた卒業パーティーを下らない王子の戯言でつぶしてしまうわけにはいかない。
はっとして行動に出る。身長をごまかすための高いヒールを動かして王子の元まで歩いていき
つぶやく。
『後で私の部屋に来なさい』
今ここで話すべきではない。そもそも婚約破棄をこんなところでするとは思わなかったのだ。あまりにも非常識すぎて。でも婚約破棄したのもうなずける。
あそこのレオンの隣にいるご令嬢。光魔法と偽って魅了魔法を使っているわ。
後で法にのっとってさばいてギッタンバッコンにしてやるわ。
ちなみに断られないようにちゃんとテールネ(契約)しておいたわ。テールネっていうのはこの世界の絶対的契約。守らないという選択肢はない。無理やりにでも体が動くはず。
上級の魔法使いなら一部にやり方を知らされているが、普通の民間人には神への誓いということになっている。
この世界は宗教にもよるが、皆、神をあがめているのだ。
話がずれちゃったわね。部屋に来たら説教してやるんだから。
◇
待つこと1時間くらい。
レディーを待たせるなんて王子失格ねとか思っていたらやっと来たのだ。
私はベットに座っているが入ってきた王子は床に正座させた。
「あなたって人は・・・。いいですか?みんな卒業パーティーを楽しみにしていてにぎやかだったのに、私たちの私情で空気を凍らせたのよ?私だって楽しみにしていたのに・・・。どうしてあそこで婚約破棄をしたのです?めでたい場だというのに国王様もいらしていたというのに」
「だってそれは・・・。ミリアが・・・あれ?」
魅了魔法は複雑で解けなかったけど記憶の操作は頑張って解いておいた。魅了魔法とセットだからかなりたちが悪かったけれど。
「殿下、婚約者でない人を下の名前で呼んではいけません」
「え?・・・」
記憶の操作がなくなったことで混乱しているみたい
でももちろん魔法にかけられていることを殿下には言わない。むだに混乱を招くことになるだろうし、またなにか騒動を起こしそうだ。
「それでなんで婚約破棄なされたのですか?」
完全に混乱を解くために殿下に自分自身に確認をさせるようにきく。
「わからない・・・。今思えばなんで婚約破棄したんだろう」
「その場のノリで?」
「いや、もっと重要な理由だったはず」
レオンは10秒くらい考え込んだ後にはっとしたように顔を上げて立つ。
「そういや、お前なんで王族たる俺に正座させてんだよ!この悪女!」
は・・・?