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世界が紡ぐ物語  作者: きっしー
5/10

違和感ー3

ほぼ1年近く空いてしまいました…(^_^;)

そして、一番長い章になりました。。

これで「違和感」は完結です。

が、まだお話は続きます。

宜しくお願いします。



コンビニに寄って千尋の家に向かった。

学校近いコンビニ近い駅からはちょっとあるけどアクセス抜群の住宅街、どんだけ便利な場所に住んでんだっていつも思う。

千尋父が言うには、昔は駅からタクシーで千円圏内なのにわりと静かな場所で、穴場だったそうだ。

引っ越して間もなく増築していたこの高校の工事が終わり、その頃に照準を合わせたのだろう、偏差値も上がっていた。名門校となった知名度と増築による生徒数の増加で、学生をターゲットにした店が駅前に出始めた。そこから土地の利便性もあって人気が出て住む人が増え、どんどん開発されていったらしい。

そんな土地に住む友人を持った俺にも、確かに利便性が高くて重宝する放課後の遊び場だった。

特に千尋の部屋は多趣味でいろんなものが置いてあり、無造作に置いてあるものが宝物探しのようで面白かった。

が、今は早くファブリックミストに全身濡れ倒したい気分だった。

むしろシャワー浴びて着替えたい。

さっき突き飛ばされて突っ込んだゴミの臭いが鼻にまとわりついていて、かなり不快だった。

燃えないゴミだっただけマシなのか。

全身ゴミの臭いのような気がしてくる。

「レイ、服貸すしシャワー浴びるか?」

思った事をそのまま言ってくる千尋の鋭さに時々びっくりする。

「え、そんなに臭い?」

「いや、全くわからんけど、何かこう痒そうな顔してるし」

「顔出てた?借りてイイならそうしたい」

「ん、わかった。短パンTシャツとかになるけどイイか?」

「何でもありがたいよ」

話しながら千尋の家に着くと、そのまま風呂場に向かってシャワーを借りた。

そして、大人の服を借りた小学生のようになる。

借りた短パンは七分丈のパンツになった。

「萌え袖だな、」

喉をくっくっと鳴らして、千尋は口角を上げている。

Tシャツと言っていたから半袖かと思っていたら、ロンTだった。

手足が必然的に長い千尋のサイズを標準サイズが着ると、はみ出るものが出てくる。

「彼シャツじゃねーわ!」

片や176センチ、気持ち痩せ型の普通体型、一般的なメンズの一人。

片や189センチ、痩せ型ではあるが規格外。

首まわりはあまり変わらなかったが、明らかに肩が合ってない、袖も裾も長い、ついでに短パンも長かった。

男女で並ぶとバランスの合う身長差とか、要らねーから。

背の高い男が好きな女子は多いが、俺でも普通に首が凝る。

つか、何でロンTなんだよ、半袖でイイだろう。

「お前、半袖ねーの、」

「全部洗濯中。今度買いに行こうぜ」

どーゆーこった。

「何で全部洗濯してんだよ、バカだろ」

「考えんのめんどくさくて全部入れた」

「……お前のサイズ、店にあんの、」

「Tシャツはある」

「ふーん」

シャワー浴びている間に千尋も私服に着替えたようで、赤みの強いピンクのロンTを肘までまくっている。

元は筋肉質なのか、ブランドの微妙なサイズのせいか、袖はあまりゆとりがないようだった。

「お前、わりと腕太いよな」

その着ているロンTに指をさす。

「昔のピアノとかのせいじゃねーの、見た目は華やかだけどかなり激しいし、」

「あぁ、確かにメインは腕だけど足元も使うもんな、」

「そう。面白かったよ」

「もうやんねぇの、」

「うん。もうやらない」

「あっそ、堪能出来たんだ?」

「それはわからん。でももうあん時のテンションはナイな」

「あん時のテンションになるものは、」

「ナイけど、今は今で穏やかに過ごしてるよ」

「穏やかに過ごしてる人間は、元カノをゴミ箱にぶん投げたりしねーと思うけど、」

長いロンTの袖をぶらぶらさせて、腕をまくる。

それを見てまた、千尋はくっくっと喉を鳴らして笑った。

「まともに付き合える気がしねーなら、最初から付き合うなよ。お前女の趣味悪いぞ」

「悪かったって。アレは俺も想定外、」

笑いながら謝られても。

「途中まで桐島もいたんだぞ。お前ら見てすぐ帰ったけど、あの元カノに絡まれたって言ってたし、タイミング次第でこーなってんの、桐島だったかも知れないし、お前は選べるんだからちゃんと選べよ、」

「うん。メイ怒らせたらマジで怖いから、気を付ける」

「そーしてくれ」

桐島の名前が出た瞬間、千尋の声の温度が変わった。

この温度差のが怖いって。

千尋は桐島の事になると怖いくらいに熱が上がって大人しくなる。

そんなに好きか。

確かに美人でスタイルもイイし料理上手いし魅力的ではあるけど、一匹狼みたいな気質で近寄りがたい空気出すし淡白というか、淡白を演じているような壁を感じる。

幼なじみだからそれ以上を知っていてもおかしくはないけども、いつも二人の間には妙な空気が流れていて、それが俺には不自然で仕方ない。

この温度差に気付いてるヤツも少ないだろうけど、気付いてもただただ居心地が悪い気分になる。

回答はシンプルなのに複雑な引っ掛けを重ねられているような。

「あ、そーいやレイが読みたいって本、その棚ん中にあったぞ」

唐突に棚の右上を指す。

「手前じゃなくて、奥にあった。俺ちょっと寝るし、好きにしていーよ」

「ん、わかった」

そう言って、千尋はおもむろにベッドに向かって身体を動かした。

デカい図体でのそのそベッドに上って、ダルそうに身体を沈めている。

「おい、眼鏡は外して寝ろよ、」

「ん、」

面倒くさそうに眼鏡を外して、ベッドヘッドに放り投げている。

そのうち壊れるぞと思いながら、すぐに寝息が聞こえてくる。

寝つきイイなぁ、オイ。

セミダブルのベッドの端で、自分を抱きしめるように千尋は眠っている。

背が伸び出した時に成長痛を堪えて眠っていたらしく、気付いたらこんな姿勢で寝るようになってたって、桐島がぼやいていたのを思い出した。

その時の大事なものを見るような柔らかい表情も、思い出す。

そんなに大事なら、普段からもっとシンプルにいればイイのに。




ふ、と千尋の寝顔が飛び込む。

普段の斜めに進むような表情はなく、とても穏やかで子供みたいだ。

千尋も桐島も、何でこんなに歪んでんだろうな。

「意味わからん」





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