#01-06 さてさて模擬戦ですよー!
ごめんなさい。1月空けてしまいました。あとここまで文体が一致してませんでしたが、そろそろ安定してきますので、宜しくお願いします
始めの合図と共に芹澤は魔法を唱える。
「塵を塵に、灰を灰に、」
正直このタイミングで殴りに行きたいとこだけど、そういう訳にもいかないし。この魔法陣はー土属性の爆発系統、だとすると分かり易いのは『灰燼爆発』かな?だとすると打ち消すのは、粉塵を全部吹き飛ばす風と爆発を属性として持つ奴か、火種を打ち消す水系統の属性か、動く空気を固定する空間若しくは凍結、かな。逆襲することも考えると…、粉塵を送り返す風で行こう。
「全てを塵へと返す爆発『灰燼爆発』」
「ー『疾風転変』」
◇◇◇◇◇◇
『灰燼爆発』は三段階で構成されている。基本原理を粉塵爆発に持つため、粉塵を作る第一段、粉塵を展開する第二段、粉塵に火を付ける第三段によってできている。であるがゆえ、この魔法は標的の近くにまで粉塵があることが前提となる。またその原理上、土塊を作り出す土属性と空間に展開する風属性、火を付ける火属性が混じる高度な魔法である。攻撃の属性となるのは爆発と土であり、物理耐性や爆発耐性で容易に防ぐことも可能ではあるが、確率論で言えば火傷もありえる。
それに対し、『疾風転変』名前こそ仰々しいものの、実際に行なっていることは、空気の圧縮と指向性の付けた解放のみである。ただし魔力の掛けた量によって圧縮量に調整が聞くため汎用性が高い魔法である。
◇◇◇◇◇◇
芹澤さんの初手は灰燼爆発ですか。火力が高く使い易い魔法で、よく使われる手ですね。絢波さんは疾風転変、ということは爆発を逃すつもり…。いえ違いますね、規模とタイミング的に爆発を芹澤さんの周りで起こすつもりですか。
案の定芹澤さんは自分の爆発のダメージを食らってますね。今度は近寄りながら土と刺突属性の『大地新笋』ですか。
「地より生まれ、天まで届く、空穿つ大地の槍『大地新笋』。貫け!」
絢波さんは微妙に前にズレつつ足元に魔力を集中させて…!
上ですか。成る程、飛び出てくる勢いに乗って飛び上がりましたか。
◇◇◇◇◇◇
『大地新笋』。属性としては土属性と刺突属性に分類される。指定座標から高速で土製の槍が垂直に飛び出す魔法である。どちらかと言えば奇襲要素が強く、読まれると踏み台にされることも多々ある。ただし攻撃速度は速く、音速の3倍を超え、またその速度と強度から対人では命中した場合は確殺できる魔法の代表格でもある。
◇◇◇◇◇◇
さて、飛び上がったはいいけどどうしよう。いやまあ考える必要もないか。速度重視でいきますか
アレがばら撒いた魔力が空間に山程浮いていることを加味し、符を投げると読み通り魔力を吸って魔術を発動させる。
ああ、やっぱりこっちは見てないか。見てれば手の打ちようもあるのに、目が悪いわね。
ばら撒いた符の内4枚が起動し8本の雷撃が光速で芹澤を貫いて終わり。
「死ねぇ『雷槍』」
ああ、ギリ耐えたのね。まあ威力抑えめだったから仕方ない。けどもう打たせるのも面倒ね。
「『天翔』」
そのまま、雷槍を打たれる前に接近し拳を鳩尾に叩き込む。予想通りに吹っ飛び、決闘結界にぶつかって上へ跳ね上げられる。
「そこまで。勝者、絢波狭霧」
一応保険的にさらに飛んだのは完璧に無駄になったわけだが、まあいいか。地に降り、神凪のところに向かう。
その後ろでは芹澤が逃げる様に去って行った。
「これでOK?」
「いえ、まあ増長している者の鼻をへし折るのにはよかったんですけど、一つ質問いいですか?」
「はい?何でしょうか」
「今のは本気でやりましたか?」
「それはどういう意味ですか?」
「今やれる全力で戦いましたか?」
その質問の答えは難しいわ。私が出して良いと考えるギリギリは大体これぐらいになるが、そもそも私は魔法だの魔術だのは得意じゃない。補助演算装置と組み合わせるか、小さめのものを高速で組み立てて小細工する程度でしかない。まあそれでも彼奴等と比較した場合の話だから、一般的なLv.100超えの魔法職と比較するとトントンくらいね。それに、お姉ちゃんに貰った髪飾り、魔力消費軽減と魔法陣生成補助、自動回復まで付いてるからもうちょい上かも。【万象再生】や海神が使えるならもっと上がるか。
「質問を変えます。この召喚でこちらに来る前に魔法などを使えましたか?また使った戦闘行動をしましたか?」
「それはyes。使った戦闘も結構多いですよ。第一に、今私が持っている物の中にも魔力前提のものが含まれているのですが」
「分かりました。では、本当の実力を試させて貰います」
ーー。どうしてこうなった?まーいっか。そこまで今後に差が出るわけじゃないし、いつも通りの戦法でやりますか。というか、神凪さん?何故聖騎士を呼んでくるの?しかも剣も魔力操作も上手な奴。
「絢波さん、準備はいいですか?」
っともう始めるらしい。海神にとりあえず貫通系統と爆発系統を仕込み、髪飾りと手首の魔法補助システムに魔力を通し直す。意識を戦闘モードに切り替える。
「決闘形式による模擬戦、始め!」
◆◆◆◆◆◆ 場面転換
聖騎士、白雲水城は開始と同時に魔術を起こす。
「『流星想雨』」
そう言うと同時に魔法陣が4つ展開される。4つを同時に展開、部分的に重ねることで、火力を水増しすると同時に制御に割く部分を個別に展開するよりもことに成功しており、これだけで実力があることが窺える。それを見るより早く感知すると狭霧は海神を構え、術式が完成するその瞬間を狙ってその制御部に単なる魔力の塊を撃ち込む。と同時に障壁を展開する。
制御部を破壊された流星想雨は完成する直前であったが故に制御を失って辺り一帯にばら撒かれる。制御部を壊されたことを見て取った水城は腰の剣を魔法を呟きつつ辺りを切り取る様に振り払う、
「『断絶』」
その魔法と共に剣の通った空間に裂け目が生まれ、流星想雨によって生じた多数の光弾はその隙間を越えられず地で爆ぜる。断絶は空間に隙間を作ることで物理的に動くものを全て通さない空間系魔法であり、その発動には長い時間が必要となるが、発生時間を数秒、位置を剣閃の通った位置に限ることで高速に発動させ、間に合わせた。一方狭霧は予めこうなることが読めていたために絶対恐怖領域、所謂A.Tフィールドを限定的に実体化させることで弾く。
結果としては双方ともに無傷で、地面に大穴が空くばかりとなっている。そこまでを見届けると、水城、狭霧共に一旦様子を窺う。水城は、狭霧に発動前でもなく発動後に相殺するでもなく、もっともやられた側がダメージの大きい発動直前のタイミングで制御部を破壊されたために警戒レベルを引き上げた。一方狭霧も、術者にもっともダメージが出るタイミングを見計らったにも関わらず躊躇せずに魔術を放棄、自衛を最優先にした技量を見て、相手がかなりの猛者であることを知った。
水城は結論として、自分のスタイルを崩すのがもっとも負けへ近いとした。故に、着ている鎧などを切り替える。
「【浮遊障壁 イナグザシティブル・ガリダ】第二楽章」
そう水城が呟くと彼女の纏っていた鎧が変形する。全身鎧からより動きやすい形状へと変化すると同時に、周りに浮遊する障壁が生まれる。その様子を見て、狭霧は己が先程まで考えていた評価を再度変えることになる。パリィ型タンクの魔法アタッカーではなく、軽装近接戦闘型と言うのが水城の基本スタイルである。先程の広域殲滅は単なるブラフであり、本命はこちら。そしてその身軽になった身のこなしで一気に距離を詰め、狭霧の首筋へ剣を振るう。
狭霧は意識を近接使用に切り替えると、初撃を後方へ大きく退く事で凌ぎ、その後の短剣による八連撃を閃雷で全て弾く。そのまま棒を水城の胸に突き込むと、浮遊障壁に防がれ、その瞬間を狙い澄ましたように水城は左手で拳を狭霧の鳩尾へと叩き込む。俗にEND-STR型と言われる構成でありながら、AGI型に匹敵する速度をも持つ水城の攻撃力はかなり高い。素手による打撃オンリーで城を破壊できる程に。とはいえ狭霧もさるもので、打撃が飛んできた瞬間に離れ衝撃を殺すと共に海神を抜き放ち、ぶっ放す。
「『雷神顕現』一式、『雨乞』『落雷』弾薬換装『AAP弾』」
その魔術が発動すると雷撃が水城へと殺到する。さらに上空から落雷がやはり水城へと向かう。さらにトドメと言わんばかりに対装甲貫通弾を三発叩き込む。雷撃は雷が軸なだけあり、光速で目標へと向かう。その攻撃はそこまで水城にダメージが徹る訳ではないが、雷属性でもかなりの火力を誇る雷神顕現や雨乞+落雷のコンボを着弾が同時に起きる様にすると、一瞬ではあるがヒットストップが発生する。その瞬間を縫う様に飛んできた対装甲弾は浮遊障壁を砕き、保険に入ってきた他の3枚を砕いたところで効力を失う。その後続の弾頭も浮遊障壁を貫通していくものの、本人に当たることはなくその手前で効力を失う。
然もありなん。【浮遊障壁 イナグザシティブル・ガリダ】はボスモンスター、その中でも特に強力な神話級のMVP討伐報酬である。
そも、ボスモンスターとはこの世界に設定された目標。この存在を打ち倒し、そのMVP報酬を得ることは、世界に力を示し、創造者に対してまだ生きる気があることを提示することである。そして、であるが故にMVP報酬はそのボスモンスターの最も重要な側面を武具の形で表出させ、持ち主にその力を与える。
そして、【浮遊障壁 イナグザシティブル・ガリダ】 はかつてこの国を襲った災厄、【無限連装 イナグザシティブル・ガリダ】の遺品である。【無限連装】は巨大な亀型のモンスターであり、身の回りに大量の移動浮遊障壁を持ち、破壊されても秒間3枚のペースで復元される。また、一枚当たりの防御力もかなり高く、これを倒すには、【無限連装】が移動できない様にする強力な拘束、一瞬で障壁を破壊する火力、秒間3枚以上で割り続ける持続力が必要となった。更に、本体には魔法魔術などが通らない仕様であったため、高火力の魔術を大量に叩き込む戦術を使うことはできなかった。
故に、【浮遊障壁 イナグザシティブル・ガリダ】の本質も防御である。常に12枚の障壁を展開、攻撃と所有者の間に所有者が気づいた場合割り込み防御する。更に破壊されたとしても秒間2枚の修復をノーコストで行うブッ壊れ性能の鎧である。寧ろAAP弾三連射により1秒で12枚割り切ったことが以上とも言えるレベルである。
その防御力により、大概の相手には即殺コンボと成り得る攻撃を無傷で凌ぐ。その水城の後ろへと狭霧は回り、首筋に短剣を当てようとするがまたも弾かれ、正面へと舞い戻る。そのタイミングに合わせ、水城は突っ込みつつ雷撃を撃ち込む。狭霧はそれを弾くと剣を棒で受け、ギリギリ割れない程度のダメージで障壁を蹴る。更に海神を撃ち、12枚の障壁全てに割れるギリギリのダメージを与える。更に狭霧が閃雷を槍へと変形させよとしたタイミングで地面が爆ぜる。
「『N2爆雷』」
空間が弾け双方にダメージが入る。その衝撃により、ダメージが蓄積していた障壁群が壊れ再生される。と同時に砕けた障壁が高速で狭霧を捕縛に掛かる。それを狭霧は突っ込むことで躱すとそのまま、勝負を決めるべくこの戦闘史上最高火力の攻撃を放つ。
「『祭禮の箱』『ダゴンの運命』」
旧約聖書サムエル記の出てくるエホバの箱及び異神ダゴン。これは持たざるものにとっては勝利の象徴であり、得た者にとっては敗北の象徴である。それをモチーフに象られたこの魔法は、必殺級である。『祭禮の箱』は箱に目標を閉じ込め、『ダゴンの運命』はヤハウェによって頭と胴を離されたダゴンに準え、目標の首を落とす。切り落とす訳ではなく、構成する情報を繋がった状態から切り離された状態へ書き換える。先手をとって拘束したため、避ける手段はなく、概念であるため盾で防ぐことも出来ず。水城はその呪いを直に食らって死亡する。
「そこまで。勝者、絢波狭霧」
神凪が終わりを告げたことにより、結界は解除され、様々な消耗などが回復されると共に、3人で感想戦に入った。