#01-05 さて戦闘でもしましょうか
さてそろそろ実戦パートに入って行きます。
さて、今日から本格的な実技訓練に入るわけですがどうしたもんか。まあいつも通りにやりますかね。
「はい。今日から本格的な戦闘訓練を含む実技訓練を行います。先に釘を刺しておきますが、異世界人だろうと特別な成長補正や才能、チートは持ち合わせていないので悪しからず。貴方達は私達より初期ステータスとスキルにおいて僅かに優位な立場にあるだけです。努力せずに上手くなろうなんて思わないでください。努力したことは必ず身につきます。努力したからと言って結果がついてくるとは限りませんが、努力しない者に未来はありません。ある程度の結果を残したいならそれ相応の努力をしてください」
結構な長台詞だが予想通りの内容だった。やはり神凪は本気で私達に生きて欲しいらしい。にしても昔チートを期待した阿呆がいたのか。真面目に考えてゲーム世界でもなけりゃそんな都合の良いことなんてありえない。そこまで思考を進めて気付く。ゲーム世界だと思えばそう思い込むことは可能になる。そうやって見るとこのステータスウィンドウとか如何にもゲーム的だ。更に表示されるのは勇者とかその系統。勘違いしても仕方ないかもしれない。既にVRMMOが庶民の手に届く範囲にまで来てるし。
「まず素振りと基礎体力トレーニングです。これをやらないと剣をまともに振ることもできません。まず5キロ走って、その後にこの綱を登って下さい」
何をするにせよ体力は必要だからということだろうが、クラスの連中は割と絶望しそうだ。私は面倒だしさっさと済ませることにする。取り敢えず表に出て時速20キロ弱のペースで走る。サクッと15分で走り終え、綱を登る。柔道部御用達な感じの腕だけでの綱登りだとかなり人を選ぶ気がする。そこまで終えると終えた人に追加メニューが出される。言うまでもなく筋トレメニューである。
「時間加速結界で12倍に引き延ばしているので安心してゆっくりやってください」
やっぱし心読まれている気がする。心の中で思ったことに対する返答が早すぎるかな。で今筋トレやってるのは私と剱岳八重だけか。剱岳も剱岳で脛に傷を持つタイプ、というか実家の剣術の裏がやばいから、まあそんな感じだろう。
「狭霧。やっぱし私らだけね」
「まあそうなるでしょう。元の世界で刃物だのなんだのを実際に運用してたのは私らだけだしね。目立つの面倒だからアンタと同程度にしか扱えないことにするので、その辺は宜しくお願い」
それだけ言うと離れることにする。対外的には私と剱岳八重に縁はなく、過去に共闘した事があることも、私が助けたことも全く知られていない。剱岳には若干の借りもあるから剱岳のクラスカーストを守るために仲がよくないことにしておく。
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やはり絢波狭霧に剱岳八重、この二人が優秀ですね。恐らく剣を握れる人たちでしょう。まあ、御構い無しにやりますが。この後にどの武器を使うか選んでもらいましょう。恐らく両刃の剣と刀が人気で、その他の武器に人気があるとは思えませんが。生産系では何処が人気ありますかね。まあなんにせよ本気で生きて欲しいですね。私達が勝手に呼び出してしまったとはいえ、人は何処でも生きれますから。
さて、時間加速した甲斐がありそうですね。外部時間で一月、その程度の期間で模擬戦が成り立つ範囲まで武器を使えるようになりましたか。剱岳はほぼ全力でやってるでしょうが、絢波は手を抜いてますね。恐らく目立ちたく無いのでしょうが、目立ちたく無い人が取る行動としては不思議の域に入りますね。全部の記録において剱岳八重に合わせるような真似がそう簡単に出来る訳もないですから。
その他の人達はそこそこと言ったところですね。勇者の人とかはもっと伸びるかと思いましたが、今回の配役では勇者は指揮官寄りですね。成長補正が入ってあの程度だとするとまあ、そこまで期待は出来ませんか。そもそもこの人達に戦争を肩代わりして貰う気は無いから関係有りませんが。
なんでしょうか、絢波さんが手招きしてます。果たして何の用ですかね。あまりいい予感もしないですけど。
「思い付きですが、そろそろ実戦訓練があってもいい頃ではないでしょうか?」
絢波さんは言う。それに関して私は考えてなかった訳でもないですが、先延ばしに成りがちでした。ただまあ、そろそろ対人戦闘、殺害の経験と伏せてやらせないと不味いですね。強大な力と勘違いして調子に乗らないようにも気をつけないといけないですし。まあその辺のことはこの人がさりげなく抑えているので大丈夫でしょうが。
「予定はありますよ。この街の中央部の塔、時々気になっているでしょうが、あれの地下が、神造迷宮が一つ、墓標迷宮です。本当に神が作ったかは知りませんが、そういう事になっています。あそこの迷宮を探索する事が訓練です」
そういうと、反応は薄いものの納得したようで、戻って行きました。
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墓標迷宮ね。確か、不安定かつ不定期に存在するようになるダンジョンに蓋をつけることで、入り口を安定化、さらにボスモンスターシステムを半ば強引に刻む事で扱い易くしたとこ、と聞いたような気がする。そもそもこの世界には、後付けのドロップシステムによって色々と増えていたような気がする。まあいっか、どうしようが構わないし。私は彼奴らに言われた通りに楽しむだけ。じゃあ、どっか片田舎で雑貨屋兼喫茶店でもやろう。
ふむ。また調子乗ってる馬鹿がいる。私向けられた訳じゃあないが、なんとなしにムカつく、
「相変わらず弱いなあオイ」
いい加減気づいて欲しいものだ。その台詞回しは悪役だってば。
「はいはい、そこまでにしてね。それ以上やるようなら、吹き飛ばすわよ」
取り敢えず割って入り、声をかける
威圧してるって?知らないわよそんなの
「あ?絢波か。そこをどきな。私は今から其奴を特訓してやるんだから」
「砂袋扱いするのは特訓とは違うと思うよ」
そう言い返すと、目に見えてイラつき度合いが上がる。芹澤優子だっけか、この人。同じクラスの人くらい覚えておくべきとも思うが、仕方がない。それは兎も角、やっぱり沸点が低い、ね。他者を見下すことで己の優位性を保とうとする。私が言えた話でもないけど、醜い。
そして、ここで騒いだらお目付役の神凪さんが来るのよね。いやまあ私が連絡しただけなのだけど。
「どうしたのですか?お二人とも険悪な雰囲気を漂わせて」
「いえ、主張が対立したので、決闘で決着をつけようかと思って」
恐らくこの提案に乗ってくるはず。これで勝てればもう私に干渉される危険はないし、向こうは私の戦闘力は見ていない。なら確実に乗ってくるはず。
「ええ。決闘で白黒をはっきりさせるわ。覚悟しろ、絢波狭霧」
そう言うと芹澤さんは去っていく。
「実際のところ、どう言うつもりですか?絢波さん」
「どう言うもこう言うも、アレが調子乗って他人を威圧し始めたのでお説教です。他の人には気付かれない様にお願いします」
「そう言うことならお願いしますね、絢波さん。剱岳さん共々、力に酔った莫迦が不味いことを仕出かす前に止めてください」
任されました。さてどう決着つけようか。正直一撃必殺は上手くない。言い訳の余地無く叩き潰しておかないといけないとなると、やっぱし魔法は相殺か打ち始めを崩す感じで、近接は武器破壊と、手首への打撃で武器奪取を狙うか。
「準備できましたよ。移動してください」
神凪に声を掛けられる。
「ルールは?」
「ルールは魔法近接遠距離全部有り、武器は支給ということになります」
「分かりました」
「これより、絢波狭霧と芹澤優子の決闘を行います。立会人は私、神凪夕姫が務めます。お互い、準備は良いですか?」
「問題ない」
「大丈夫ですよ」
「それでは、始め!」
わけわからんと思ったところはどしどし行ってください。改善するので