第七話:勇者
すごく嫌な予感がする。
さっき騒いでいた女の子が近づいてきた。
「すいません、お願いがあるんですけど…」
無理です。と即答しようかとも思ったけど少し聞いてみようかな。
「具体的に教えていただけますか?」
「はい、これは正当な依頼として扱っていただきたいということを先にお伝えしておきます。
つまり、報酬をしっかり払うという前提を理解してほしいのです。」
「わかりました。」
「では、本題に移ります。マンドラゴラ討伐依頼を一緒に受けていただきたいのです。」
実在する植物の方かと思ったけど違うみたいだな。
多分人面草の方だろう。
というより、なんか怪しい。
もう一度と言ってたし、さっきから笑顔を浮かべてはいるけど
目が泳いでる。
鎌かけてみるか。
「いいですよ。」
「本当ですか!ありがとうございます。」
「ただし条件があります。受けるにあたって、そちら側の事情を聞かせてください。」
それを受けて、女子は驚いたような顔をしばし続ける。
しかし、それもすぐに終わり、なんだか腑に落ちたような顔をする。
「はぁ…やっぱりばれてたかー。演技下手だなあ私。まあもう演技しなくていいと思えばいいか。
改めまして、私の名前は宗像早紀《ムナカタサキ》。召喚者で聖弓の勇者。「召喚組」の副リーダーです。
で、あなたの名前は?まあ名のある冒険者か何かでしょうけど。」
何、召喚者組って?
「俺は十条陽。聖棒の勇者で、転移者の一人だ。」
伝わっただろうか…そこはかとない不安にかられる。
そんな思いを胸に宗像を見るとまた唖然としていた顔をしていた。
またすぐにもとの顔に戻ると今度は大きく笑い始めた。
一人で百面相?
「アハハハ、何それ。冗談でしょ。そもそも勇者は召喚者しかいないって国王様も言ってたし」
はい、国王様も信用性にかけますねぇ。
よくあるクズ王パターンかな?
っていうか片方の情報を鵜呑みにするのは危険じゃないかな?
「いや、俺はれっきとした勇者だ。証拠を見せよう。来たれ、「聖棒」!」
そう俺が叫ぶと手にはもう聖棒が握られていた。
よし、成功だ。
「そ、そんな…私達は騙されてたってこと?」
「残念ながらそうみたいだな…一つ質問いいか?」
「何?」
「今私達って言ったよな?」
「うん。」
「その「召喚者組」には他にも勇者がいるのか?」
「ええ、いるわよ。召喚者組リーダーの聖剣の勇者小畑和彦《コバタカズヒコ》がね。」
あ、主人公だなそいつ。
「でね、ついでになっちゃうんだけど、聞いてくれないかな?」
「別にいいよ」
「その聖剣の勇者がこの前遠征に言ったときに、大怪我をして、動けなくなってしまったの。
それを回復するためにマンドラゴラが必要って訳なの。」
なるほど、理解した。
それにしても勇者達ってことは、デメトリオも関係ありそうだけどな。
「あまり時間がないの。早めに始めないとおそらく彼は死んでしまうでしょう。」
なるほど、一刻を争うと…
どうするべきかな。
目立ちたくないならやらずに見捨てるべきだ。
だが俺はそんなことはできない。
仕方がない、やるしかないな。
「事情は理解しましたか?」
「ああ、大丈夫だ」
「ではもう一度聞きます。依頼に協力してもらえますか?」
「はい」
なんだか、波乱の予感がするなぁ…
今からでも断ろうかなぁ…