第二話;初戦闘
この話から一人称視点となっております。
……
深い眠りのようなものから覚めた。
記憶を整理しよう…確か、教室にいたら突然話し掛けられてそのまま異世界に連れてかれたんだった…
我ながらこの記憶はおかしいと思う。
もしかして目を開けたら教室とかないかな?
恐る恐る目を開ける。今までは聞こえなかった音と周りの状況が入ってくる。
これ、音がしないのかと思ってたけど耳が聞こえなかっただけか…
それはどうでもいいんだ…まず目を開いて飛び込んできたのは岩の壁、岩の天井、岩の床…
まごうことなき洞窟である。しかもどうやら一番奥らしく、奥は行き止まりになっている。
まあ、逆方向からは少し光が漏れているからそこまで深くはないだろうけど…
しかも今は寝転がる態勢になってるので背中が痛い。痛いってことは夢じゃないのか…
とりあえず起き上がってそのまま立ち上がる。
なるほど、あの人(?)の言ってたことは本当だったのか…
いや、仮に本当だったとしてもいきなり異世界に転移させるとか絶対頭おかしいだろう。
よくweb小説でそういうのいるけど現実にもいるのか…
じゃあここも異世界と同じだと思えばいいのか?なら、あの言葉も通用するか?
「ステータスオープン」
画面が…出ない!
これじゃあどうしようもない。
適性もデフォルトの状態もわからない…
[そう悲観するでない]
あ、声聞こえた!
「戻してください」
[これは録音音声である]
用意周到…どうしようも無いじゃん。
[君にはこの世界を冒険し、データを集めてもらいたい。すぐ死なれては困る。そこで、君には武器を与えておく。]
{聖棒を手に入れました}
うわ、どっかで聞いたことある声だなあ…
つうか聖なる棒って…すごく中二病臭いな…
[まあ、それを使いこなせるかどうかは君次第だ。それは持ち主と共に成長するのじゃからな。理解したかな?では、異世界を満喫したまえ。]
はい、アウト!
つうかなんだよ、データを集めるって…どう考えたってスパイだろうが…
結局のところ俺は都合のいい道具扱いか…
むかつくが今の俺じゃあどうしようもないな…しばらくは黙ってるのが得策だろう。
さて、文句を言うのはこれぐらいにして、さっさと行動しよう…めんどくさいけど。
まあ、とりあえずこの洞窟から出るのが最初だな。
行こう。
光が眩しくなっていく。
そして、光が周りを埋め尽くす。すぐに目がなれて来る。
そして、目の前には肌が灰色の背の低い人型の生き物がいる。手にはツルハシ。
えっと、これがこの世界での人間かな?
「こ、こんにちはー」
こういうときは先に話し掛けよう。
多分テンプレ系の奴なら言語理解とか言うチートスキルがあるだろうし。
「ウガァ!」
いきなりツルハシを振り下ろして来る。咄嗟に避ける。
え?もしかしてここって拳で挨拶する世界なのか?
いや、そんな訳ない。仕方がない、これは認めざるを得ないな…
こいつはオークだ。よくある豚型じゃなくてエルフが堕落した奴。
つうかツルハシが当たったところ地面がえぐれてるし。
「ウギィ…」
回収するの遅いな…動きもゆっくりだ。
気をつけるべきポイントは振り下ろすときだけか…
じゃあこいつ倒すしかないんだろうけど、さすがに抵抗あるな。
まあでもここで殺さなかったら多分こっちが死ぬだろうし。
そもそも倒せるかどうかすら怪しいんだ。あの棒、ちゃんと来るかな…
いや、やるしかないか。
「聖棒!」
叫んだ瞬間手が棒を掴んでいた。
これ実際どうなってんのか知りたいな…まあ今は相手に集中しよう。
「ウガァ!」
また振り下ろしてきたな。フェイントも何もないので避けるのは楽だ。
で、がら空きのところに近づいてどつきまわす。
連打!
「グギィ!」
そのたび悲鳴を上げるオーク。くそ、モンスターと分かっててもつらいなこりゃあ…
「グギィ…」
30回ほどついたところでオークは倒れた。そしてオークの死体は消えた。
やっぱりこれ精神的に来るな…いや、割り切らないと。
次は食糧のことを考えないとな…