第十話:事後処理
気がつくと、俺は広いテントの中に入っていた。
周りにはたくさんの怪我人が寝転がっている。
記憶を整理すると、リュークを撤退させたところで意識が途切れている。
つまり、ここはおそらくベルデルのテントだろう。
周りに雨音が響いているし。
怪我人達はぴくりとも動きはしない。
死んでるんじゃ…?
そんな予感が脳裏を過ぎるが、隣の人が呼吸しているのを見て安心する。
出るか。
ゆっくりと起き上がり、ベットから下りる。
そのまま下においてあったサンダルを使って歩き出す。
よし、足もいたくないな。
強いて言うなら手が痛いことぐらいだろうか。
まあそれは筋肉痛だろうし、考えても仕方のないことだ。
出入口まで来ると、そこにおいてあった傘を取る。
「ご自由にどうぞ」と書かれていたので大丈夫。
だと思う…
そのまま外に出る。
外に出た瞬間、ひんやりとした空気が体を覆う。
寒いな…
テントの前ではたくさんの人が復旧作業に当たっていた。
一人はガレキの撤去に。
一人は差し入れを持ってきたり、
等など総出で復旧しているようだ。
頑張れ。
とてもそういいたくなった。
そして、こちらに近づいて来る男が一人。
デメトリオだな。
「おお、陽。元気になったのか!」
「ああ、おかげさまでな。」
「そうか、よかったよ!」
「それじゃあ、俺は復旧を手伝って来るよ。」
「ちょっと待ってくれ。いいお知らせがある。」
行こうとした陽をデメトリオが引き止める。
何だろう。
「なんだ?」
「ああ、領主様が五芒団にやられちまってな。この前言った合流の話は無しになったんだ。」
「なるほど、分かった。」
合流の話っていうとあれか、召喚者組の奴。
というか召喚者組って勇者組と違うのかな?
まあ、とりあえずは無くなったのを喜ぶべきかな?
「そうそう、聞いたぜ、棒の勇者の話。二つ星「呪鎌のリューク」を撃退したらしいな!すごいな!」
あ、あの人「呪鎌のリューク」って言うんだ。
中二病かな?
いや、これはさすがに失礼か。
あ、そういえば一つ聞きたいことがあったんだった。
「なあ、デメトリオって俺達が戦っている間どこへ「デメトリオさん、少しいいですか?」
「ああ、いいぞ。悪いが陽、後でな。」
そういってデメトリオは復旧に戻った。
っていうかなんで人が話してる最中に話しかけるんだよ。
おかしくね?
まあこの話は今すぐ聞かなきゃいけないことでもないし、後でもいいかな。
そう考えた陽も、問題を先送りにし復旧作業に参加した。
この先送りが、どういうことを引き起こすかも知らずに……