告白
家を出て、バス停までは1キロの道のり。
日の暮れた山道、50メートル間隔で並ぶ街灯。
その空は晴れ渡り月明りの無い夜道を見上げると満点の星空が広がる。
「うわーー、綺麗だねーー」
何故か、家を出てからも僕の左手を握ったまま、手を繋ぐ日野渡さん。
当たり前のように、女の子と手を繋いだ事も無い僕。
僕の鼓動が手から伝わってしまうような気がした。
歩いて10分程度の距離の為、立ち止まり名残惜しそうに星空を見上げている。
夢で見た少女。 謎の少女。 何か怖い少女。
その3点のみでしか、日野渡さんを見ていなかった僕。
こうして改めて星を眺める彼女を見ると、凄く可愛く感じるのは気のせいだろうか?
「ねぇ、日野渡さん……」
「何?」
空を見上げたまま、僕の呼びかけに答える日野渡さん。
「何であんな嘘言ったの?」
「嘘って?」
「えっ、あの…… 付き合ってるとかって……」
初対面で、「彼女は作らせない」とか「童貞のまま卒業」と言った日野渡さん。
なのに、あの場で付き合ってると言った意味は何だったんだろうか?
僕は別に、女の子なら誰でも良いという訳では決してない。
決して無いんだけど…… 日野渡さんなら良いかなと思ったのも事実だ。
「迷惑だった?」
「いや、迷惑っていうか…… 本当に付き合ったりとか……」
誰も居ない夜道。 満点の星空。 謎の女の子。
雰囲気に流された訳ではないが、何故か勢いで告白めいた事を言う僕。
「私は玲汰とは付き合わないよ。 だけど玲汰を他の女の子には渡さない」
「………… えっ?」
ナニイッテンダ?
「だから、私は付き合わないけど、玲汰は誰にも渡さないって事」
「……………………」
僕の人生初告白の返事はイエスでもノーでも無く……
理不尽だった……。