プロローグ
18/4/25 改稿作業につき1-3pを変更
タイトルに話数がついていないのが作業済の部分です。作業が済んでいない所と少し食い違いが発生していると思います、ごめんなさい。
そこは、静かで荘厳な雰囲気が漂うーー異様な空間であった。
上下左右、どこを見渡してもその全てが白かった。暗闇の一片たりとも許さないとでもいうように陰一つ落ちていない。その一様な白さのために床と壁、壁と天井の境が曖昧になって、この空間がどのくらいの広いのかわからない。
窓や扉など外と繋がっているものは見当たらないものの、何故か息苦しさを覚えることもなく、むしろ冬の森の中のような、冷たくて澄んだ空気で満ちているように感じられた。
この白い空間の中に唯一存在するのが、これまた純白の色をした女性の像だ。像自体はそれこそ色さえついていれば本物の人間かと錯覚してしまうくらい精巧な作り込みがされている。神の手によって造られたのではないか、そんな突拍子もないことが頭によぎるくらい彼女は美しかった。
しかしこの異常な空間の中では、その美しさは毒だ。彼女は見る人の存在の汚さや醜さをくっきりと映し出し、この空間で異物なのは自分ではないのかと酷く不安な気持ちへと駆り立てる。
現実離れした空間に、もしかしたらここは天国なのかもしれないと考えるも、天光裕輝はすぐにそれを否定し、内心で苦笑した。死んだという自覚もないし、今更自分が天国にこられるとも思えなかった。
それに何より、この状況に置かれているのは自分だけではないのだ。自らを含めて30人――私立白木院高校1年A組のクラスメイトと副担任、そして不幸にもこの異常事態に巻き込まれたもう1人の人物が、この空間で呆然と立ち尽くしていた。
裕輝は、自身が周りと比べて少し特殊な存在であると認識している。
「ようこそ異世界へ、勇者様方!」
だからこそ、祭服を身にまとった男がそう告げたとき、ここが異世界だということをすんなりと受け入れた。
そして自身にたったフラグに気がついた。気がついてしまった。
――俺って、踏み台勇者?