第四話 特例入団
「はやくん、将来の夢は何?」
母さんの声が聞こえる。
「ぼく、将来ハンバーグ屋さんの店長になる〜」
幼い時の僕の声が聞こえる。
「あらあら、いい夢ね。大きくなったら食べさせてね!」
「うん!」
「隼人、進路どうするの?夢とかあるの?」
母さんの声が聞こえる。
「どこでもいいよ、別に。夢は…言いたくない」
僕の声が聞こえる。今度は幼い時の声でなく今の僕の声だった。
「別にバカにしないから言ってみてよ。母さん応援するから!」
「うるさいよ…あっち行っててよ…」
「でも母さんね…」
「あっち行ってよて聞こえなかった?」
「……ごめん……」
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「はっ!」
ゆ、夢か?
夢に母さんが出てきた。
だが、母さんが出てきたところしか覚えてない。
まぁいいか、夢だし。
そして僕は部屋の冷蔵庫をあさり朝食を食べた。
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「おい、隼人、総長がお呼びだ。早く行け」
「ザーク隊長、なんで僕が呼ばれるですか?」
「知らん!さっさと行って確かめろ!」
もっともらしい事を言う、ザーク隊長。
面倒な事じゃないといいけどな……
___
僕は総長室の前まで来た。
さて、どうやって入ろうか…
ノックはすべきだよな…
僕はノックをした。
「どーぞー!」
そう言われ、僕は部屋の中に入る。
部屋はthe 偉いさんの部屋って感じだ。小学校で例えるなら校長室に似ているかもしれない。
「おやおや、特例くんいらっしゃーい!」
特例くんとは僕のことなのか?
「あ、お邪魔します…」
僕は総長にそう言葉を返す。こういう時にどう言葉を返せばいいかわからない。
長年の対人恐怖症のせいだろうな…
僕は総長の前に立つ。総長は男性だった。
そして意外に若かった。年齢まではわからないが肌がすごく白く、ヨーロッパの方の人みたいだ。ハーフか?それとも本当にヨーロッパから来たのか?
まぁ、今はそんなことどうでもいいか。
「君はすごく運がいいねぇ〜、だって普通じゃ入れないようなところにいるんだからねぇ。大出世コース突入だよ君!」
総長は愉快に言う。
喋り方ティーファ先輩みたいだな……
「あ、ありがとうございます」
一応礼を言っておく。
「そんで君はなんで特例で入団できたかわかる?」
「助けた条件とかなんとか…」
こんな強制的な手段あるのかよと最初は思ったが、僕は最終的に望んで入団したから別にいいんだけどな…
「そうそうそれそれ!まぁ助けるのが君じゃなかったら入団なんかさせてなかったと思うけどね。助けて入団させたのはただの建前だよ」
「それって、どういう……」
なんだろう、選ばれた人間?照れるな〜
「なぜかというとね、君の社会的ランクがD未満だからだよ」
「……………え?」
社会的ランク?なんだそりゃ…
「まぁ、簡単に言うなら社会にどれだけ貢献してるか、または、将来的にどれだけ貢献するか、我々アルカディアの方で決めているんだよ」
「へ………?」
何が何だかさっぱりわからない。
「君は我々の情報で人間を選抜する機械で落ちこぼれと判定されたこと」
え?バカにされてるの?いや、落ちこぼれって自覚はあったけど…
「でも、何で僕みたいな落ちこぼれを採用するんですか?普通、社会的に優秀な方を採用するんじゃないですか?」
「なぜ落ちこぼれを採用するかと言うとね〜、君を日本のナイト、ブシドーの実験体にするためだね」
「えっと……つまり……」
「ブシドーはね世界初の機能をいろいろと詰め込んであるからね、人体に影響があったら大変だし、優秀な人がナイトの暴走で死んだら嫌だしねぇ」
まさか….
「落ちこぼれの君が死んだところで何も国に影響しないしね〜」
……………すごく泣きそう…………
「今や国の人口も減少傾向にあるからね。どんな凡人でも国の貴重な人材だしね。でも、君のような落ちこぼれは国の実験材料に使える、ある意味貴重な人材になったねぇ」
すごくボロクソに言われている。自覚してるつもりはあったが僕は半泣き状態だ。
「しかも君は若い!もし、人体に影響がなかったり、実験の段階で死ななかったらそのままパイロットして使えるからね。若いから物覚えもいいしね」
要するに、僕は将来的なんか役に立つことがないと機械に思われていて、死んでもいい存在だと思われているということなのか……
情報だけでそんなこともわかるのか…
「ところで話は変わるけど、アルカディアはどんなところか教えてもらってるかな特例くん」
「えっと、国を戦争から守るでしたっけ」
僕はティーファ先輩やザーク隊長に教わった事を思い出す。
「20%せーかい!では、どうやって戦争から守るのかな〜」
「えっと……戦争ほど大きくならないように戦う………?」
「ふせーかい!そもそも、戦っちゃたら戦争と変わりないじゃん〜、いや戦争そのものかな」
「じゃあ……どうやって………」
答えがわからない。アルカディアは戦闘機など戦う為のものがいろいろとある。そして、空襲の時も戦っていた。
「正解はね………暗殺だよ………」
総長が何を言っているのかわからない。いや、わかりたくもない。
「これまでなぜ日本が攻撃されなかったかわかるかい」
「戦争に関係ない国だからですかね…」
「違う、違うダメダメだよ君。日本もバリバリ関係あるよ〜、ただ我々が世間に関係ないように見せてるだけ」
「じゃ…まさか…」
「そう、そのまさか、日本を攻撃しようと考えている人たちを暗殺してきたからよ…」
最近のニュースを思い出した。どっかの国の偉い人が殺されたニュースを。
「考える人がいなければ攻撃なんてされないからね、でも今回はミスってしまってねぇ。こんな事態になってしまった」
僕は今すごく震えていた。
総長は口調はすごく呑気だが、目が本当だと訴えている。
「皆が求める理想郷、それは戦争が起こらない世界。我々はその理想郷のために暗殺を繰り返してるのだよ…」
戦争がなくなるには人を殺さなければならない。そんなの当たり前のことだ。だから暗殺は戦争をなくす一つの手段である。
僕もいつか人を殺すことになるかもしれない。暗殺じゃなくてもね。
人を殺すことはわかっていた。その覚悟があるから入団した。だから、暗殺でも何でもやらなければならない。なのに、今になってすごく怖いと思うようになった。
「一つ……いいですか…」
「ん、何だね」
「そもそも、何で戦争が始まったんですか」
僕はすごくそこが気になっていた。そもそも、戦争のない国だったからそんなこと考えていなかった。だから、わからない、わかろうとしなかった。でも、今は違う。こうしてアルカディアに入り戦争について知ろうと思った。いや、知らなければならないと思った。
「そうだね〜君たちの世代じゃわかんないよねー、平和ボケしててね」
総長は真剣な口調になって話始める。
「昔、ニュースとかでは宗教や人種、地域の間の紛争が大きくなってこんなことになっていると言っていたけど実は違うんだよ…」
僕は唾を飲み込む。
「実はね…一つの惑星の奪い合いだよ」
惑星?いきなり、なぜそんな単語が出てくるのかわからない。
「その惑星とは…」
「惑星ユートピア、第二の地球と呼ばれる惑星。その所有権を巡って今も戦争が続いている。日本もその惑星を狙っているのさ」
そして総長の話が終わり。僕は総長室から出て行くことになった。