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第23章【お婆ちゃんの告白】


考えを巡らせていると、お婆ちゃんが食卓にエイミーを呼んだ。


「冷めるわよ。さあ、食べましょう」


エイミーは席に着いた。

お婆ちゃんと向かい合わせで食べる食事は、習慣のはずなのに何故か今日は新鮮だった。


お婆ちゃんはトーストにバターを塗りながら、エイミーを見て不安げに、しかし微笑みながら言った。


「もう、2度といなくならないでちょうだいよ。

こういうことがあったの、2回目なんだから」


「2回目?」


「そう、2回目よ。

10年ほど前……エイミーが9歳ぐらいの頃だったかしら。

その時も、道端で寝ていたとかなんとか言っていたわ」


「私は覚えていないのだけれど……。

気をつけるわ、お婆ちゃん」


すると、お婆ちゃんは1つ大きな溜息をついて、少し悩ましそうに考えるそぶりを見せた後、エイミーの目を見て真剣な表情で言った。


「もうエイミーもいい歳頃だし、お婆ちゃん、言わなきゃいけないことがあってね」


お婆ちゃんは、普段こんなに真剣な表情になることが無い。

いつになく真剣なお婆ちゃんに、エイミーの鼓動が少しだけ早くなる。

エイミーは平常心を装いながら、お婆ちゃんに頷き、相槌を打つ。


お婆ちゃんは、食べ終えた食器を流し台に片付けに行った後、表情を変えること無く

エイミーに話し始めた。


「エイミー、おまえが両親のことを知りたがるたび、私は昔からこう言い聞かせていたね。

まだ物心もつかない幼い頃、おまえは両親を亡くしたんだよって。

お婆ちゃんがその分ちゃんと育てるからねって。

でもね、違うんだ。

おまえもやっと話せる歳になったから、話すよ。

今まで黙っていてごめんなさい、エイミー」


エイミーは少し混乱しながらも、頭の中を整頓しながらお婆ちゃんの話に耳を傾けていた。


お婆ちゃんはテーブルの上でエイミーの手を両手で握った。

きっと、辛い話になるのだろうと、エイミーはお婆ちゃんの様子から悟っていた。


続けて、お婆ちゃんは重たそうに口を開いた。


「エイミー、おまえはね、私が拾った子なんだ。

おまえの両親がもうこの世にはいないのかも、生きているのかも、私は知らないんだ」


エイミーは少し間を空けてから、お婆ちゃんの手を握り返して微笑んだ。

不思議と、傷つくことは無かった。


「でも、私にはお婆ちゃんがいるもの。

話を聞いても、辛くは無いわ」


エイミーは言い終えると立ち上がり、部屋の小窓を開けた。


少し寒い。

色とりどりの落ち葉が庭に落ちてゆくのが見えた。

秋風がサラサラと吹いていた。


エイミーは秋空を見上げて言った。


「だけれどね、この世でもあの世でも無いどこかで、きっと楽しく生活している……私にはそんな気がするの」




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