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デュラハン閣下シリーズ

デュラハン閣下は魔王様の一人娘の相手をする

作者: 天近嘉人

 魔王軍には様々な仕事がある。


 勇者の討伐、魔王領土の治安維持と徴税、ダンジョンへの出張、魔王城の清掃花壇の管理など。


 今日、魔王七将の俺に与えられた任務というのが……。


 「さぁーて姫様、今日は何をして遊びましょうか? 」


 そう、魔王様の一人娘である姫様の遊び相手である。


 「うーんとね、今日はなにして遊ぼうかな~。」


 姫様は自分のベットに座り込んで足を交互にパタパタさせて考えていらっしゃる様子。


 く、くぅ……なんで俺が姫様の子守なんかしなくちゃあいけないんだ。


 俺は魔王七将の一人だよっ!?


 魔王様の次に偉い七人の一人だよっ!?


 しかし俺がこんなことをしなくちゃいけない理由がある。


 それは俺達の部署が一番戦果をあげていないからだ。


 戦果をあげていない部署には大事な仕事がおりてこないのは常識で、いつも俺達は花壇の手入れや城の見回り、新人勇者をいびり倒したりなど簡単な仕事しか回ってこない。


 うぅ……本当は俺だって頑張りたいんだよ。

 

 この身を魔王様に捧げてから一心不乱に働いてきた。


 その成果もあって七将にも選ばれたというのに……。


 部下がなぁ……ポンコツだからなぁ……。


 「決めたっ! お馬さんごっこやろうっ! デュラハンはお馬さんねっ! 」


 「は、はぁ……。」


 俺は命じられた通りに四つん這いになり、馬の格好を取った。


 「よいしょっと。」


 俺の上に乗る姫様。


 そして。


 「さぁ、走れっ! 」


 バチィーンっ!


 「あひっ! 」


 お尻を思い切り叩かれた。


 「早く走ってっ! 走ってよっ! この駄馬がっ! 」


 バチィーンッ! バチィーンっ!


 「ぶ、ブルヒヒーンっ! 」


 間髪いれずにお尻に鞭を叩き込んでくる姫様を乗せて部屋をズリズリと這う俺。


 「ひ、姫様、楽しいですか? 」


 「うっさい、お馬さんは喋らないでしょーがっ! 」


 バチィーンっ!


 「ひ、ヒヒーンっ! 」


 こ、このままではまずい。


 魔王七将としての威厳とか、俺の性癖とかが色々誤解されそうでまずい。


 な、なんとかしなくては……!


 そこで俺は考えた。


 そうだ、部下にやらせようと。


 と、いう訳で。



 「姫様、部下のアッシュです。どうか一緒に遊んであげてください。」


 「よろしくお願いします。」


 部下の一人であるスライムのアッシュが無駄に爽やかな挨拶をした。


 「ふーん、まぁ別に遊んであげてもいいけど。」


 「では、何をして遊びましょうか? あっ遊ぶといっても私手足がないものですから、何も出来ませんけどね。ほら私スライムですから、アッハッハッハ」


 ズドーンっ!


 「ぶへらっ! 」


 「あ、アッシュくーんっ! 」


 アッシュは姫様に思い切りぶん殴られた。


 まだロリッ娘といえど魔王様の血を受け継ぐ者、腕力は相当強い。


 「なんかうざい。他にいないの? 」


 「く、くぅ……。」


 まずい、俺が部下の選択をミスすれば部下だけではなく俺もボコボコにされる。


 慎重に選ばなければ……。


 

 「姫様、こちらアンデットのズンです。」


 「ぁ……あぁ……。」


 ズンは黒ずくめのワンピースの端を掴んでぺこりと頭を下げた。


 よし、いいぞ。


 ズンは俺の部下の中でもいい娘だからな、遊び相手に丁度いいだろう。


 「ふーん。じゃあおままごとやりたいっ! 」


 姫様はクローゼットを開けてガサゴソとお人形を取り出した。


 「デュラハンはペットの犬ね。私がお父さん役、ズンはお母さん役だよ。」


 「はい、わかりました。」


 しかしおままごとでも俺は動物扱いなのか。


 いや、いいんだ、姫様が満足するなら。


 「おーい、今帰ったぞ。」


 姫様が声を低くして早速役になりきっている。


 中々の名演技だ、ズン、上手くやってくれよ。


 しかし。


 「…ぁ………あ……ぁぁ……。」


 「んもうっ! ぁ…あ……じゃあないよっ! ちゃんと喋ってっ! 」


 「ぁ……あぁ……。」


 し、しまったっ! ズンは基本『ぁ…あ…』としか喋れないんだったーっ!


 「ふんっ! もういいよっ! ……デュラハン、他にいないの? 」


 「他と言われましても……。」


 俺は床にへばり付いてダウンしているアッシュとしょんぼり顔のズンを交互に見た。


 俺の部下の仲で比較的まともな奴を呼んだのだが、ことごとく失敗。


 もう後がない、ならば最終手段だ。



 「……で、なんであたしが呼ばれたわけ? 」


 フィリップが不機嫌そうに俺に尋ねた。


 「いやだってガーゴイル君は喋らないし、動かないしだからもう君しかいないんだよ。頼む付き合ってくれっ! 」


 俺が涙ながらに説明すると彼女も渋々承諾してくれた様で。


 「しゃ、しゃーねぇな。付き合ってやるか。」


 「ねぇねぇお姉ちゃんはどうやって遊んでくれるの? 」


 「あん? お前が好きに遊べばいいだろ? 」


 「ちょ、ちょっとフィリップちゃん。一応この娘魔王様の子供だからね。その口調はどうかな……。」


 「うっせーな。わぁーたっよ。……コホン。じゃあ何して遊ぼうか? 」


 「おままごとの続きやりたーいっ! 」


 人形を手に持って俺達に近寄る。


 「おままごとか。わかったぜ。いっちょやってやんよ。」


 女型のお人形を持ってそのままおままごとがスタートした。


 初めは恥ずかしさからか、中々役に入りきれていなかったフィリップだが段々と慣れてきたようで姫様に負けじと楽しんでいる様だ。


 ここでふと、昔のフィリップを思い出した。


 昔はこんなに言葉遣いが荒くなく、おとしやかで優しい少女だった。


 そういえば昔もこんな風に遊んでやったなぁ。


 俺が駆け出しの頃、仲が良かった先輩のウ゛ァンパイアの娘としてよく遊んでいたのだ。


 今となっては昔の彼女の雰囲気などないが。


 「デュラハンっ! 犬の役だよっ! 早くやって。」


 「はいぃ……わんっわん。」


 俺は姫様に命じられるがままに犬の物まねをやった。


 姫様もこうして大人になっていくのだろうか。


 色んな経験をして、いずれ魔王になって世界を支配するまでの強靭なお方になれるのだろうか。


 姫様が魔王になられた時、俺はまだ生きているのだろうか、俺の部下達は元気にやっているのだろうか。


 


 少しセンチメンタルになりながらも必死で犬の真似をする俺であった。


 

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