プロローグ
ふわーあ。
眠い。
眠いわ。
寝たい。
まだまだごろごろしてたい。
ずっとずっとずっとごろごろうとうとしていたい。
××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××
「・・・んんん?」
何故だ。
妙に明るい。
おかしいな。
私が眠っているのは地下深いダンジョンの最奥で、えーとたしか地下500階くらい?だったと思う。
長いこと寝てたし寝る前の記憶はちょっとばかしやけくそな心理状態だったものであんまり覚えていない。
ううむ。
ごろごろ、ごろごろ。
とりあえず床を転がりながら記憶を探ってみるとしよう。
えー。
えー。
うー。
・・・むむむ。
よりによって一番思い出したくない記憶が頭に浮かんでしまったじゃないか。
なんだって思い出すんだよ私の馬鹿。
あああぁぁチクショウ!
どうせ私は貧乳だし色気はないよ。
スレンダーなんだよ。
どうせ男は巨乳が好きなんでしょうよ。
例え神でもね。
ー吾輩は神である、名前はまだない。
うそ。
名前はある。
ありますよ。
イクステリアって名前が。
ええ、豊穣の女神イクステリアっていうのが私の名前だ。
ちっこいまだ生まれたての世界をようやく任されたばかり。
しかも一人ではなく三人組でのお仕事だ。
私、エマーリエ、グダル、の三人で。
エマーリエは海の女神。
グダルは私とエマーリエのお目付け役で監督役の創造神。
グダルが世界の基礎を造りエマーリエが海を造り私が大地を造った。そこに三人であーだこーだ言い合いながら様々な生き物を造って。
楽しかったなあ。
うん、楽しかったよ。
あの頃は。
なんつーか希望に満ち溢れてるってゆーの?
いつまでもこうして三人仲良しこよしで素敵な世界を造って、その世界を見守って、たくさんの人に信仰してもらって。
神ポイントジャンジャン貯めてそのうち出世してまた別の世界を今度は一人で任されて。
いつかは上位神の仲間入りしてさ。
そしたら私みたいな新入りをこき使って己れは神殿でごろごろ悠々自適な生活を、なんて。
思っていた頃もありました。ええ。
ありましたとも。
ふふ。
ふふふ。
うふふふふ・・・ハァ。
歯車が狂い始めたのは世界が安定し出して少したった頃か。
私は恋をした。
相手はグダル。
無理はないと思うのよ。
だって三人きりの仲間だしさ。同族だしさ。
たった一人の身近な男。
しかも頼れる先輩。
見た目はあんまり好みじゃなかったけど。
いや、神だし?美形ではあったけど正直好みのタイプではなかったはずなのよ。
わりとごついし顔濃いし筋肉大好きだしさ。
私のもともとの好みはどちらかというと草食系男子。
男らしいよりかわいい系の方が好きだ。
だったはずなんだけど・・・いやあ時に厳しく時に優しくね?指導されてるうちにコロッと趣旨変えしちゃいました。
我ながらアッサリ。
けど、それは私だけじゃなかった。
「心配しないで。私の好みは王子様的なタイプだし。応援するわよ」
うふふ、なーんて笑ってたクセしてあのクソビッチ。
おっと、女神ともあろうものが口が悪い。
こほん。
あー、簡単にいうとだ。
失恋したというか、とられちゃったわけです。はい。
私がどうやってアプローチしようかなんて乙女みたいに悩んでる間にいつの間にかエマーリエとグダルの二人は出来てた。
久しぶりに三人で世界の様子を確認しよう、と集まった場でいちゃラブする二人。
やに下がってデレデレのグダルと申し訳なさそうにしながらもどこか勝ち誇った様子で私を見るエマーリエ。
その時の私のショックたるやもはやそのあと何を見たのかも何を話したのかもどうやって自分の神殿に帰ったのかも覚えていない。
いや、帰ってないや。
あー、そーだった。
近くのダンジョンにこもってさんざんやけ酒飲んでやけ食いしてそのままふて寝したんだった。
ーんで、今に至る、と。