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魔王様の復讐は失敗しました  作者: ぽち
一章 わたしの へいおんな ひび
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外伝 とある来訪者たち

 暗き森の中を一組の冒険者たちが駆けていた。

 数は四人。

 全員が憔悴しており、疲れきった顔をしていた。


「……本当にこんな島に逃げ込んだのかな?」


 小休憩を取ろうということになり、腰を落ち着けたタイミング。

 一人の黒髪の少年が言った。

 四人の中では最も幼い。しかし、その顔に無邪気さというものは伺えなかった。


「レミング、そう言わないでよ。追尾魔法は確かにここを指してたんだから。確かに、なんでこんな島に来たのかはわからないけど……」

 

 答えるのは、耳の尖った少女。闇夜でも輝く金髪をさらりとかきあげる。

 名はミーシャ。

 弱冠130歳(・・・・・・)にして賢者と謳われるエルフである。


「魔の島……。レギオニア領内でも、誰も住まないっていう無人島ですものね~」


 のほほんとした口調の女は更に若い。

 その上、背も低かった。

 ドワーフだ。ムルムルという。

 ドワーフは例外なく低身長で、女性の場合顔つきも幼くなるのだ。

 紅蓮の炎のような赤髪だが、性格は至って温厚。性格は正反対なのだがなぜかミーシャとは仲がいい。


「あ~、この魔力、立ってるだけでぞわぞわするぜ」


 苛立たしげなのは最後の一人。オレンジの髪からちらりと一本の角が姿を見せていた。

 レミングと呼ばれた男を睨み付る。


「とっとと竜石を取り戻して帰ろうぜ、こんなところに長居はしたくねえ」

「まあ、待ってよ、ハルト。そうしたいのはやまやまだけど、敵の動きが読めないんだ。ただでさえ四人で勝てるかも怪しいのに……」


 ハルトは竜人と呼ばれる種族だ。

 竜人は普段はヒトの姿を取るが、戦闘となれば翼を広げ竜に近い姿に変化する。額の角がその証。例え熟練の竜人でさえも、この一部分だけは変化させることが出来ない。

 竜人は、魔法自体は得意でないが魔力の気配に敏感だという。島に満ちる魔力を不快に思っているようだった。


 一方レミングはヒト。

 人間族では最も貧弱な種族だと言われている。しかし、彼がこのパーティのリーダーだった。

 別段、彼がリーダーシップに優れているわけではない。


 神経質なミーシャ。逆に能天気なムルムル。喧嘩っ早いハルト。

 消去法で彼にお鉢が回ってくるのは必然といえた。


 所属はレギオニア。

 全ての種族が境なく暮らす国である。

 人間族どころか、魔族までも共存しているのだ。

 それでも全員が異種族なんてパーティは珍しい。


 彼らの目的は、王都に祭られている竜石を盗んだ犯人を捜すこと。

 そのためにここ、魔の島へとやって来た。

 残念ながら船は出なかった。魔の島へと向かいたがる船乗りなどいないし、いても法で禁じられている。

 魔法を使い飛行して来たのだ。

 『賢者』と呼ばれるミーシャでも、大量の魔力を消費してしまった。自力で飛べるハルトはまだしも、残り二人まで運んだのだから当然である。


 ハルトは苦々しい顔をした。

 単に不快感から言っているわけではない。


 竜人という種は、上位者としてドラゴンを信仰している。

 そんな彼にとって竜石を盗み出すなど、言語道断であった。


「勝てるかだと? 俺たちゃ、Aランクの冒険者が四人だぜ? あんな子悪党程度に負けるわけがねえ!」


 ハルトの怒りが爆発した。

 ミーシャはいつものことだとスルー。ムルムルはおろおろするが、これといった行動には出ない。


「そりゃ、あいつは――ドミニクは格下のコソ泥さ。Cランク冒険者のパーティにすら負けるだろうね。でも種族が問題なんだ」

「ちっ、でけえ蚊みたいなもんだろ!」


 吸血鬼――それがドミニクの種族だった。


 本来なら、高位に坐する魔族である。

 強者が尊ばれる魔族の本拠地――魔大陸でさえ、貴族として名を連ねることもあるという。


 が、ドミニクは落ちこぼれと呼ばれる部類だった。

 才能のなさから親族に見限られ、行き場をなくした彼は人間族の住む聖大陸へと渡ったのだ。

 そして犯罪に手を染めていくことになる。


 だが、人間族の世界でも彼は決して強者ではなかった。

 もともとやることなすことがみみっちいのだ。


 ついたあだ名はコソ泥ドミニク。

 不幸中の幸いというべきか、逃げ足だけは早かった。


「パーティの一人だっていうなら、私たちが指名を受けた理由ぐらい理解しておいてほしいわ」


 ミーシャの口調は刺々しい。

 だが事実だ。

 その程度の相手なら、Aランクのパーティが辺境まで出張る必要はない。


「竜石を取り戻すためだろ? 国宝なんだ、無名の連中じゃ持ち逃げするかもしれねえ」

「それもあるでしょうけど~。本来ならSランク冒険者が指名されてたって噂で聞きましたよ~?」


 ムルムルの言葉に、ハルトは息をのむ。


「そ、そんなにヤバいのか?」

「うん。竜石と吸血鬼の相性が良すぎる。あいつらは、魔石の魔力を使えるんだ。本気でいかないと返り討ちに会う可能性もある……。それに、なんでこの島に向かったのかわからないんだ」

「ま、人目を避けるって意味なら一番の選択でしょ。誰もよりつかないわけだし」

「魔王が封印されてるとか、『英雄』が隠れ住んでるとか、噂は色々ありますけどね~」


 冒険者たちは議論するものの、結論は出なかった――。

 久々の三人称。

 誰に視点をおくか迷った結果で、特に意味はない。


 っていうか一人称と変わらない気が…自分の勉強不足ですね。

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