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『武義、お前は何をやっておるのじゃ』


『それはどういう意味でしょうか』

目の前に居るのは母さんではない、党首命燐。



『利益もしっかり上がっております。区画の成長率もコルティックに匹敵するほどです。資金も現地調達分も加え全て計画以上の成果を上げています』




『それがどうした。商売は遊びではないぞ、喰うか喰われるかの戦いぞ。計画以上は結構、それならばその上を目指すのが商売の道理。自分に酔ってはいまいか』




『飢えを忘れた商人は喰われるのを待つ家畜と同じ。胆に銘じることだ。桂、巧、帰るぞ』

『武義、またね』『お土産ありがとう』


キリッとした党首命燐と誰も使わないような大きさのリュックをパンパンにした兄さん達を見送る。





『で、なんでその話を俺にするんだ』

『母さんの言う事はわかりますが、具体的にどうすればよいのか。何かきっかけが欲しくて』


『はいどうぞ。大変だったらうちの店、お爺ちゃんのところもっと後でもいいからね』

『いえいえ、大丈夫ですしそれに人の流れがこの店のおか』

『おぉぉまたせしやしぃぃたぁぁぁぁ』

若いアフロの男が大声で丁寧に料理を置いていった…


『彼はトリオさん。少し前から働いてくれてるの。一生懸命で店の宣伝とか従業員集めとかとにかく頑張り屋なのよ。お爺ちゃん達が気に入ったみたいでどっちも張り切っちゃってるの』


『そういやボブが、頑張ればサードの称号が何とか言ってたな』

今まで静かだったジーザさんが盛大にワインを噴出す…机に突っ伏してひくひく笑っている。



さすがに今の状況では…



『いくら人気が出ても、働いてくれる人がいなくちゃね。いい人が来てくれてよかったわ』




僕は稲妻に打たれたように立ち上がる。

『ハッカさん、そうですよ。働く人がいなければ…ありがとうございます。またゆっくり食べに来ます、姉さん行きますよ』





『フェイ、緊急会議を開く、各エリアと各ブロックの責任者すべて集めるんだ。フェイの手の者も会議を聞くように集めろ。3時間後に始める』





『以上です。各責任者は今まで以上に働く者の待遇に注意するように、その上で問題を起こす者は速やかに報告を、こちらで対処します。解散』


『では、早速他の区画に情報を流していきます。が、本当によろしいのですか』

『どこまでできるか試してみたいんです。例の取引で資金はかなり増えた、党首の言うとおり活かさない手は無い。僕はこの街を染めてみたい』


『では、すぐに動きます』





産まれようとしている、武義君は命燐様の後を…いやその先を目指して走り出そうとしている。空気が違う、あれは命燐様と同じ覇王の気迫。


ぞくぞくするね…





だいぶ育った…可愛いものね。まるでエスと私の子どものよう。

こちらも、順調だわ。


ヴォォォォォッッッッットットォォォォォォ…


嬉しいのね、早くあなたに繋げてあげたいわ…





『なんか、身が入らないんだよな』

『エス、稼ぎは減ってもプラスはプラス、付き合え。って言ったのは君だよ』

『まあまあ、ジーザさん嫌ならいつでも帰っていいんですよ。ほら、後は私がいますから、どうぞどうぞ』


この街のルートはキャスの影響で瞬く間に進んだ、という事は。そう、鉱石の買取額は激減で儲けは今までの2割ほどしかない。安定供給の体制に入ったと考えられているからか、世界全体の鉱石買い取り価格、相場も緩やかに落ちてきている。


プルトロン鉱石は貧しい者達の一発逆転ではなくなった。それでもエネルギー需要はあるから他よりは稼げるんだが…



『そういえば、ハッカちゃんお店いいの、オーナーなんでしょう』

『いいんです。ボブさんがしっかりしているし、ジョンさんもお爺ちゃんもだいぶ慣れてきているし。トリオさんのお陰で従業員も増えてきていますしね』


確かに、客も増えたが、従業員もかなり増えた。いずれは眠らない店「サウザンドハッカ」の誕生も遠い未来の話ではないな。


『ボレロの部分はまだ手探りみたいだな』

『今は予約を中心に短時間営業ですね。落ち着いた雰囲気の人は少なくて、お爺ちゃんはこんなぐらいがちょうどいいなんていってますけどね』


『僕はあの新しいアフロに頑張ってほしいね。ボブとの共演が今から楽しみなんだよね』

『ジーザさんの期待にもそのうち応えられると思いますよ。彼は頑張りやなので』



そろそろ引き上げるか…



最近の毎日は、2人を誘って最奥近くで狩り→ハッカの店で夕食と晩酌→宿屋で寝る。これを繰り返している。たまにハッカの店を手伝ったり、武義にちょっかいをかけに行ったりしている。


キャスは街からちょっとだけ離れたところで専用Tホイールの中で研究三昧らしい、武義からの噂だ。


街がどんどん大きくなっていくのは面白いといえば面白いが自分の手が入っていないものは所詮他人事、リアリティーは無いな…



ふぅ…




『だ、ん、な』

鉱石を換金していると聞き覚えのある声がする。

振り向けばそこにガメルとよく見る秘書っぽい人が立っている。


『なにやってんだ。こんなところで』

俺達3人は大した感情も見せずにあしらう。


ガメル涙目、秘書変化無し、ハッカちょっと同情、ジーザワインを取り出してクイッと呑みだす。


俺、不動。



『ガメルさん、アリスとても重宝してますよ、ありがとうございます』

『いやいや、ハッカさんの腕が在ってのアリスですから。喜んで使ってもらえて武器商冥利につきますよ』

『おいおい、ガメル。こんな人が多いところで武器商名乗っていいのか』


アクアサークルではもぐりだったはずだが。


『旦那、見てくださいよ。これこれ』

『許可証か、しかもこの街で店登録してるじゃないか。よく申請が通ったな』

『いや、旦那のお仲間が区画担当者ってことで駄目元で申請だしたんすよ。そしたらOKが出たんでさ。バースはナスペンゲンに行くからって俺に推薦書いてくれたのも大きいっすけどね』


『よかったですね』

『武器の方はこっちで堂々と商売できるんで今後ともご贔屓におねがいしやす』



『アクアサークルのほうはどうすんだよ』

『軌道に乗り次第引き払う手はずになってやす、バースと違ってあっちはもぐりなんでリスクが高いんで』


まあ、アクアサークルまで行かなくていいなら楽でいい、俺もあの家処分して金にするかな…


『まあ、いいや店の場所教えとけよ。ハッカの店に連絡くれればいいからな。あ、ハッカそれでいいか』

『いいですよ。ガメルさん「サウザンドハッカ」が私のお店なんで』

『やっぱりそうでしたか、名前見てきっとハッカさんの店だって思ってたんすよ』


ハッカを知っていれば誰だってピンと来るだろうが…


『じゃあまたな、そろそろ補給をって思ってたところだ、とっとと店開けよ、他所行くぞ』

『あと数日でとりあえず商品動かせるんで。建設ラッシュでなかなか工事の人手が回ってこないんすよ』


やはりサウザンドハッカは武義の力でかなり優遇されているんだな。



家建てようかな、借りようかな。武義に聞いてみるか…


『じゃ、急げよガメル』




俺は2人にどうするか聞いて結局3人で武義のところに行くことになった。





『武義、家買おうと思うと最低いくら位からになる』


ハッカは両手を頬に当てて『2人の新居…』とつぶやいている。

ジーザは『当然、僕も住むから半分出すよ』とか言ってる。


お互いの言葉を聞いて2人は絶賛にらみ合い中…これが竜虎の争いか。勝手にやってほしい。


武義は苦笑いしながら、紙にすらすらと数字を並べる。


『エスさん、最低でもこれくらいは…今後価値は上がると思うのでいい投資と思いますが』

『ありがとな、やめるわ』


買わなかったのをお互いのせいにする2人を引き連れてサウザンドハッカへ向かって歩き出す。今日のご飯は何にするかな。


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