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私達は小さなキャンプ地になっている東のワンダー前に着いた、エスさんがここに来ている事はすぐに私達に知らされた、問題はその後の言葉…



『現在、エス様はキャス主任と2人でワンダー内を調査中です』



コルティック職員に詰め寄る私をジーザさんが止めようとする…


私は迷わずアリスをジーザさんに向ける、ジーザさんはボトムレスもシャルロットも抜きはしない。




こりゃ駄目だ…あの時のことを思い返しているのか不安定を通り越してる…嫌だな、ハッカちゃんに手を上げるのは…


『ハッカちゃん、今騒いでも状況を悪化させるだけでしょう、アリスを下ろして…こういうことは武義に任せればいいんだよ、ね』


『は、はい、ハッカさんきっとここは重要拠点ですから連絡手段があるはず、ミラさんに掛け合いますから…』

『許可なんて要らないわ…すぐに通して、お願いよ…』



もう、見てられないね。あの馬鹿には後で痛い目見てもらおう。なんで僕がこんな楽しくないことをやらなきゃいけないのさ。

もう、しょうがない…ごめんよハッカちゃん。恨むならあの馬鹿にしてね…無理か…




えっ…今何が…

『武義、ハッカちゃんのアリス拾って。とっととコルティックの偉い奴に話つけてよ。もう、この僕が貧乏くじなんてね、そこの人武義を早く案内して、グズグズしてるとハッカちゃんが起きるだろう。武義、君をグズ呼ばわりしたくないんだ…早く拾え。コルティック、僕は皆殺しでワンダーに全員喰わしてもいいんだよ。早くしろって言ってるんだ』


ハッカさんをいつの間にか肩に背負いまったく怒りを隠さないジーザさんが捲くし立てる、早く拾わなければ…身体が重い…急げ、動け…


何とかハッカさんのライフルを拾う、軽い…


コルティックの人は涙を流して全身を強張らせている…立っているのが精一杯な感じだ。


『ジーザさん、ちょっと話をつけてきますので…』

返事も無い…上手く歩けないコルティックの人を支えながらおそらく拠点と思われる場所へ向かう…


拠点内の数人のコルティック社員が仲間の尋常でない様子にいろいろ聞いてくるが本人は震えが納まらず上手くしゃべれない、搾り出した言葉は一つ。



『…こ、この…人…に、通信…を…』




『武義様ですね。ミラは所用で出かけておりますが、伝言がございます』

用件を言う前にか…


画面に映っている秘書らしき人は続けてよろしいですかと僕に微笑みかける。


『「君の未来に貸し1つ、それでもよければ好きにしたまえ」とのことです。コルティック職員はミラ・コルトからの言葉と思って対応をお願いします。いかがなされますか』



選択肢は無い…この貸し1つがどのように使われるか…しかし今は先の心配をする場面ではない。


『お願いします。ワンダーへ入る許可を』

『ミラに伝えます。コルティック職員は速やかに対応をして下さい』


通信は切れた。





金色のカーテン…ん、ジーザさ…ん…

うっ、頭が重い…


『起きたかい、もう少し僕の膝を貸してあげるから横になっていた方がいいよ』

にこやかな笑顔で私に語りかけてくる…

さっきまで…私は…

『大丈夫。今、武義が話をつけに行ってるからね。少し休んだらワンダーに行こう。きっと上手に話をつけてくるはずだよ』



そっか…私が暴れたせいで…



『ジーザさん、話つきましたよ。すぐにでも行けます。あっ、ハッカさん大丈夫ですか』

息を切らしながら大きな声を出しながらこちらに戻ってくる。


『でかしたよ。武義はできる子だと思っていたよ』

激しく苦笑いをしながら武義君は私にアリスを渡してくれる。



『じゃあ、少し食事をしてから。あの馬鹿を殴りに行こうかね』

笑顔の中に今まで感じたことのない怒りが一瞬見えた気がした…





そろそろ、最下層に近いな…ここからは一気に行かないと。


『キャス、おそらくもう少しで最下層だろう、沸きが半波無いから少し休んで一気に行く方がいい』

『そう…じゃあ私も本気出していくわね』


本気…今までは本気じゃない…


キャスは腕の箱を外していく…その姿が明らかになっていく。

金属が波打ち、光の筋が現れては消え、低い駆動音はまるでうめき声のように、コード状のものが複数伸び数本がキャスの腕に取り付いていく…まるで生き物…


『見た目はグロテスクだけど、性能はかなりの物よ』


意思を持っているかのように動くモノは俺に恐怖を感じさせる、手の甲辺りにはガラスのような物に包まれたあの鉱石が少しずつ色を変えながら静かに輝いている。




軽めの食事を取って準備をする。


『では、なるべく私の近くにいることをお勧めするわ。そう、腕を組んで行きましょう』


そう言うとそっと寄り添う…スッと離れる…


『まあ、進んでみれば私の言うことが正しいと理解する、きっとね』




理解するしかなかった…無差別攻撃…そう表現するのが適切。




キャスの腕から延びたコード達は全方位に対して湧き出るアルコ種を消滅そして吸収していく…

まばゆい光が次々と空気の切り裂く音が嵐のように、俺とジーザ2人で行う狩りを片腕一本で行う馬鹿げた威力、圧倒的…



そんな作業をしながらも、コードは殖え、キャスの片腕を飲み込むほどに徐々に増えていく…いや、成長か…


俺はすでにこいつを生物として考えている…こいつは創られた存在なのに…


『さすがにエネルギーの高まりが凄いわね…』

『大丈夫なのか…』

このクラスのアルコ種から出る鉱石のエネルギー量と価値を考えると、軽くめまいを感じるな…換金したい…


『心配かしら。大丈夫よ』


落ち着いた様子ではっきりと言い切った。

現状、俺には選択肢は無い…ただ付いていくしかない。




『こりゃハズレだな…』

最奥には例の荒ぶる水晶の蔓……出直したほうがいいな。

俺に絡む腕を引き後ろに下がろうとするが、下がろうとする気配は感じられない。


『こいつはヤバイ、いったん下がったほうが良い』

『いや、大丈夫よ。この子が喜んでいる…おいしそうってね』


キャスの言葉に答えるかのように歓喜の奇声を響かせながらコード達は水晶の蔓に絡み、砕き、吸収していく。


植物が早送りで朽ち果てていくのを見るようだ…



沈黙までの時間はそう長くは無かったと思う…侵蝕………圧倒的強者による制圧。




『静かになったわね』

キャスの手にあるモノは始めに見た大きさまで戻っていた。低い駆動音はとても満足気に聞こえる…



『興味深いわ、見てエス』

驚きと興奮の乗った声で俺の腕を引っ張る。


目の前にはこのワンダーの核と思われる鉱石に小さめの鉱石が繋がっている。


『石なのに、芋みたいだな…』

『そうね、エスいい感性だと思う。きっと余剰エネルギーを使って新しい核を作っているのではないかしら。再現は無意味でしょうね、使用したエネルギーや資金を回収できる見込みが無いもの』


『だろうな』

知的好奇心を満たす以外に意味は見出せない。


『でも、私だけは違う』

そう言うと小さな方の核をコードが包み込み取り込んでいく………暫らくすると手の甲の部分には小さな鉱石が増えていた。


『育ててみるわ』

捨て猫でも拾ったかのような気軽さでそう言った。



帰りはアルコ種も殆ど湧かなかった。

『きっと、一時的にエネルギーを大量に失ってシステムダウンのような状態なんでしょうね。あの蔓は新しい核を作る際の防衛手段とも考えられるわ。今後の運用の際はその辺りの定期的な確認が必要ね』


腕の装備は最初の大きさに戻り、今は金属の箱に戻っている…静かな起動音だけを響かせて…


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