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『ハッカ』『舞さん』


身体もしっかりしている、しっかり動かし続けた結果だろう。ナスペンゲンにいる時の様子はフェイから聞いていたから知っている、かわいいハッカ。


『北では顔を見せなくてごめん』

『いいんです。きっと私のためだと思うから…それに今、会えた』



あの日々がよみがえるような夕食…



ガメルさんのところから戻ったら保安部の人に案内されたおじいちゃん達がエスさんの家の前に来ていたり。

移動に幌馬車を使っているのを見てジーザさんがボブさんにアフロに仕舞いこむ様のソミニオを買ってあげたり。

お互いの近況を話し合ったりしながら気がつけば日が傾いて3人しか居ないと思ってた武義君の迎えの馬車はギュウギュウ詰めだった…



さすがは武義君が手配したお店、急な人数の増加にも同様なく対応されてそれぞれに話したいことを話してバラバラだけど纏まっているそんな空気が楽しく展開されていた。




店員さんが武義君に耳打ちする。


『エスさん、ミラさんが可能であればご一緒させて欲しいとのことですが』



『今日の主催者は武義だから、俺に伺いを立てる必要はないぜ』


『是非どうぞとお伝えください』

店員さんはスッと部屋から出て行った、暫らくしてミラさんが入ってくる。




『和んでいるところ失礼する。ミラといいます、お見知りおきを。ハッカさん、エス暫らくぶりだね』

『コーティングありがとうございました』

『いやいや、あれは正当な取引だから遠慮はいらない』


『武義君、差し支えなければ皆さんを紹介してもらえるとありがたいが』

武義君はフェイさんを除いて全員を紹介した。いつの間にかフェイさんは部屋から姿を消していた。



ミラさんはとても聞き上手でその場を大いに盛り上げ、和ませ、武義君の将来性を楽しげに語ってみせた。


『ボレロさん、武義君はきっと大成する。商売を考えているならば是非、彼との繋がりを濃くしておくのをお勧めするがね』

『確かに、あなたは人を見る目に自信があるようだ、私も彼は大成すると考えているよ。後は彼次第だがね』


2人の視線の先にいる武義君はゆったりした態度で『条件が合えば』と返した。


エスさんがそのやり取りを見て嬉しそうに杯を空けるのを見て私も嬉しい気持ちになった。



『今日はいつ振りかに楽しい夕食になった。皆様、同席の許可に感謝する』

優雅に頭を下げ部屋を出て行く前に短く一言。



『エス、明日時間が取れるようならアクアサークル支店に顔を出して欲しい』

『時間があればな』

『キャスのことだ…』

エスさんの表情が一瞬強張るがすぐにニヤニヤしながらミラさんに手を振った。



『では、今度は私が皆様をご招待するとしよう。良い宴をありがとう』




『なかなか喰えない男だったな』

『面白い奴だろうボレロ、深く入り組んでる、ああいう奴とのやり取りは危険だが面白い』

『気さくないい感じの人だと思ったんですけどね』

『私も感じはいいけどやり手な感じの方だと感じましたですがね、はい』


お爺ちゃんはミラさんに何か感じるものがあったみたい。


『それにしても武義はちょっと見ない間に随分といい雰囲気になったねぇ…そう思わないハッカちゃん』

ジーザさんがニヤニヤしながら武義君を眺めている。確かにさっきの武義君は大人っぽい感じがした。

『武義君、大人っぽかったよ』




『あ、あっ、ありがとう、ございましゅ』

『武義はまだまだおこさま』『舞、そんな事はないよ』

いつの間にかフェイさんは舞さんを膝に乗せて椅子に座っていた。

『フェイに甘えてばかりの姉さんには言われたくないですけどね』

『これは甘えているのではない。愛されているだけだ』


そんなやり取りにみんな苦笑い、一人エスさんだけは何か違うことを考えているような気がした…




その日は積もる話しもあるだろうとのエスさんの提案で武義君が宿を手配してくれた。ジーザさんはボブさんとジョンさんを連れてもう少し飲みにいくみたい。


『暫らくは動くことも無いだろうからゆっくりしようぜ』

そういい残してエスさんは一人帰っていった…





『ボブ、保安官。僕のおごりだからガンガン逝くといいよ』

『ジーザ様、もう保安官ではないんですけど、それになんかひっかっかる言い方でしたけど…うっぷ…』

『ジョンさん、大丈夫ですか、はい。これからのことを考えるとお酒に負けない飲み方も必要ですよ、はい』


『ところでボブ、何をやろうとしてるんだい』


さっき武義となにやら話をしてたからね、面白そうじゃないか。



『実は、ボレロさんとジョンさんの3人で新しく店を開こうと思う次第です、はい』

『ほほう。面白いね…』


きっと流行るだろうね。あの田舎町であれだけ楽しい店をやったアフロだ…華やかな大都市でもこもこしたら、ぞくぞくするね…


『金とか要る物はあるかい。全面的に支援したい』

『いえ…それには及びませんです。作り上げること、それも喜び…』




『わくわくが抑えられなくて僕としたことが無粋だったね。完成したら大金を落としに行くとするよ』


『お待ちしておりますです、はい』


保安官が床にもどしている横でボブとガッチリ握手をするのだった。





『そうか、いい人たちに出会ったんだな』

『うん、手紙の返事ごめんなさい』

『気にしなくていい。お前はもう一人前だと私は思っている』


もう、私の手から巣立った子だ…寂しくもあるがな…


『私は、お爺ちゃんの孫よ。いつまでも…』

『ハッカ…』



少し照れたような顔で窓の外を見るハッカの背中は少し不安そうに見える…


『エスのことが心配か』

驚いたようにこちらを振り向くがすぐに真剣な表情をみせる…

そして静かに



『ええ、とても心配。私は強くなった、けれどだから解ったの…あの2人は遠い…とてつもなく………いつか置いていかれるんじゃないかって…』




『強さだけが必要かな。強さにもいろいろあるのではないか。どうしても耐えなれなければ私達と店をやるのもいいだろう。私の先はハッカほど長くは無いが私はお前のお爺ちゃんだからな、遠慮することはないんだよ』


『お爺ちゃん………私は諦めないわ。どこまでも、たとえ置いていかれても探しに行くわ』


『さすがは私の孫。いや、そういうところは母親似か…』




『そういうことだから、お爺ちゃんの面倒見れないかもしれないから新しいお店の資金をたくさん出してボブさん達にお爺ちゃんのお世話頼まないとね』


『私はまだまだ人の世話になるほど衰えておらんぞぉぉぉぉぉ』


ハッカとこんなやり取りができる日が来るとはな…まだまだしっかりせんといかんな。





『随分と早かったな…』



『悪いなこんな遅くにきて』


『いや、仕事があってここにいたからちょうど良かった。要件を話そう、キャスは今ここ、アクアサークルから東にある北と同種のワンダーを調査中でね。エスとジーザ君に協力を頼みたいと言ってきた』

『俺達2人だけか』



『ナスペンゲンでのデータとキャスの新しい実験一人で中層辺りまで分析が終わっているそうだ』

『キャスが一人で…』


『そう、一人でだ。護衛につけた部隊はワンダー内で全滅した。おそらくはキャスの手によってだろう…得体の知れない武器を作ったようだな。証拠も確証も無いがね』



『俺一人で行ってくる…』

『私用の小型Tホイールを使いたまえ。部下に送らせよう』


『武義に伝言を頼む…』

『なんと伝えればいいのかね』




『すぐに戻ると』




朧月夜が空に浮かぶ中、アクアサークルを離れるモノが闇を切り裂きながら進んでいく。


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