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ナスペンゲン。


それがこの町、いや、この街の名前になるらしい。


最奥に到達して暫らくしてから周囲は急に慌しくなってきた。


ルートの急ピッチな工事、これには俺とジーザの情報が多いに役立っているらしい。

大企業による共同開発のお陰で森は切り開かれ次々と建物が出来ていく。


そんな中俺は何をやっているかと言うと…




『ほら、遅い遅い。1番弾の入れ替え急いで。2番、3番もっと良く狙うんだよ。4番2番側に向き変えて。ハッカちゃん1番のポジションフォローして』


ハッカとキリさんに頼まれて特訓中…俺は殆どやること無いけど…



始めは俺がいろいろ指導していたんだけれど、思ったより筋がいいのとジーザのお節介が現状を形作っている。


皆さん体育会系なのかスパルタな指導が合うらしい…お陰で俺は暇…


『エス、なにのんびりしてるんだい。4番と替わって動きの見本やって。4番は弾込めしながら観察』

『はい』


一匹引っ張ってきて、向きの調整をしながら落ちてる鉱石を拾う。


『ジーザさん1回下がりましょう』

『了解、ハッカちゃん。お前達とっとと下がって。エス、殿よろしく』

『あいよ』


鉱石を拾いながら周囲を確認、してる間もジーザからの射撃は飛んでくる。

『拾っても拾ってもきりが無いだろうが』

『もういいよ、あいつら行ったから』




休憩ポイントでは4人が肩で息をしている。

ジーザはついてこれなければそれまでという主義。

ハッカは全体の状態把握が上手い…だから、全体の限界ギリギリまでやる。


スパルタを絶妙な限界ギリギリまで…かわいそうに…


実力は上がるだろう…ここまでやれば…



『皆さん、引き上げますよ』

明るい声に引きずられるようにフラフラと4人はハッカの後をついていく…

『思ったよりやれるね』

お前らがやらしたんだろう…とは言えない。本人達の希望と頑張りを台無しにしてしまいそうだからな。




『そろそろルートの構築も最終段階だな』

『そうだね、荒稼ぎもあと少しだよエス』


『う、れかんらうおすんうんだ』

『キリさん、口の中いっぱいですよ』

4人は失ったエネルギーを補充するかのように食事を次々と頼んでは食べている。


食事を飲み込んだキリさんは改めてこちらに尋ねる。

『これからあんた達はどうするんだ』



これからか…キャスはあれからどうしているだろう…

『なに、遠い目して押し倒したい』『するな』『だめです』


『武義に会いに行こうかな』

アクアサークルの東の件もあれから音沙汰無し、便りが無いのは問題が無いからだと思いたいが…


『武義君来てるんですか』

懐かしい名前の登場にハッカは驚きながら嬉しそうだ。

『舞はここにも来てたんだよ』  『ジーザ、馬鹿』



ジーザはペロッと舌を出す。わざとやりやがったなこりゃ。

『舞さんが…なんで教えてくれなかったんですか2人とも』

『理由は言わない。舞もハッカのことを思っていた、聞きたきゃ会って聞けばいいだろう』



『決まりだね』

『そうだな…』

ハッカは力強く頷く。


『ハッカ…ありがとな。俺達はお前に、お2人にもだけど会えてよかったよ』

ハッカを4人が囲んで感動的な場面だ。




『なに言ってるんですか、私達は仲間でしょう』

『そうだったね。たとえ離れても仲間だ。行くよ』




『心に華を』

『『『『心に華を』』』』


『手に金を』

『『『『手に金を』』』』


『女は度胸、稼ぐぜ華の団』

『『『『おー』』』』



和やかな別れの空気感が漂う…


『でも、最奥までのルートが敷かれるまでは特訓続けますよ。私の仲間なんですからしっかり実力をつけるお手伝いをしますから。エスさんジーザさんお願いしますね』


みんな静かに席に着き空気の読めないハッカを残し食事を続けるのだった。






『ミラ、残念な事故が発生したわ…あなたが用意してくれた警備隊がワンダー内で全滅したわ。私を逃がす為に…ごめんなさいね』



『そうか、優秀なもの達であったが残念だ。君に怪我は無いかね、キャス…』

『ええ、おかげさまで傷ひとつ無いわ』



警備隊は全滅か…全滅ね…キャスに傷1つ無し、よほどの物を創ったか…


『実験はどうかね、そろそろそちらの開発も進めねばならんのだが』

『北のデータを参考にするとここの中層辺りまでは実験もかねて調査済みよ、前回のような多数のカネホリ達は必要ない。エスとジーザこの2人を用意してくれれば開発は30日程度で着工できると思うわ』


中層…それほどのモノか。


『必要なモノはあるかね』

『いえ、付き纏うだけの警備隊はもう必要ない。あの2人を早く説得して欲しいだけね、じゃあ頼んだわ』


言いたいことだけ言って通信は切れた。



北の開発は最終段階、そろそろあいつらも動き出す頃か…上手く捕まえられるといいが。

机の呼び鈴を静かに鳴らす。



『アクアサークルの武義という商人を探し出して伝言を頼む。「力を貸して欲しい案件があるので是非お会いしたい」なるべく急ぐように部隊に伝えてくれ』


ここで振り回されてはいかんな…






私の胸は高鳴っていた。あの日の5人がもうすぐ揃うことに…



あの後、暫らくキリさん達と特訓をして連絡先を交換した、キリさん達はガッチリ稼いだから一度拠点にしている町に戻って今後のことを他の仲間と相談するって言っていた、安定的に稼げることのメリットは大きいらしい。


『あと少しでアクアサークルに着くな』

『帰りもあのゴリゴリで送ってくれれば楽だったのに』

『あれが通った後がそのまま道みたいになって普通に移動するよりよかったじゃないですか』

『そうだぞ、ん』


エスさんがスッと動いて数発の銃声…

『この規模のはぐれアルコ種は珍しいな』

その手には純度の低い、卵位のプルトロン鉱石。

『ほんとだね。はぐれなんてちっこいのか変にデカイのしか聞かないもんね』


エスさんは懐に放り込む。


『それにしてもアクアサークルの家もまただいぶほったらかしだからな、ガメル辺りに掃除させるか』

『私がやりますから大丈夫です』

『なに、いい奥さんになりますアピールしてんのさ。魂胆が見え見えだよ、露骨すぎて僕は引くよ。エスには自然体な僕が一番合うと思うんだ』

『ジーザさん私に喧嘩でも売ってますか』

『ハッカちゃん余裕の無い女はみっともないよ』


カチャ


ぴたりと重なる1つの音。



『はぁ、2人とも銃はやめとけ。本気じゃないのは解ってるけど心臓に悪い』



2人静かに銃を戻す、今回の件で私は自分の実力を自覚した。

その上でエスさん、ジーザさんの実力の凄さも認識した。

それでも私は…




特に何事もなく旅は順調、街明かりが遠くにぼんやり見えてくる、空には月。

隣にはエスさん、月明かりに照らされた3人は荒野を歩く。





同じ月の下、3人の男達が焚き火を囲って談笑していた。


『それにしても、いきなり押しかけて大丈夫ですかね』

『何度手紙を書いても一向に返事が無い以上時間が無駄になるだけだ』

『時は金なりですよ、はい。別に養ってもらいに行くわけではないのでいいのでは。私達は私達の目標に向かうのみですはい』


小さな幌馬車に乗っているのは荷物か夢か。男達の酒盛りは始まったばかり…


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