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武義達が本拠と連絡を取りあい急ぎ準備を進めている頃…




『拍子抜けだね…僕の時間はなんだったんだよ。エス…』

『すまなかった。できることはする。できることだぞ』


おそらくこのワンダーの最奥…


景色こそチックスターの最奥に似ているが危険な蔓も無く、豊富な水が流れ透明な鉱石によって高純度と思われるプルトロン鉱石に触れられないようになっている。


ここに来るまで大小様々な泉からアルコ種がぬっと出てきたりする姿を良く見かけた、推測ではあるがここはエネルギーがある程度循環しているのではと感じた…ただの勘だが…


下層を越えているのは現時点で俺達だけ。



『エス、どうしようかね。いろんなサイズがぬるぬる出てくる…ぬるぬるっていやらしい気分になってくるね』

『今はやめておけ、って言うかやめろ。ちょっとした考えごともさせてくれないな、おい』



『考えて解るものなのかい』

『そりゃそうか』



話しながらも手は止めない…止めている暇が無いから…

一定間隔で湧き出るアルコ種を会話しながら狩りつづける。



『持てる量にも限度があるな、一度戻るとしよう』

『そうだね、甲羅の無い亀みたいのが居たところ位にする?』

『そうしよう、そこで一休みしてから戻るか』

『りょうかーい』




ルートから奥を目指した俺達は数ヶ所休憩スポットみたいなところも見つけていた。距離は均等ではなかったがこの情報も高く売れることだろう、保障は無いが安全的地帯は生命線だからな。


『ほら、お前の分』

干し肉を出汁に固いパンを浸しチーズをぶち込んだ物をジーザに渡す。

自分の分をふうふうしながら話しを続ける。

『弾はまだあるか』

『あるある、ルートができるまで狩りなんてしなかったしその間も弾は作らせ続けてたからね』


安心だ、正直ジーザの火力が無くてはこのペースどころか2人で狩りなんかできない。

アルコ種には剥き出しの鉱石にいかに正確に強い衝撃を与えるかが重要、つまりは当て方が一番大事だがそれに威力が加われば更に良い。

正確に強く、これが理想の形。ジーザはまさに理想、ハッカの正確さについては申し分ない、俺は正確さを動きで補っているが危険な綱渡り状態なのは理解している。


簡単な食事を終えてじゃんけんをして交代で少し休む、ひんやりとした空気は潤いに満ちていて荒野の暑さを懐かしいと感じてしまう。

燃やす物を懐から取り出して多めにくべておく。



『じゃあ行くか』

『また金が余るねぇ』

『余る事なんて絶対無いだろう』

『はいはい、エスはどこまでいったら満足するのかね…』






狩りを終え補給の為に戻ってきた私達は久しぶりの温かい食事を囲みながら好きな飲み物を楽しんでいた。宿泊用のコテージはそのままの利用も、個人用の宿泊施設整備も出来て料金がかかるが私達はコテージを引き続き借りることにした。


『ルートの先で狩りができるかどうかでだいぶ稼ぎが違うね』

『ハッカちゃん様様みたいな』

『いえ、上手く連携が取れてるからですよ』

『あの見た目にも慣れたし、時間も短く狩れるようになったものね』

『確かに』


私達は今ルートの先で狩りをしている、理由は単純に稼ぎが違うから。

事件の経過と共に段階的に買い取り価格は下がっていき、最終的には5分の1まで下がる予定になっている…今が最後の稼ぎ時。

多くの人はルートの先には行かずに安全に狩れる位置でほぼ休まずに稼いでいる。

キリさんはそれを見て「私らは先に行くよ」と言った、いずれ価格が下がる鉱石よりも今後も継続的に稼ぐ為により奥の環境に自分達を慣れさせる事が必要だと、確かにいずれ奥までルートが出来れば奥の鉱石の価格も下がる、自分達の力を高い位置に引き上げなくてはやっていけない。


私がやっている立ち回りはエスさんの真似、みんなに狙いやすいように誘導しようと心がけている。シェルちゃんにも動き方に慣れるように一緒に動いたり、一人でやってもらったりしながら勘を掴んでもらえるように、向きの調整のためにガネさん、フローラさんの配置を少し間隔を広げるように提案したりした。


『少し変えるだけで随分と変わるもんだね』

と、キリさんは言うけど皆さんはいい腕をしていると思っていたしお互いの信頼関係も凄い。私が伝えたことは少しのきっかけにすぎない。


私達はトップグループに限りなく近いところまできていた。




食事が一段落して話題はカネホリ達が今一番注目している話題に変わる…


『それにしても…二色の暴風か、最初に考えた奴はいいセンスしてるね』

『噂では最奥にすでに到着しているとかいないとか』

『さらに2人の後ろにはボスがいるなんて話もあるみたいよ。こっわーい』

『エスさんもジーザさんも自由な人ですからね、あの2人を従えるなんて無理ですよ』

『ハッカにならできそう…』




4人の目線が私に注がれる…



『い、いやぁ、いくらなんでもそれは…あるかもな』

『確かに。あの2人はハッカさんに対してとても配慮しているようですし』

『ただ目をかけているだけじゃないみたいな』

『…やはり…』




『まあ、ハッカそう睨むな。冗談だよ冗談。それにしてもあの2人今何やってんだろうね』

『飯食いに来たけど』

『そこの店員、椅子2つ持ってきて。あと、この店で一番高いワイン3本くらい持ってきて、早くね早く』


周囲からざわつく声が聞こえる…

店員が持ってきた椅子をジーザさんがフローラさんと私とキリさんの間に差し入れる。

フローラさん側にエスさん。キリさん側にジーザさん。私は2人に挟まれる格好になった。


「やっぱり…ボスはハッカ…」

ガネさんの小声が聞こえる。


『皆さんどうよ、稼いでるかい』

『もちのろんみたいな』

シェルちゃんはエスさんのまねをして指をわきわきさせながら悪い顔で笑っている、シェルちゃんはどんなことでも吸収が早いなって思う、本人曰く「ボーっとしてたら私は今生きていない」だそうで必死に身に着けたものなんだと思う。


みんなまだジーザさんに対して若干緊張が見えるけど以前よりはかなりいい感じかな、ジーザさんと目が合う。


『ハッカちゃん、僕はこのところエスと2人っきりだからね、今くらいはハッカちゃんのほうが近くなるようにしてあげたよ、同じ距離じゃ僕の魅力の方が上だからね』


『はっ、言いますね。私の近くの方がエスさんは安心できると思いますよ。ふん…』


……

………

あ、あ、あわ、あわわ。エスさんの顔が目の前にぃぃぃ…


『ハッカ随分飲んでるのか、真っ赤だぞ』

『いや、いやエスさんお酒注ぎますよ』

『ありがとうな』

ジンをクイッと飲み干して空いたコップに私は注ぎいれる。



『ハッカ、酒のんでねーだろう…』『キリさんも注ぎますよ、ほらほら』

とりあえず強引にキリさんにお酒を注ぐ。


その中身を飲み干して話し出す。

『そういや暴風さん達、最奥に着いたって噂は本当かい。ルートが出来てからそれぞれの進捗状況が出回らなくてね』


『なに、その暴風って僕のイメージに似合わないと思うけど』

『そもそも、本当に俺達のことか』


『金髪、黒髪の2人組みでふざけながら凄いスピードでルートを駆け抜けていく姿から名づけられたそうだよ』





『…』『…』

『どう聞いてもエスさんとジーザさんですよね』



『ふざけてない…と思う…』『…』

『ジーザ、ここでの無言は肯定になるだろうがぁぁぁぁぁ』



『まあ、周りが言うことなんて僕に迷惑かからなければどうでもいいよ』

『それもそうか。どうも、暴風コンビですってか』



久しぶりに会った二人はいつもと変わらなくて、楽しくて、幸せだった。

『じゃあ、またタイミングが会えば一緒に食事しようぜ』『ハッカちゃんまたね』

2人はまたワンダーの方に向かって走って行った。



『あー、最奥のことはぐらかされた。やられたぜ』

キリさんが悔しがっているけど、きっとあの2人なら…私もがんばろう、みんなと一緒に。


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