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日は昇り、そして沈む。それを7回くり返し。また、日は昇る。
『ハッカ、皆さん。稼げてるか』
エスさんの第一声は私を安心させる。
『ハッカのお陰でガッチリさね。やるか、誓いの…』
『『『『やりません』』』』
『最近みんな冷たい気がするな…』
『エスさん、おそらくトップ10位には入れてると思いますよ』
『いやいや、それは知ってる。実りの話しだぜハッカ』
両手をわきわき動かしながらにやりと笑う彼を愛おしく思う。
『キャハ、そういうエスさんはどうなんですか』
シェルちゃんが真似をして両手をわきわきしながら聞き返す。
『そりゃもう、儲かってまっせ、へへへへへ…』
数回あっただけなのに結構馴染んでる…ちょっと嫌かも…
『エス、景気がいいみたいだね。どうだい僕と寝ようか』
『断る』『『『『ぎゃー出た』』』』
笑うエスさんの後ろからスッとジーザさんが現れる。一緒に寝るのは駄目絶対。
2人の間に身体を滑り込ませる。
『ハッカちゃんは大事だけど、抱く対象じゃないよ』
『抱かれませんし、抱かせません』
『まあまあ、2人とも。で、どうよ儲かってるのか』
『いや、全然。プラスマイナスゼロって感じ』
『はぁぁぁぁっ。あんだけ進んでてゼロって。正座しろすぐそこに正座しろばか者』
『なに興奮してるのさ。そういうのは僕を抱く時にしなよ』
またふざけたことを…でも、なんでゼロ…
『ジーザさん、何か訳でもあるんですか』
ちょっとした好奇心、お金に関心が高くなったのはきっとあの人の影響だろうな…
全員の目がジーザさんに注がれる。
『グループの連中に多く分配してるだけさ』
『『』』
言葉が出ない…エスさんも同じようだ、目と目で会話する。
「ジーザがグループに多く分配だと」
「本当ですかね」
「あいつは嘘をつかない」
「たしかに」
「いったい何があったんだ」
『なに2人の世界創ってるのさ。あいつらが遅い上に文句ばかり言うから「お前達に多く稼ぎをやるから死ぬ気で石を拾え」って言ってやっただけだよ』
『そうかそうか、いやーびっくりした。ジーザだもんな。そうそう、それでこそジーザだよ』
『よかった、普通なんですね。ちょっと心配しちゃいましたよ』
『そんなに持ち上げても何もでないよ、ははははは』
『この3人が集まると一気に理解を超えるね…』
『『『ですね…』』』
『あ、あ、マイクテストマイクテスト。いいかしら』
集められた集団の一段上にコルティックの主任さんが立っている。
『皆さん、いつもありがとうございます。おかげさまでこのワンダーの開発は順調に進んでいます』
『開発…』
エスさんが一瞬難しい顔をする。
『簡潔にお話ししましょう。このワンダーは長期間消滅しない。とコルティック社は考えております』
ワンダーが消滅しないって…
周囲からもざわつく声が上がる。
『お静かに、最終的には国とコルティックの共同管理となります。そのためにワンダー内にルートと呼ばれる通路を通す計画です』
皆さんの動揺を無視した形で話しが進んでいく。
『現状を考え現時点での中層と思われる場所まで先行してルートを構築、ルート構築後は現在のグループによる縛りを廃止します。詳細は今から配ります冊子を確認ください。不明点は職員までお問い合わせください。以上です』
一方的な説明が終わり主任さんは壇上を後にした…
『安全なルートを活用』
『その代わりに鉱石の買い取り価格は大幅に引き下げってこと』
『でも、危険が減るのは結果安定収入って事じゃないのかい』
『いいことのような気がしますけど…』
『いい面もあるが、今までのように稼ぐのは無理だな…』
凄いしゅんとしてる。エスさんが2周り小さく見える…こんな時こそ…
『そうだよね、僕らのような超一流は安全の確保なんて必要ないしね』
あ、ジーザさんがエスさんの頭を優しく撫でる…くっ、先を越された…
ジーザさんがニヤニヤこっちを見てる、悔しい、わざとだわ。
『直談判しかないか…』『付き合うよ』
『ハッカも一緒に行くんだろう』
キリさんがふと声をかけてくる、その表情は複雑だった。
『グループ自由になるならエスさん達と組むんですよね…』
フローラさん…
『仕方がない…』
ガネさん…
『私らちょっと足手まといみたいな』
シェルちゃん…
『お前ら、シャンとしな一緒に稼げなくてもハッカと私らは仲間だよ。お茶は無いけどほら、やるよ』
みんな顔を見合わせて頷く。
『心に華を』
『『『『心に華を』』』』
『手に金を』
『『『『手に金を』』』』
『女は度胸、稼ぐぜ華の団』
『『『『おー』』』』
『なんだい、これは楽しい、こんなに面白いのはボブ以来久々だよ、あっははははは…』
ジーザさんが笑い転げる。
みんなは大笑いされてちょっと恥ずかしそう。
『いやー、楽しかった。さあ、ハッカちゃんも行こうか』
『行きません。ジーザさん、私の仲間に謝ってください』
ピタッと笑うのを止め、私を真っ直ぐ見据える…
そしてキリさん達の方を向く。
『あなた達の繋がりを馬鹿にしたことに対して私は謝罪する。すまなかった』
皆に深く頭を下げるジーザさん。
『エスさん…私…』
私の唇に指を当てて私の言葉を遮り、エスさんが言う。
『皆でしっかり稼げ、奥のほうは俺とジーザで片付けておく。ジーザ行こうか』
下げた頭をゆっくり上げてエスさんとジーザさんは行ってしまった。
『よかったのかい』
私の肩に手が置かれる。
『はい。ここにいる間は皆さんと一緒に居させてください』
私はカップをまた取り出して声を上げる。
『心に華を』
『『『『心に華を』』』』
『手に金を』
『『『『手に金を』』』』
『女は度胸、稼ぐぜ華の団』
『『『『おー』』』』
皆で顔を見合わせる…
エスさん達とだって私はきっと繋がってるから…
『エス、どんな風に切り出すのさ』
『真っ直ぐだよ』
『ふーん』
コルティックの窓口には結構な数のカネホリ達が更に詳しい説明を求めて窓口に並んでいた。
俺はガラガラの買取カウンターに進み、数点の鉱石を置く。
『主任様に会いたい。「チックスターの英雄」そう言ってもらえばわかると思う』
職員は首をかしげながら確認のために奥へ戻っていった。
『真っ直ぐね……解りやすいエサじゃない』
『話しは早い方がいいだろう』『まあね』
『お待たせしました。主任補佐をしていますカノンと申します。こちらへどうぞ』
通路をだいぶ歩く、きっと奥の方に偉い人は居るんだろう。
突き当たりの扉も前でカノンと名乗った女が横にそれ、扉を開ける。
『逢いたかったわ、チックスターの英雄さん。色々聴きたいことがあるのよ、まあ座って』
身なりは綺麗だが髪は乱れてしまっているちょっと残念な美人が食入るような目つきで俺を椅子へ座らせようとじりじり迫ってくる。
『こちらの用件はお構い無しかな』
『そうね、私の用件が先のほうがいいわね』
駄目だ、こいつは話を聞かないタイプだ。普通の窓口の方が正解だったか。
『エス、話しが出来ないなら用は無い、帰ろう』
『そうだな、仕方がない、帰るか』
『あなた達の用件を先に聞きましょう。カノン飲み物の用意を、さあ、座って座って』
ジーザと顔を見合わせて座る。
『よしよし、さあ、用件をどうぞ。どんどん聞くわ』
『僕はこいつ嫌。エス、任せた』
めんどくさいことはいつもやらないだろう、と心で突っ込みを入れながら。
『先ほどの発表の件についてだが…』
『気に障る内容があれば大体のことは修正するわ、なになに』
やりにくい…あからさまに早く終わらせようとしている…
『鉱石の買取価格の件だが、中層以降にいける者達が…』
『了承したわ。ルートより一定以上奥の鉱石については買い取り価格を据え置きとするわ』
『確認の方法は』
『ルートには一定距離に管理の者を置くことになっている。最奥にも常駐させるから確認は問題ない。鉱石の量、質についてはワンダー内のどの程度の位置でどのような鉱石が取れるかデータ蓄積しているから偽装も無理よ』
変な女だが頭はとびきり優秀らしい…こりゃ後が怖いな…




