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ほー、これはなかなか面白いねこれ。
でっかいよこれは、でっかいってだけで面白いのに、ゴリゴリ走るなんて…一台欲しいね。
こんなので荒野をゴリゴリ走ったら爽快に違いない、そうきっと楽しい。
売ってくれないかな、このゴリゴリ。
僕がなぜ1人でゴリゴリをみているには理由がある。そう、僕は彷徨える子羊。
エスがイカサマがばれて笑いながらダッシュ。
ハッカちゃんが超反応でそれを追いかけてダッシュ。
残されたコルティックの奴涙目。
「ほら、走れ」と優しい声をかけて僕、ダッシュ。
あの2人に出遅れて、簡単に言うと迷子だね。
まあ、そのうち見つかるだろうってことでこのゴリゴリをみている。ん、あそこで偉そうに指示を出している、きっと偉いんだろうね。
『ちょっと、そこの偉そうな人、そうそう君だよ君』
『何かしら、みてのとおり忙しいのだけれど』
『このゴリゴリいくらで売ってくれるの』
『これは試作機で一般販売の予定はないのよ』
『そうなの、似たような物が欲しい場合はこれのようにオーダーすれば手に入るかい』
『ああ、それはオーダーメイドの…覚えてるわ、弾までオーダーされていたから』
そう言うと偉そうな女は僕のボトムレスとシャルロットをチラッと見てこちらを向いた。
『あなたがチックスターの英雄様、かしら』
『違うね』
『ゴリゴリを売る気がないなら君に用はない。人探しに戻るよ、じゃあね』
『私はコルティック開発部主任キャスよ』
『ふーん、じゃあね』
さてエスとハッカちゃんはどこかなぁ。めんどくさいから騒いじゃおうかな…
まったく、逃がしませんよエスさん…
町外れまであと少し…同業者のような人がちらほら見える、あの大きな箱みたいなの何かしら、でも今はエスさんに集中しないと…
真っ直ぐにあの箱みたいなのに向かってる、近道はない…そろそろ私の体力的にもたない…
増える人の姿に隠れて見えなくなるエスさん………私は走るのをやめた。
『わっ』
びっくりして後ろを振り返るとエスさんがにやりと笑ってる。
『イカサマ、怒ってない』『怒ってません』
『じゃあ、ゆっくり歩いてあの箱でも見に行くか』『はい』
2人並んで歩く、言葉はない…心地いい。
この時間が続けばいいななんて思ったからかもしれない、目の前で祭りが…
『わっしょい、わっしょい、ほら、気合を入れて。わっしょい、わっしょい』
う~ん。どうしようか。エスさんは無表情だし…
『ジーザさん、なにやってるんですか』
仕方なく聞いてみる。
『エス、ハッカちゃん。2人を探すのが面倒だからね、こうやって目立てば見つけてくれると思ったのさ。みんなありがとう、もういいよ』
目の周りに青あざを作った男の人達は私に頭を下げてこの場から飛ぶように去っていった。
『じゃあ、行こうかハッカ』『そうですねエスさん』
『2人ともうらやましいからってその扱いは酷いな。とっておきの情報もあるよ』
エスさんがピタッと止まる。
『聞こうか』
『あの大きなゴリゴリはね…売ってくれないそうだよ』『ハッカさあ行こう。2人で行こう』
『まあ、エスさん。ジーザさんはこういう人じゃないですか』
『ちょっと引っかかるけど、そうだよ僕はいつもこうじゃないか』
『それもそうか、ジーザだもんな。さっさと行くか』
ああ、胃が痛い…エスさん達が近づいてくる…
僕の人生もここで終わるかもしれない…はあ、彼女くらい欲しかったな…
いつも良い人どまりだったからな…
『ウェア、なに真っ青な顔してるんだよ。大丈夫か』
『エスさん、大丈夫じゃないのはきっとこの後ですよ。胃が痛い…』
『胃薬ありますよ』『すいません、いただきます』
ハッカさんが胃薬と水をくれる。
『この後何があるんだい。そういうことはバーンと言ってしまった方がいいよ、ほらほら』
簡単に言ってくれるけど一番怒りそうなのはこの人なのに…
もう、言うしかない、言うんだウェア。
『皆さん、落ち着いてくださいね』
『まずはお前が落ち着けよ』
『実は、5人組の件なんですが…』
『難しいか3人とかじゃ。まあしょうがないわ、な』
『そうですね、私達だけ特別扱いは出来ないですものね。良い人が後2人くるといいですね』
『誰でもいいけど、面倒だったら叩き出してやるだけだけどね』
あああああああああああああああああ、馬鹿、俺の馬鹿、なぜ一気に言ってしまわなかった…俺の意気地なし…
『おい、顔が真っ白通り越してヤバイ色になってるぞ』
『皆さん、バラバラにされそうで…す…』
胃薬の瓶がハッカさんの手から落ちる、それを同じ高さにみながら僕は気を失った…
まあ…しょうがないか。
支店の力なんてそんなものだ、もし上手くいけばと思ってたが、あとは2人の様子だが。
『まあ、しょうがないね。バラバラなら競争でもしようか。負けないよ』
ジーザはわかっている感じか。
『嫌…です…』
ハッカはどんよりテンションだだ下がり…
『まあ、とにかくウェアを連れて話し聞きに行くか』
俺は背中にウェアを背負って歩き出した。
目の前には俺にぺこぺこぺこぺこ頭を下げる支部長。
『まあ、しょうがない事はわかってるからそうぺこぺこすんな。ハッカには出来れば女性ばかりのチームを希望するがな。これぐらいは何とかできるんだろう、な』
ぺこぺこのスピードが上がったからわかってるだろう。
『ハッカ、そろそろ戻って来いよ。死ぬわけじゃない。入るのは別チームでも目的地は一緒だろう』
『そうですけど…』
『グズグズ言う女は嫌われるよハッカちゃん。今回はコルティックにある程度管理された条件での狩りでしょう。急に消えたりしないと思うよ』
『ジーザさん、そうですね』
ジーザの言葉に何かを感じたのか少し表情が明るくなる。
さてと、聞けることは聞いておこうか…
『で、どういう風になるんだ』
『正式発表前ですので別室で…』
グループ分けはコルティックへの鉱石売買の記録などを中心として個人をランク分けしていきトップグループは最前線の調査を任され、ランクによって報酬も変わるようになる。成果を上げたグループはランクを上げ成果が出ないグループはその逆となる。
ジーザは間違いなく最前線だろうな、俺もそこそこ上位ランクからスタートだろう…ハッカはコルティックの記録としてはまだ少ないから下のランクになるか。
『それじゃあ、競争は出来ないね。ひょっとしたらエスと一緒とかになるかもね』
『私だけ外れるんですね…』
『別にそう決まったわけじゃない。ジーザも煽るな』
後2日後には正式発表と移動が始まるらしい。それまではハッカのご機嫌取りか。
『支部長、チーム分けの表を見たけど…』
『なにか問題でも…』
『うーん、まあいいわ。チックスターの英雄は誰なの…』
『その…ご本人様より口止めされておりまして…主任様にもこればかりは…』
気に入らないわね…
『どうしても言えないの』
『アクアサークル支部全員があの方に恩がありまして…』
『あの目立つ金髪は、確かジーザさんだったかしら。馬鹿みたいな火力のオーダーメイドの彼』
『ジーザ様と面識があるのですか』
様付け…
『まあ、いいわ出発準備遅れないように』
『はい』
彼は自分は違うとはっきり言った。ああいうタイプは嘘をつかない、でも関係者には違いないと思う…資料を調べればたどり着くはず…待ってなさい。
キャスは目の前に探し人がいることを確信しながら用意された自室に篭ることになった。




