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『助けてあげられないでしょうか』


僕を助けてくれた少女が話を聞いてそう呟いた。

『何か身体が鈍って気持ち悪かったんだよな』

『エス、奇遇だね。僕も身体がもたついてるような気がしてたんだよ』


そう言いながら体を伸ばしだす2人…


『ハッカ、ちょっと運動してくるわ』『僕も』

『2人とも待って』

少女の声が届く前に2人の姿は人混みに消えていった。



人が飛ぶ…また飛んだ…

『おらぁ、コーティング持ってない奴はどーこーだー。おりゃ、そりゃ』

『どう見ても稼げなさそうな奴はぶっ飛ばしていいんじゃない。お前達命があればいいよね』


『コーティング持ってる人が迷惑だろうがぁぁっ。恨むなら自分の腕とコルティック社をうらめやぁぁぁっっほぅぃ』

『楽しそうだねエス。僕も飛ばしちゃうよ』


人が逃げる…必死の形相で僕らの横を走り去っていく…ああぁっ逃げ遅れた人がまた宙を舞う…


これは夢に違いない…でも、これなら窓口の僕らは助かるな……


僕はそのまま気を失った…




2人とも何やってるんですか、ああ、ウェアさん気を失った…



どうしよう…ああ、2人ともとても楽しそう。


何か盾を持った人たちに囲まれてる。


ああ、その人達も飛ばしだした…


『逮捕しろー、もっと応援を呼べーおとなしくせんか』

何か偉そうな人が一生懸命、必死に指示を出している………これまずいんじゃないかな、そろそろ止めないと…


『ウェアさん、起きてください』

『はっ、ハッカさん。夢ではないのですね』

『私は2人を止めに行きますから。ウェアさんは行ってください、巻き込まれますから。それとコレお仲間の皆さんに分けてあげてください。ではまた』


ウェアさんを置いて盾を持つ人の脇をすり抜け、人が飛んでいる中心へ飛び込む…


『へー、ハッカちゃん成長したね』

盾を持った人を踏みつけながらジーザさんが言う。

『どうした、一緒に加わりたかったのか』

にやりと笑いながら人を投げ飛ばしてエスさんが言う。



『やりすぎですから。2人とも座ってください』

『『はい』』

『今だ、確保だぁぁぁっ』


あっという間に2人はぐるぐる巻きにされて担がれて連れて行かれる。

『おい、やめろ。誰だ今変なところ触った奴。おおーい助けてくれー』

『なかなか、面白いねこれ。もっと高くわっしょいわっしょいってやりなよ。でも落としたら皆殺しだよ。それ、わっしょいわっしょい。エスもわっしょいわっしょいって言うと気分が高まるよ』

『そんな気分の高まりいらないんだよ』




『お嬢さん、助かりました。それにしてもあんなとんでもない奴等の動きを止めるとは、随分お若いのに凄腕ですな。いやはやとにかく感謝いたします。では失礼いたします』


どうしよう、関係者ですって言いそびれちゃった…


怒るエスさんの声と楽しそうなわっしょいジーザさんの声が聞こえなくなるまで私はその場に立ち尽くすのだった。




ちくしょう。ハッカが飛び込んできて驚いたとはいえこのぐるぐる巻きはいただけないな…あっ、しかも定期的に変なところ触ってくる奴がいるし。

ジーザは楽しんでるから当てにならねぇしな…


とりあえず詰め所までは大人しくするしかないか、ちくしょう、また触りやがった。イライラするぜ。




アクアサークルは広く大きな街、当然治安維持の為の保安部の人数も多く組織立っている。


保安部アクアサークル本部の一室、そこは戦場と化していた…


机はひしゃげてひっくり返り、床には屈強な男達が5人白目を向いて倒れている。

この道30年のベテラン保安部長は驚愕した。部下からの報告を聞き急いで駆けつければこの有様…


目の前の椅子にはワインを瓶から直接飲む金髪と今にも人を噛み殺さんとしそうな威圧的な目の黒髪…


私は今までの経験に無い事態にどう出るべきか迷いながらも口を開いた。


『私の部下が何かしたかね…』




『やっと話しが出来そうなのが出てきたな』

黒髪はそう言うと威圧的な空気を少し和らげてきた。

『エスは気が短いんだよ。こんな雑魚にむきになっちゃってさ』

金髪はワインを美味そうに飲みながらエスと呼んだ黒髪をからかっているようだ。

『うるせいな、ジーザだってワイン飲むなって言われて1人沈めたろうが』

『邪魔する奴は殺す。でも気絶程度にしてあげたんだよ、感謝されても責められるのはおかしいよ』


ジーザと呼ばれた金髪は頭がおかしい、話しは出来そうにない…


『残りの部下はエスだったか、君がやったのかね』

『あ、何か文句でもあるのか』

ぐっと増すプレッシャーに息苦しさを感じる。


『君の部下はエスに言ってはいけないことを言ってしまったからね』

『よければ教えてもらえるだろうか』




『エスが落とした1ジルを「そんなものは後で拾え」って言ったのさ』


1ジルを後で拾えといったから部下は床に寝て、机は使えない状態にひしゃげているのか…


『親切な僕がここで起こったことを教えてあげよう。面白かったからね』




そう、僕らはわっしょいわっしょいこの部屋に運ばれたのさ。その時僕はわっしょいが楽しくて上機嫌だった。

しかしエスは「いったいどいつが触ってやがった」とかぶつぶつ言いながらイライラしていたね。


しばらくして君の部下が入ってきた、この時点で僕らはまだぐるぐる巻きだったよ、もうちょっと考えて欲しいところだね。

僕は喉が渇いたからこのぐるぐるを外してワインを飲みたいと言ったのさ、そしたら君の部下が怒るんだよ。

「ふざけるのもいい加減にしろ、好き勝手にできると思うなよ」って言うから自力でぐるぐるを引きちぎってソニミオからワインを取り出して飲んだのさ。そしたら僕のワインを勝手に触ろうとしたから殺してやろうと思って銃を抜こうとしたらね。

「ジーザ、ここで殺しは不味い」っていつの間にかぐるぐるを取ったエスがきりっとしたいい表情で僕に語りかけるから嬉しくなって殺すのはやめてあげたんだよ。

他の奴等が何かワーワー言っててね、エスが「こいつ等じゃ話しにならないな」ってきりっと表情で小銭を数えだしたんだよ。邪魔者の掃除をしてた時にちょいちょい拾ってたからね。きっといくらぐらいあったか気になってたんだろうね、机で数え始めたのさ。エスは嬉しそうだったね、機嫌が直ってたから。


でもね。


君の部下達はしばらく静かにしてたんだけどね、何か嫌な事でもあったのかね急に怒り出して、机をバーン、小銭が床に落ちたのさ。


エスが「すまないが拾ってくれ」って言ったんだ。なんて紳士的な対応だろうって惚れ直したね。


なのに君の部下はエスを怒鳴りつけ、「そんなものは後で拾え」って言ったのさ。お金をこよなく愛するエスに「そんなもの」だなんて…僕は久々に神に祈ったね…


僕にとばっちりが来ませんようにってさ。




『どうだい、この状況がよく分かっただろう。今は気分がいいからお礼とか要らないからね。エス、こいつなら話が出来そうならとっとと話しして帰ろうよ』


解らないが余計な事は言わない方がよさそうだ…


『それは部下が失礼した。あの騒ぎについてお話を聞かせて頂けないだろうか』

とびきりな危険物を扱うように丁寧に、言葉を選んで声をかける。


『あれは人助けだ。コルティックの人間が疲労困憊で倒れていたから事情を聞いた。その結果あの騒ぎが起こった。以上だ』


『一度、コルティック社に確認を取らしてもらってよろしいか』

『勝手にするといい。俺はもう行く』

このまま野放しにしていいものか…


『部長、2人の関係者と名乗る少女とコルティック社の方が来ていますがどうしましょう』

『すぐに通せ』

今日は厄日だな…


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