アフロ大戦?
ここは…森か。
立ち込める霧…不安定な足場…そして、聞こえる争いの声。
現在地のわからない今の状況では危険があるかも知れないが僕に残された道は1つだね…
意を決して声のするほうへ進む。
小高い丘、眼前の霧が徐々に晴れていく。僕は言葉を失う…
眼前に広がる黒い物体同士のぶつかり合い…あれはもしや………アフロなのか。
僕は圧倒的なスケールに身動きが取れない。左右から中央に集まってくる様は荒れ狂う波が相手を押し流そうとしているようだ。
どちらも押し負けることない均衡が取れた戦場に「ブウォーーーブウォブウォー」不思議な音が響き渡る。
僕の眼前の黒いもこもこ達は左右に引いていった。いつの間にか霧は晴れていた。
『どうしようかね…』
なぜこうなっているのか解らない、僕はソミニオに手を入れる…
シャルロットとボトムレス。これがあればよほど危険はないだろう、現状を把握するためにも人を探さないと、手っ取り早いのはあのもこもこの後を追うこと。
山側か…海側か………緑豊かな木が生い茂る山。反対に目をやれば煌く海にもこもこの入道雲。
僕は小枝を拾って地面に立たせてゆっくりと手を離した。
『山か…』
緑豊かとはいってもしっかりと踏み固められた歩きやすい道を進んでいく、石でできた砦に大きな門、山側より鼻をくすぐるいい香りが漂ってくる、きっとこの門の先に街でもあるのだろう。
閉まっている門を眺めながら考えていると不意に上から声をかけられる。
『お前は何者だ、何だその頭は恥ずかしくないのか』
『我々を油断させるための罠かもしれん、もしそうならなんて度胸だ』
黒いもこもこが2人、槍?フォーク?見たいな物を持って何かやいやい言ってくる。イラッとするね。
両手で一発づつ砦の手すりを狙ってやる。
『あわわわわ、早くセカンド様を。敵だ、皆きてくれ』
砦の上はあっという間に黒いもこもこに覆われた、非常に暑苦しい、そして動き難そうだ…
飛び道具を持っていないのか…兵士らしきもこもこは砦の上からこちらを威嚇してくるのみ。面倒だね…そして暇だ…
空に向けて一発発砲する。黒いもこもこは下がったのかしゃがんだのか全体としてもこもこが縮む。お腹がすいた、入るか…
扉に向けて轟音を響かせる、何度も何度も砦の上から聞こえる微かな悲鳴も僕の銃撃音の前には虫の鳴き声のようなもの…
ぼろぼろになった扉にとび蹴りを喰らわせる、僕がゆったりと通れる位の穴をゆっくり歩いて中に入る。
『お待ちください。あなたの目的は何でしょうか』
堂々とした立ち姿にがっしり鍛え上げられた身体、そして周囲の者より一回り大きいアフロ…
少しは話しが出来そうだね。
『ここがどこか知りたい。それとお腹が空いてしまってね美味しそうな匂いがしたから入った。これでいいかい』
男は少し考え手を上げると兵士達は櫛のような槍を縦に持ち替えた。
『迷い人よ食事をご馳走しよう、話を聞かせてもらえるだろうか』
悪くない、丁寧な対応には丁寧を返すのが僕の流儀だ。
『ご馳走になろう。その前に1つ聞いていいかな』
『なんだろうか。私で答えられるものであればお答えしよう』
『なぜ、皆アフロなんだい』
この辺りでは動物はほぼ例外なくアフロだそうだ、猫も、犬も、鳥も、もちろん人も。
より立派なアフロを持つものが優秀であると評価されるそうだ、僕のようなさらさらストレートはこいつらから言えば生き恥を晒しているも同然らしい、そんな中僕の強さを認めたセカンドはやはり優れているのだろう。ああ、セカンドはさっきの少し大きいアフロの名前だそうだ。
そして僕は今アフロを被って城、というよりはちょっと大きい屋敷みたいなところへ案内され食事を待っている。
『ジーザ殿、部下から報告がありましたがあなたは離れた場所を壊す魔法が使えるそうですね』
『魔法?銃のことかい』
『銃という魔法なのですか。出来るならばその力われ…』
『セカンド、これは私達の問題です、はい』
声のしたほうを向く…言葉が漏れる…
『ボブ…』
見れば見るほどそっくりだが、大きな違いはアフロの大きさか…
『ジーザ殿でしたか、こんなアフロでお恥ずかしい。食事の用意を急ぎなさい、はい』
『ボブ様、無理をされてはアフロに響きます。ジーザ殿のお相手は私にお任せください』
『セカンドよ迷い人であるジーザ殿を我らの事情に巻き込もうとする、自分のアフロに恥ずかしくはないのですか、はい』
ボブにそっくりのボブは少しアフロをしぼませながら「申し訳ないです、はい」といいながら部屋を出て行った。
その背中を心配そうに見つめ、その拳は血が滲むのではないかと思われるほど強く握りこむセカンド…
食事はとても美味しかった、卵に鶏肉、ナッツを贅沢に使ったサラダなどセカンド曰く「アフロを健康に保つのにいい食品、後は牡蠣があればよりよいのだが」だそうだ。
食後のワインを飲んでいると不意に話しかけられる。
『ジーザ殿、なぜ王の名前を知っておられたのですか』
『知り合いにとても似ていてね。彼のアフロはまさに奇跡といえるものだったね。一言では語りつくせないよ。金で出来た重い十字架を保持したときは驚いたものさ』
セカンドは顔面蒼白で椅子から飛び降り僕に土下座をしながらアフロを震わせている。
『今までの数々の無礼を、どうか、どうかお許しください。神の使いであったとは。知らなかったこととはいえ申し訳ありません』
状況がつかめず、ポカンとする僕にセカンドは神の使いの伝説を語りだす…
その昔、素晴らしきアフロを持ち人々に笑顔をもたらした伝説の男が居た、その名は「ボブ」笑顔によって人を纏め、争いをなくした英雄はある日天から降臨した天使によって黄金の十字架を授けられる。
アフロの上で揺らぐことのない黄金の十字架の元に国が出来、代々の王は建国英雄「ボブ」の名と黄金の十字架を受け継ぐこととなった。
『もういいから、顔を上げなよ。堅苦しいのは嫌いなんだ。それより何でアフロ同士争っているんだい』
ためらいながらセカンドは話しだした…
あれは忘れもしない…ボブ様のアフロの調子が悪くなられてから半年後のこと…
この城に奴が現れたのです。
『待たせたね。俺こそ新のボブ!ボブ・ザ・さぁぁぁぁぅうぉぉぅぉぁぁぅどぅぅぉぅ』
小刻みに頭を振りながら我々の前に現れたボブ・ザ・サード。王の名を語る不届き者…
しかし、その頭には金色の十字架が小刻みな揺れにもグラつくことなく立っていたのです。
我々はボブ様派、サード派に別れ争う事になったのです。
『私はサードが王でも良い、争うよりは良いといっているのですがね、はい。セカンドを筆頭に頑固者ばかりが残っているのです、はい』
『ボブ様、大丈夫なのですか』
『ジーザ様が天使様かもしれないのなら今の国の状況を憂い、金の十字架を取りにこられたのかと思ってな』
ボブの言葉に目を潤ませてガックリ肩を落とすセカンド…心なしかここのボブも寂しげな表情をしているね…
『僕の知るボブという男はそんな顔をしない、そもそも僕は神に盲目的に従うあんな奴等と一緒にして欲しくないね。僕の知るボブという男はね絶望の淵でも笑いながら笑わせてくれる…そんな男さ』
僕はここのボブの頭にある瓶を差し込む。
『個人的には今の君にもボブを名乗ってほしくないね。もう1人ボブの名を語る奴に会ってみたい、案内を頼むよ』
気の抜ける「ブウォーーーブウォブウォー」の音が響く。
『ボブ様、セカンド様。奴が、奴等が迫ってきています』
『門は…そうであった、ジーザ様によって穴が…』
都合がいい、向こうから来てくれるとは…
門めがけて勢いよく僕は駆け出す、後ろからセカンドの「ジーザ様に続け」の声を置き去りにして風のようにアフロ達が住む町を抜けていく…
驚いたね。なんて不毛な戦いなんだ…
門に入ろうとする者と通すまいとする者達が櫛みたいな槍でお互いのアフロを崩し、伸ばししながらにらみ合っている。
『大丈夫だ、アフロの形はまだ丸いぞ』
『もうだめだ、一部がストレートに…』
『負傷した者は早く後ろに、先生』
『パーマ液が追いつかん…』
なんという戦い、面白い。本物のボブを参戦させたいね…
余りの面白さに動きを止めて見入ってしまう僕の背後から声をかけられる。
『ジーザ様大丈夫ですか』『ああ、僕のはカツラだからね被害はないよ』
セカンドの方を向かずに答える…こんな面白いものから目が離せるわけがない。
『待たせたね。俺こそ新のボブ!ボブ・ザ・さぁぁぁぁぅうぉぉぅぉぁぁぅどぅぅぉぅ』
あれが…もう1人のボブの名を語るものか…つまらない…ノリだけの薄っぺらいパフォーマンス…あれがうわさの十字架か…ん、あれ両者とも下がっていく、折角楽しんでいたのに…
殺す……あの薄っぺらいサードとか言う奴は僕の楽しい観戦を邪魔した………辱めて殺す…
1人ノリノリで全員の視線を一人占めするサードにセカンドが近づいていく。
『サード、悪ふざけも大概にしたらどうだ』
『ボブ様、いやもうあれはボブを名乗る資格もない、十字架を保持できない奴にボブを名乗る資格はない。そう、今のボブはこの俺1人どぅわゎゎぁぁっっわゎゎぁあっほっぉぉぉ』
僕の中で何かが切れる音がする…
両手の愛銃が交互に火を噴きながらサードに近づく、十字架を端から砕きながら小刻みに震えるサードに近づく、その震えは元からか、それとも恐怖か…どっちでもいい、こいつは俺の楽しみの邪魔をした、ただそれだけ。
『これは…金じゃない、木だ…』
木…撃つのをやめて破片を拾ってみる…金色が塗られているだけ。
この場の全アフロが震えるサードへ怒りの言葉を浴びせかける…
このアフロ達にはがっかりだ…アフロには夢と楽しさが詰まっていると思っていたよ、目の前の震える小者も殺す価値もない…
『皆の者、不毛な争いはやめようではないですか、はい』
響く音楽に乗って聞えたハリのある声に怒っていたアフロも、落ち込んでいたアフロも、堅物のセカンドも身体とアフロを揺らしている。僕を囲っていたアフロの一部が割れひときわ大きいアフロが近づいてくる、金の十字架を載せて…
『ジーザ様』
『僕の知る男に近づいたね…さあ、楽しもう』
ボブはサードを立たせ、そのアフロを優しく整えてやった。
ボブの号令で形を変えながら踊り狂うアフロ達の顔には笑顔が満ち溢れ、セカンドとサードも肩を組んでボブを持ち上げている、楽しいね………………
はっ…ここは…アフロ達は…
隣にはアフロの美しい女が裸で眠っている。
夢か…
アフロの美女なんて珍しいから激しくしてしまった。
ボブの奴元気かな。この夢が何かの予感ではないかと感じながらアフロをぽんぽんと触り僕は二度寝をするのだった。




