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世間はいろいろ騒がしいようだな…


今日も町は静かだ、あの日々からジョンの奴やボブがちょくちょく私のところに顔を出すようになった。


世間話に始まって、結局いつもあの日々の話になる。昔話が多くなるのは年を食った証拠ではあるが…


ただ懐かしむのではなく目を輝かせて話す2人が楽しそうなのでよしとしよう。



『保安官、今日はタイミングが会いましたです、はい』

『店はいいのかいボブさん』

『それはお互い様ですねー』

『ちげーねぇわ』


一言で言えば平和だ、強盗崩れ程度が町を襲うこともあるが、我々3人ですぐにかたがつく。準備運動にもならない。


いいことだ。この年で無理をする必要が無いのは幸せなのだろう。



この町は終わる町…エスが消えたあの日、町から逃げた者の多くは戻らなかった、人は徐々に減ってきている。


『これからどうなっていくんでしょうね、この町』

ジョンは不安が強い、守るべき者達は徐々に数を減らしている。責任感の強い男だ、面倒見もいい。ゆえに不器用。


『荒野に飲まれていくのでしょうね、はい』

ボブは冷静、この町に来た経緯は知らないが世間を知っている。愉快な男だが切れ者だな。私もボブと同意見だな、この町は徐々に終わりに向かっている。ワンダー騒ぎが無ければ残ったかも知れないが…



『いっそのこと町を出てみるか…』


『それもいいかもしれないですね。はい』

『う~ん、町を出るか…』

ボブは肯定、ジョンは迷いを、対称的な反応だ。


『お2人とも、どうです。3人で違う町で商売をしてみると言うのは』

なかなかに面白い、元手はあの騒ぎの金がある、ジョンは面倒見がいいし真面目で気のいい男だ。私は愛想がよくないのはわかっているがボブがいればその点は問題ないだろう、荒事を嫌うがそちらの方は私がやればいい…バランスもいいな…


『いいかもしれんな、この年でこのままゆっくりと思っていたが。ハッカも独り立ちしたことだしな』

『賛同に感謝です。後はジョンさんさえよければ…』


『う~ん、お2人とやるのは俺としても嬉しいのですが。経験の無いことで足を引っ張る心配と、徐々には減っていやすがこの町にはまだ人がいる…せめてこの町を守れる奴に保安官を引き継がないと…』

『ほっほっほ、ジョンさん何も今日明日どうしようという話ではないですので、はい。後任を準備しつつ。商売のイロハをお教えしますです。ね、ボレロさん』


上手いな、ジョンの人柄を高く買っているのが伺える。


『決まりだな。別に急ぐ話でもないからこうやって集まった時に話を進めるとしよう』



それから、暫く話をして日が傾きかける頃お開きになった。




誰も客のいない宿屋に1人、厨房でお湯を沸かしながらこれからのことに思いを馳せていた。


『面白くなってきたな…』

『何が面白いの』

『いやな、ボブとジョンの3人でこの町を出て商売をしようかと言う話になってな』

『確かに面白いなそれ』

『だろう。年甲斐も無くワクワクしとるのが自分で面白くてな』

『でも、私に一言もなしじゃ、会いに行けないじゃない』

ん、私は誰と会話を…


『ただいま、お爺ちゃん』

『ニヤニヤしながらお湯を沸かすのはやめたほうがいいと思うぜ、ボレロ』



『2人ともわざわざ気配を消して入ってくることは無いんじゃないか』


『エスさんが驚かせてやろうって言うから、私は止めたのよ』

『ハッカだってノリノリだっただろう』


私に気配を悟らせないとは、よそ事考えていたとはいえまた1つ成長したなハッカ。

元気そうだな。本当によかった………無事だったんだな、エス………


無言で拳をエスの頭に落とす。


『久々の再会に、これは無いだろう、本気でやりやがって』

『みんな心配したんだ。これぐらいで済んでよかったと思うんだな』


ばつの悪そうに頭を掻くエス。

「心配かけて悪かったよ」小声で言う。素直じゃないやつめ。



『ボブのところで夕飯を食べるとしよう、ハッカの話も聞きたいしな。そうと決まれば行くぞ、ほらほら』

『もう、お爺ちゃんったら』

『ボレロ、キャラ変わってないか』

私も嬉しくて浮かれている、ジョンとボブに紛れるとしよう。




サウザンドボブ、あのキラキラした看板はいまは光を灯していない。


『いらっしゃいませ。ご無事で何よりです。はい』

『ボブ、心配かけたようだな』

『いえいえ、必ず無事と信じておりましたのです』

『レディハッカ、一段と素敵になられましたのですね』

『いえ、まだまだ半人前です』


懐かしい雰囲気、客はまばら。ボブは俺達がよく使っていたテーブルに案内してくれる。

『私はジョンにも声をかけてくるから先に食べていてくれ』

ボレロはそういうと一度店を出て行った。ボブは他の従業員がいないのか1人で店を回しているようだ、相変わらずあちこちにアフロが突然現れるような動き…むしろキレが増しているような。


そう考えていると、俺達のテーブルにアフロが生えてくる。

「ひっ」軽く悲鳴を上げるハッカ。

『ボブオリジナルの数々でございますです。はい』

料理と飲み物をさっと並べ沈んでいくアフロ…


『いろいろあったな』

ジンを少し口に含みハッカに声をかける。

『はい、いろいろありましたね』


『ボブの作るものは美味いな』

『そうですね。おいしいです』



『おりゃー』

スッと頭をずらしてカウンターの裏拳を後ろの奴の鼻先で止めてやる。

『久々なのに、随分な挨拶じゃねーか保安官』

『ボレロさん、話が違うじゃないですか』

『エス、私の時のように受けてやればいいじゃないか』

『食事の邪魔して当てなかっただけ感謝して欲しいくらいだけどな』


ボブは店のこともあるので4人で始める。俺達は今まであったことをそれぞれ話した。

静かに耳を傾けているボレロ。

話の内容ひとつひとつに大げさな反応を見せる保安官。

そして、楽しそうに話すハッカ。

ボブは遠くでもいいタイミングで頷いているからきっと聞いているんだろうな…ボブに関しては深く考えてはいけない…


時間は過ぎ、店には俺達だけになりボブも椅子を持って同じテーブルに座る。


『と言うわけで、この町はいずれ無くなってしまうだろうな』

『だろうな、でさっきの話か』

悪くないと思う、町も生き物と同じで成長したり衰退したりは自然なことだ。


『いいと思うけど、あてはあるのか。アクアサークルは新規で入れるほど物件ないしな…俺んちならあるけど、商売するほどの広さはないしな』


『ジョンもだが、せっかちだな。今日明日の話じゃないからな。ちょっとづつ準備するから大丈夫だ。資金ならそこそこあるからな』

『お爺ちゃん、これも使って』

ハッカが大きな袋をボレロに渡そうとする。

『ハッカ、それはお前が稼いだお前の物だ』

『お爺ちゃん、勘違いしないでほしいの。これはおじいちゃん達への投資よ』

そういうと俺達に片目をつぶってウインクをした。


『ボレロの負けだな。いつまでも子ども扱いしてるからだぞ』

『これは受け取らない訳には行かないですね、ボレロさん』

『ハッカちゃん一気に大人になったな』


俺達3人にやいやい言われて苦い顔するボレロ、そんなお爺ちゃんにハッカは言葉を続ける。


『だから、この町を離れる時も絶対私に連絡して。知らない間にどこかに行かないで…』

ボレロは黙ってその袋を受け取った。


ニヤニヤしてる俺達をギロッと睨み、ハッカの頭をやさしく撫でる。

『約束しよう。お前が本当に私から巣立つ時まで勝手に消えることはない』

『うん、約束よ』




『ところでハッカ、旅に出ている間。私はどこに連絡をすればいいのかな』



『アクアサークルにある俺の家の住所とりあえず教えとくわ…』

『すまんな、エス…』

真っ赤な顔で固まるハッカを横目にボレロに住所を教えて今日の夕飯はお開きになった…


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