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急がなきゃ…

『開発部主任権限で提案です。アルコ種変種の発見、特徴などの情報の開示。ならびに変種用コーティングの売り出しの宣言を要求します。売り出し価格は予定の2倍で行います。現状各地での治安の悪化はエネルギー不足の不安感から来ているため、その原因を取り除くことを表面的な目的とし国からの正式発表を要求します』


緊急用回線での特権を発動。

コルティック重役の反応は…ミラ以外は賛成。


その日の夜には大きな街を中心に情報は世界に広まっていった。




『なーハッカ、考え直さないか』

『嫌です。エスさんだって了承したじゃないですか』


少し遅めの夕食を酒場で食べながら俺はハッカに話しかけていた。


『ほら、場の勢いっていうか。ノリでついみたいな』

『一度決めたことを覆すんですか。一度あげるといったお金をやっぱりやめたって言ったらエスさんどう思いますか』

『全力で取りにいく…かないかもしれない』

『今、取りにいくって言いましたよね。同じことですよ』

『同じじゃないだろう』『同じです』


にこにこしているが、意地でも引かない決意が見える…自分が悪いから旗色は最悪だ…

時間は宿探しの時にさかのぼる。





『宿、無いですね』

『あの街見たさの観光客が多いんだなきっと…どこも足元見た値段だしな』


チックスターでの宿探しも思えば大変だったな、お陰でハッカやボレロ、皆と出会えたわけだが…


『エスさん、あそこにも宿がありましたよ』

『ここまできたら選んでられないな。よし、次泊まれるところがあったらどんなところでも泊まるぞ』

『わかりました、だいぶ暗いですもんね。お腹もすいてきましたし』

『次で決めよう』


『いらっしゃい。泊まりかい』

『ちなみにいくらになる』『もう、エスさん』


『仲がいいね。うちは食事なしで一部屋150ジルだよ』

この辺りの相場よりちょっと安いな、運がいい。これは決まりだな。

『一晩頼むよ』

『じゃあ、これ鍵ね。1階の一番奥だからね』

『ん』

『どうしたんだい』

『いや、2部屋欲しいんだけど』

『その部屋が最後なんだよ。どうす…』

『大丈夫です。問題ないので。女将さん、はい150ジル。お世話になります。この時間でも食事できそうなところありますか』

『あ、ああ。それなら家出て左3軒隣が酒場だから遅くまでやってるよ』

『ありがとうございます。あーお腹すいた、さあ夕食行きましょう。ほらほらエスさん、私達の部屋の鍵を女将さんに預けて』


なぜか手を振る女将さんを見ながら酒場に手を引かれている俺がいた。





『ハッカちゃん』『駄目ですよ。撤回はさせません』


う~ん、こうなったハッカは止められないな…

ん、なにやらざわざわしてる。


『ハッカ、宿の件はわかったからちょっと待ってろ』

待たせる必要は無いかな。


『速報です。アルコ種変種が発見されたそうです。詳しくはコルティックより明日発表があるとの事です』

思ったより早いな…


『まあ、明日になればわかるか…』

『そうですね』


にこにこしてるハッカとゆっくり食事を楽しむか、ボブの話でもしながらな。




不満です。私はとっても不満です。

一緒の部屋ですよ。大き目のダブルベッドでしたよ、私がゴロゴロ2回転、3回転しても大丈夫って広さですよ…


エスさんはなぜ床で寝ているのか。


船の上での昼寝は隣でしたよね。船の上での昼寝より距離が遠い…

きっと野宿はもっと近いでしょうね。ああ、そうでしょうそうでしょう。


別に、襲って欲しいとかそういうことじゃないんですよ。まだ、私には早いと思いますし…

そーれーでーもーそんなに魅力無いですかね私。




何だろう、朝起きたらハッカの機嫌がすこぶる悪い。俺何かやったか…覚えが無い…

まあ、わからないことはしょうがない。今は情報収集が先だな…嫌だけどミラのところ行くか…

怖くて後ろが向けないな、早く行こう。




『早い再会だな、エス君』

『原因はそっちだろうが』

『こっちでもいろいろあるのだよ。ちなみに昨日話した以上の情報は無いのだよ。一般に配布される資料はいるかね』

『タダなら貰おうか』


『後はこれをあげよう。条件付きのプレゼントだ』

顔をしかめたエスさんが受け取った封筒の中身を見て、「ほう」と呟く。


『いいのか、随分と気前がいいじゃないか。俺がどんだけ武器持ってるか知ってるのか』

『君はタダの意味を知ってると思っているからね』

『怖い怖い』

『あの女に一泡吹かす為なら安いものだよ』


『何が書いてあるんですかエスさん』

『こちらの紳士が銃のコーティングを無料でプレゼントしてくれるそうだ』

ええ、確か結構な金額って話だったのに…


『もちろん、そちらの君も使ってくれたまえ』

いいのかな…


『条件の方も聞こうか』

『コーティングはこの街以外で行うこと』

『それだけですか』

『そうだよ、少女。それだけだ。できれば早くこの街を離れてくれると嬉しいがね』



『俺もこの街はあんまり好きじゃない。ハッカ、すぐに出発しよう、いいか』

私の返事は分かってると思うけどな。

『はい、行きましょう』



私達は荒野へ足を進める。




今日という日が終わりを告げる、自分のオフィスから見る空の色の変化を見ながら飲むアルコールは格別であるな…


入り口が騒がしい、来たか…

『君、いいから下がっていたまえ。どうかしたか開発部主任様』

『何をしたの。素直に話すのね』

『いくら君でも、私をどうにかすることはできない。私は何も知らん。言いがかりはよしてもらおうか』


『小さい男ね。せっかくの機会を自ら逃すなんて』


『何とでも言うがいい。証拠無く言いがかりをつけてくるような人間のほうがどうかしているとは思わないのか。研究に没頭しすぎではないか。どうだねよければ1杯』

『いえ、結構。失礼するわ』



愉快、愉快。あんなに悔しそうな顔を見たのはいつ振りか…

そうだ、私に頭を下げて研究を支援して欲しいといった時もあんな顔をしていたな。

あの頃はよかった。



少々やり口が子供であったな、明日にでも人伝に情報を与えるとするか…





『さてと、今日はこの辺で野宿だな。ハッカ寝てていいぞ』

『ちゃんと交代するので声かけてくださいね』

『わかったわかった』


「もう」っていいながらテントに入っていくハッカを見て、焚き火に薪を追加する。


さてと…コーティングはアクアサークルでいいだろう、あの街に設備がないことはないだろうしな。


手持ちの武器を1つ、また1つ取り出しては確認して仕舞う、確認して、仕舞う…

さてと、コーティングする銃をとりあえず5つに絞る。

ハッカは俺の知る限りは一丁だから問題はないか、目に光が飛び込んでくる。


しまった…自分の銃の確認に没頭しすぎた。ハッカが怒るな…

朝食で機嫌をとるか…


ベーコンの焼ける匂いはこの時間にはたまらないな。

『エスさん、なんで声をかけてくれな、かった、ん』

『とにかく飯でも食おう。銃の確認に没頭しすぎてな。いい匂いだろう』

ぐぅ~とお腹を鳴らし、真っ赤な顔のハッカに焼きたてのベーコンを渡す。


『アクアサークルを目指すけど、ちょっと寄り道していこうか』

俺とハッカの旅は続く。




今日の荒野も雲ひとつ無い…


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