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『やっと、着いたか…』

首都ヴィルネス…コルティックの技術でここだけが未来都市って感じであんまり好きじゃねー街だ。

ハッカは目を丸くして固まっている…


『ハッカー、ハッカ、おーいおーい』



『ハッ、ここはいったいなんですか…』

『今は選ばれた者しか定住を許されない首都ヴィルネス。コルティック社によるオーバーテクノロジーの街だ。俺達みたいなのは外周にある普通の町で宿をとるぞ』


長居したくないからさっさと用事を済ませるかな…


『待って、待ってくださいよ』

完全に雰囲気に飲まれてるな…しょうがない。


『えっ…』

『迷子になったら困るだろう。俺の手離すなよ』


ハッカの手を引いてコルティック本社を目指して歩き出した。




「俺の手離すなよ」「俺の手離すなよ」「俺の手離すなよ」「俺の手…


ほわ~、繰り返されるエスさんの言葉…ああ、ここに来てよかった。離しませんよ、絶対に。


嬉しくてボーっとついていたけれど…絶対に迷ってるよねエスさん…ほら、イライラしてきてるし…


『エスさん、人に聞いてみましょうよ』

『別に迷っていたわけじゃないんだぜ、久々だからどう変わったかなって、そう、そうだよ。観察してたんだ。思ったより大きく変わったな。人に聞いてみよう』


時々、エスさんを身近に感じるな…かわいいからいいけど。


『すいません、コルティック本社ってどこでしょうか』

『田舎者か…この街でコルティック本社がわからないなんて…ひぃー、人殺しだ誰か』

サイレンの音と共に小型の馬車…馬がいないけど結構な速さで近づいてくる。


『そこの男、この区域では銃を抜いてはいかんぞ』

『え、そうなの』

『この私に銃を向けるような男だぞ、即刻逮捕しろ』

『ミラさん、いくらあなたの話でも抜いただけで逮捕は出来ませんよ』

『コルティック社の重役の1人である私の言葉が聞けないのか』


保安官さんかな、かなり困っているみたい。あれ、エスさんがニヤッと笑ってる。


『お前、コルティックの人間か。ちょうどいいや、おはなししようぜ。なぁ』

エスさんは雲の上から目線の人と肩をくみ出した、何か呟いてる。

『なんでお前みたいな奴と…そうだな、我々は文化的な人間だ会話でわかりあえるだろう。君、すまなかったね。もう行ってくれて構わんよ』

『ミラさんがそう言うなら、失礼します。もう銃を抜くんじゃないぞ』

『わかったわかった、十分気をつけるよ』


『さて、さっきの保安官が乗ってたのはなんだい』

『あれは、プルトロン鉱石を燃料に走る自動車という物だ、現在は試作中でこの区域の警備に使っている』


『へー、1つ欲しいね。買えるのかい』

『いや、現在のところ一般には販売していないのだよ。路面の状況を選ぶこともあってね』

『本当のところはどうだか…』

エスさんの疑いの眼差しにも顔色1つ変えない。


『アルコ種の湧き減少について聞こうか』

『公式発表の通りさ、付け加えるなら原因は不明って事だね』


エスさんは少し間を空けて様子をみている。


『君の出かた次第では…だけれどね。ここではなんだから私のオフィスでアフタヌーンティーでもどうかな』

『お言葉に甘えるとしようか。ハッカもそれでいいか』

『いいですよ』


私では情報を手に入れることもできないし、こんなところに1人にされても困っちゃうから…


口もとの細いおひげをキュッキュッとしごきながらひときわ目立つ大きなビルに入っていく。


『ミラさん、後ろの方達は』

警備の人かな、呼び止められる。

『私の客人だ。心配ない』

『了解いたしました』

『ついてきたまえ。そしてようこそコルティック本社へ』


広いロビーから小さな箱に乗るとゆっくりと上に上がっていく、なんかふわふわして気持ち悪い…


『この9階は私専用だから、くつろいでくれたまえ。君、開発部主任に連絡とお茶の用意を頼むよ』



大きな部屋の奥にある立派な机にミラさんは腰掛けくるっとこちらを向く。

『改めて。ようこそコルティックへ…チックスターの英雄…私は運がいい』

『運がいい…どうかな』


お互い悪そうな笑みを浮かべて小さな声で笑いあっている…お互いの腹を探る気満々だ。

部屋の入り口がノックされて先ほどの女性がカートにお茶やお菓子を載せて運んでくる。


『ミラ様、開発部主任は研究施設に居られるようですぐには来られないそうです』

『タイミングの悪い女だ。後で悔しがらせてやろう』


『開発部主任さんって女性の方ですか』

『うむ、見た目はいい女だが中身は研究のことで頭がいっぱいの変人であるな』

そうか、女の人なのか。私のソニミオの話を聞いてくれた人だったりして。



『そういえば英雄、名前を聞いてなかったな』

『俺はエス、こっちはハッカだ』


「へー」と言って私のほうをチラッとだけ見てエスさんと話を続けだした。


『規格外は我々に売った以外にもあったのかね』

『どう思う…』



『アルコ種の変種…知っているかね』

『規格外は他にも出たぜ』


『変種は鉱石に変わる時に水を撒き散らす、それは人体に無害…銃器には余りよくない物だ』



『あの町で出た規格外は武一族の商人が所持しているはずだ、今はどうなっているかわからないが…』


呼び鈴を鳴らしさっきの女性が入ってくる、ミラさんは少し耳打ちして女性はすぐに部屋を出て行った。


『その水、どういう理屈で銃器によくないんだい。ミラさん』

『開発部で現在研究中だ。わかっているのは特殊なコーティングをかければ大丈夫らしい』


『らしい…』

『あの女がなにやら難しい説明をしていたが技術的なことは私には理解できんよ』

『高いのかい、それ』



部屋に沈黙が続く…

どうしたんだろう、2人とも見つめあったまま時が止まったように動かない…


暇だなぁ…舞さんから貰ったメダルを眺める、舞さん元気かな…



暫くして女性が急ぎ足で戻ってくる、ミラさんに耳打ちをしてまたすぐに出て行ってしまう。


忙しそうだな、さっきの人…



『犯罪率が上がっているのを知っているかね』

『身をもって、感じてきたぜ』


『コーティングはソニミオを所持、そして維持できるぐらいであれば問題ない程度になるだろうね』

『カネホリ廃業者が犯罪者にか…物騒な世の中になるな』



『時代と言うのは突然変わってしまうものだよ。人はその時期を多少ずらす程度の力しかない』

『偉ぶっているが中身は普通だな』

『虚勢を張らねば生きていけない場所もあるのだよ』


『ちげーねぇ。さっきの話は近いうちに外へ出るんだろう』

『お見通しか』

『まあ、本当の機密はあんたの一存で出せるほど小さくないだろうここは』




『コルティックに何かある時は私の名前を出すといい…ミラ・コルトの名をな』

『ハッカ、そろそろ行こうか。外周で宿探さないといけねーからな。じゃあなおっさん』

『はい、お菓子ありがとうございました』


ミラさんに頭を下げてコルティック社から外周へ向けて2人で歩き出す。




『ちょっと、なんで通信に出なかったの』

軍隊にしかないようなモニター付きの通信機から聞こえるのは変人の声。

『とびっきり客が来ていたのだよ。外部の人…』

『何者がきているのかわかっているから通信したのよ、どういう…』

『待ちたまえ、彼は君の興味を大いに惹く存在ではあるが、部外者だ。この通信システム1つでも重大機密であることを…』

『抱き込めばいいじゃない。彼の体験は研究を加速させる可能性が高い、それはあなたの大好きなコルティックの利益に繋が…』

『断ったらどうするつもりだ。彼は武一族との繋がりもあるようだ、最近動きが活発だからな情報もどこからか漏れているよう…』

『簡単に漏れる情報よりも危険を冒してでも必要な情報もあるんじゃないの』



研究狂いめ…言われなくともわかっておるわ。



『まだ何か反論でもあるの』

『いや、繋がりは作った。アルコ種変種の話と例のコーティングの話はした。金額に興味がありそうだったからその辺りを餌にするといい』

『わかったわ。彼はどこに行くって』

『外周で宿を探すと言っていた』

『じゃあもういいわ。いつも通り好きにさせてもらうから』



『いい気になりおって』

椅子をけり倒す。


あの女の技術で今のコルティックはある、目をかけ開発援助をしてやった恩を忘れおって…

忌々しい…


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