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『困ったな…』

『そうですか。お金ならだいぶあるじゃないですか』



『貯まっていかないじゃないか…』

『そんなに落ち込まなくても』



『もう俺だめ…』

『私と一緒にゆっくり…暮らすとか…』




『お前ら、状況わかってんのか。言うこと聞けって言うより話を聞いてくれよ』


話は少し前にさかのぼる…


船の旅は問題なく過ぎ、ジューンポートではエスさんが厄介事は嫌だといってサブロイ一家の人たちに見つからないように着いた足で町を出たのが夕方。

火を焚いて、さて夕飯でもって所で盗賊、強盗…みたいな人達に囲まれる。


『お子様達だけで旅とは無用心じゃないか』

『親切で言ってるなら余計なお世話だ。違う意味で言ってんなら相手になるぜ』


エスさんの手にはすでに銃が…


『いつの間に抜きやがった…ただもんじゃねぇな。アルコ種の湧きは減るし、変な奴に当たるし踏んだり蹴ったりだな…』

『おい、今なんて言った…アルコ種の湧きが減ってるって』

『しっかり聞いてるじゃねーか。いいから金目の物か食い物出せ』



エスさんは稼ぎ場が減ったことがショックなのか体全体がふにゃふにゃして、ぐでぐでして、更にぐだぐだしている。せっかく私と一緒になる提案をしているのに…

叫んでるおじさん達と私の話を聞いて欲しい気持ちがシンクロした。




『皆さん、こんなときはご飯を食べましょう。さあ、武器を収めてください』


『なんかよくわかんねぇがこのお嬢ちゃんに従ってみようや、お前ら武器をしまえ』


こんな時のために一生懸命練習した料理の腕が役に立つはず…



『うめぇー久々にちゃんとしたもん食べたぜ』

『お嬢ちゃんありがとう』

『いい嫁さんでうらやましいぜ坊主』

いいおじさんだ、後でおまけつけるからもっと言ってほしい。

『いや、違うから』

エスさんは私がいい気分に浸る時間ぐらい待ってもいいと思います…

『そんなことより、さっきの話詳しく教えろ。飯食わしてやってるだろうが。あぁん』

エスさん、エスさん。この料理は全部私が作って用意してるものですよ。その表情ではどちらが強盗や盗賊かわかりませんよ。

『エスさん、めっ。良ければ教えてもらえますか』


『知らないほうが驚きだけどな。コルティック社からの情報でこの国中に昨日正式に発表があったんだよ』

おじさんの話では、ワンダーの湧き情報が減りだしたのは私の町チックスターのワンダーが亡くなった頃、つまりエスさんが行方不明になった頃からだそうだ。

お金の無い皆さんはワンダーの情報を掴もうと必死だったけど数も規模も縮小してるため思ったように稼げなくなって正式発表を聞いてもうワンダーで稼ぐのは難しい焦った同じような境遇の人が集まって強盗をやろうとしたらしい。


ちなみに初犯であることを必死にアピールしていた。


『本当のことはわからねぇし、でも国やコルティックが言ってんだ俺達みたいのはどうしたらいいか。故郷に帰るにも先立つもんがねえ』

そこそこ稼げてパーッと使ってしまっていたつけが今の俺達だだって、自業自得といえばそうだけど…


『あーあ、行くしかないか…』

黙って聞いていたエスさんがつぶやく。

『どこへですか』

『首都ヴィルネス、情報の発信源ならもう少し何かわかるだろう。また、船だな』


荒野の中心にアクアサークルその西にある首都ヴィルネス。この国の首都でありコルティック本社がある政治の中心地。

海に面しているため船での移動の方が早い。



『皆さんはどうされるんですか、これから』

5人のおじさん達はお腹が膨れて落ち着いたのか、これからのことを話し合っていた。


『行くあても無いしな俺達…』

『ちょっと変わってるけどお仕事無いか知り合いにきいてみましょうか』

『ハッカ…なんとなく誰のことかわかるけどやめといたほうがよくないか』

そうかな、ボスさんいい人だと思うけどな…



結局、おじさん達を引き連れてジューンポートの町へ戻る。

『とっととこいつらを連れて行くぞ』

『エスさん、もうだいぶ遅いですよ。迷惑じゃないですか』

『きっと大丈夫だ。あいつらは喜ぶと思うぞ』


もう、こんな時間なのに…


ボスさん達と会った事務所に着く、入り口にいたのはエスさんに足を撃たれた人。

『あ、あ、あ、あ、ハッカ様。と悪魔』

私とエスさんを交互に見ながらなんか踊ってるみたい、足良くなったみたいで安心した。

『すぐ、ボスに知らせてきますから少々お待ちくださいませ』

あんなに速く走れるなんて本当に良かった…


『どうぞどうぞ、ボスがお待ちです』

ズボンに赤い染みが出来てたけど大丈夫かな…


『ハッカ様、今、全員集合かけていますので座ってお待ちください。茶菓子はまだか』

『ボスさん、お気遣いなく』

『俺はロールケーキがいい』

『うるせいわ悪魔め。俺はハッカ様に聞いてんだよ』

『また痛い目見たいのか』『エスさん、めっ。もしあればお願いできますか』

『はい、喜んで』


一緒についてきたおじさん達はあっけに取られて固まっている。

『お嬢ちゃん、いったい何者なんだ…』


暫くすると一家の皆さんが勢揃いしていた、エスさんは出されたロールケーキをもふもふ食べている、かわいい。


『ハッカ様何か困りごとでもありやしたか』

『じつは…』


私はおじさん達のことを話した…


『そうか…お前らもハッカ様に救われたということか。ハッカ様に出会えたのは幸運だったな。お前らさえ良ければうちで働くか』


おじさん達は戸惑いながらもすごく喜んでいた。本当によかった。

ボスさんは明日の船のチケットも何とかしてくれるそうだ、今日はここで歓迎会をするから泊まっていって欲しいって言われた。

『宿代浮くじゃんラッキー』

ってエスさんが言うからお言葉に甘えることにした。


『俺は寝るから、あんまり騒ぐんじゃねーぞ』

って言って客間に1人で下がってしまった。

静かな宴は遅くまで続いたようだ。私は30分くらいで寝てしまったけど…


次の日の朝、昨日のおじさん達も私のことをハッカ様って呼んでいたのは少し気になったけど、また船旅か…





俺はボリーノ一家のボス、サブロイ。


ある日カメの奴が慌てて飛び込んできた。まだ、足が完治してないから入り口の見張りにしてるのに何やってんだ。


『馬鹿やろう。ハッカ様に救って頂いた足をしっかり直しやがれ』


『ボ、ボ、ボス。俺の足のことより。ハッカ様がハッカ様が降臨されました』

な、なんだと。降臨なされただと…ハッカ様が…

『すぐに入っていただけ。俺は部屋を片付ける。それから一家のもん全員召集だ急げ』

足から血を滲ませながら全力で部屋を出て行く。



相変わらず神々しい…隣の悪魔がいなければもっといいがハッカ様を守る番犬だと思えば我慢できるってもんだ…


一家全員揃って、ハッカ様のお声を聞く。

全員至福の時だ…


船のチケットの手配をさせて、新しい同志の歓迎会を開く。


『俺は寝るから、あんまり騒ぐんじゃねーぞ』

うるさい奴だが怖いので静かに行うとしよう。


ハッカ様が眠たそうだ。

『ハッカ様、お疲れでしたらゆっくり休んでください』

『すいません、お先に寝ますね』


新入りと一緒にハッカ様を褒め称える宴パート2は明け方まで続いた…


翌朝、新入り達がきちんとハッカ様と呼んでいるのを聞いてこいつらともうまくやっていけると確信しながらハッカ様の旅の無事をみんなで祈ったのだった。


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