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『感謝しとるよ。舞のことありがとう』

『気にすんな約束を果たしただけだ』


わらわの自室に今はエスという名か…2人きり…


懐かしいのぉ、正直今でもあの日の約束が使えるとは思わなかった。あんな昔の…






『あなた、どうしてこんなところで寝ているの』


目の前には若い男の子がうつ伏せになっている。


『ぐぅ~ぐっぐっぐぅ~ぐ~ぅぐぅ』

『お腹で返事するとはなかなか器用ね。大体わかったわ。ほれ、これでもどうぞ』


ちょっとした駄菓子を差し出す。私の手から駄菓子が消える…


『助かった。金はある食べ物を売ってくれ』

口元に食べかすを付けたままその男は言う。かわいい、素直にそう思った私は自分の店に連れて帰った。


小さな食堂、私の店。メニューを端から端まで頼む男の子。


次々と作ってはどんどん平らげていく、全メニューを制覇した後…食べすぎでお腹を壊していた。



『温かいお茶よ、どうぞ』

倒れていたときよりもげっそりした顔でお茶を啜る男の子に名を尋ねてみる。


『あなたお名前は』『先に支払いをしたい』

金額を伝え、お金を受け取る。


『おいしかった。俺はためさく。この街はなんで物を売ってくれないんだ』

『この街は特殊なのよ。初見の客には売らないでしょうね』

『じゃあなんで、食べ物を売ってくれたんだ』


う~ん、返事に困る。なんでだろう…


『私ね、店をやめようと思っていたの』

『へー、もったいないぜ。こんなに美味いのに』

『見ての通り、お客さんもいないしね』


考えている様子のためさくからの言葉を待つ…


『あんた、名前は』

『命燐』


この出会いが党首へ進む分岐点だった。


ためさくは店の入り口を飾り、宣伝をして私の店を盛り立てた。一緒に家族や兄弟姉妹を訪問してあっと言う間にすっかり打ち解け、引っ込み思案だった私には出来ない交渉なども協力してくれた。



人間物事が上手くいくと自信となり、それが実力となり。欲が出てくる…


もともと商才が私にあったのだろう。私は一気にこの街の実力者の1人になっていた。

ためさくと一緒なら私はもっともっと上へ行ける、そう思っていた…



『もう、大丈夫だろう。俺は行くわ』

ためさくは突然私に告げる。

あの日、出会ったままの姿で…

私は…


『いままでありがとう。感謝してる』

『最初に助けられたのは俺だからな。そうだ、最初の駄菓子の金払ってなかったな』

『また今度でいいよ』


『じゃあ、約束だ。駄菓子分の借りはいつか返す。それじゃお前の飯はおいしかったよ』

『ためさく。初対面みんなが笑ってたのはあんたの名前が原因だよ』




『そういうことは早く言って欲しかったぜ』

颯爽と立ち去るあの男と出会ってからの5年間を振り返りながらその夜は泣いた…






『のう、ためさく。あれから何年経ってるとおもっとるんじゃ』

『それは、こっちも同じだ』


『『化け物だな(じゃな)』』


それから会話は無く、静かに酒を酌み交わす。




『それじゃ行くわ』

『また、会えるかのぉ』

『かもな…』


そういって部屋を出て行く後ろ姿を見ながら、聞こえないように「ありがとう、ためさく」と呟いた。




う~んここにいる人が全部命燐さんの子供さん達で、その子供さんとか更にその子供さんとか、あー料理おいしい。


舞さんはフェイさんと一緒に幸せそう、邪魔しても悪いし…武義君はちょくちょく声をかけてくれるけど忙しそう…こんなときにエスさんはどこに…

『ハッカ、食べてるか』

『はいぃ』

急に後ろから声をかけられてびっくりした。更に驚くことになるとは…




今、私は船の上にいる。

エスさんは行きと同じように昼寝…う~ん。




『ハッカ、俺明日あっちに戻るけどどうする』

『ん、ん』

明日…ん…

『どうした、食べすぎか。大丈夫か』

確かに少し服がきついかなって、違うよ。

『何かあったんですか』

『おお、武義。俺は明日戻ろうかと思ってな。ハッカはどうするか聞いてたところだ』

『そうですか、残念ですが僕はやることがあるので一緒には行けません』

『だろうな』

『残念です。ハッカさんはどうされるんですか。良ければずっと居てくださっても…』

『武義、見苦しい。男は引き際も肝心』

『舞様、我々が言っても説得力がないと思いますが』


『私はエスさんについて行くって決めたのでついて行きます』

『それじゃ朝一の船で戻るか』



武義君達が見送りに着てくれた、命燐さんはさすがに来てなかったけど。桂さん、巧さんは山ほど日持ちするおやつをくれた。

『ハッカ、離れていても私達は姉妹』

舞さんに貰ったメダルを握って頷く。

『舞さんもお幸せに』




結構、頑張って積極的に行動してると思うけどな、私…

想い人はどこ吹く風…なかなか掴めないな…





あれから数日…


『桂兄さん。この資料の344枚目の内容に関する報告どの段階まで進んでいますか』

『それなら、巧の担当じゃないか』

『えーっと、1回みせて。ああーこれか先方の財務状況を探ってるところだよ』

『フェイ、すぐ確認してくれ』

『わかりました。舞様行って来ます』

『すぐ、戻って』『もちろんです』

『姉さん、仕事中ですよ』

『自分がふられたからって八つ当たりかっこ悪い』

『武義、舞姉さんの言うことは置いておいてだ。急ぎすぎていないか。ミスが出るぞ』

確かに、動いてないと落ち着かないからひたすら仕事を詰めていたが桂兄さんの言う通りだな…


『巧兄さん、おやつを用意してもらえますか。量は控えめに』

『わかってるよ、武義。控えめね、控えめ』

絶対わかってないな…


『それにしても、桂兄さんが鉱物関係なのは知っていましたが、プルトロン鉱石関係の利益が多いですね』

『武義が母上の指示で手に入れたものを扱っているからね。規格外あんなに仕入れてくれれば馬鹿でも利益が出るよ』

『運も実力』

本当だ、僕は運が良かった。あの荒野でハッカさんに、エスさん、ジーザさんと出会い。そして、桂兄さん、巧兄さん、フェイ、多くの人達が協力してくれている…


『僕は本当に運が良かった。でもこれからはもっと実力をつけていきます』


『おやつ持って来たよ~』



『巧兄さん…これが控えめですかぁ~』

頑張ろう、胸を張って。いつか母上を超えてみせる。




武義は変わった、どこがと聞かれれば説明できないが…

顔つきがいい。


『姉さん、僕の顔に何か付いていますか』

『いや、フェイはまだかなと思って』

『はいはい、すいませんね仕事を頼んで。巧兄さんおやつ追加で』


返事が聞こえないくらいの速さで部屋を出て行った…


武義の道を邪魔する者は必ず私とフェイが排除する。これが私達にできること…

もっと自分を高めなくては。



『にぎやかでよいよい。わらわもまぜるのじゃ』

『母上、仕事はどうされたのですか』

あの日以来2日に1回は顔を出すようになった母上。

母上も今まで我慢していたのだろうか…私には真の想いは理解できないが。


『仕事の話もあるぞ。アルコ種の沸きが減少傾向のようじゃ…それ美味そうじゃな、1つよこせ』

『よりによって僕から取らなくても…』

『それより減少傾向の話の続きを』


菓子の付いた指を妖しく舐めながら。

『武義はせっかちでいかん。わかったわかったそう睨むな。ワンダーの発生数の減少もじゃが規模も小さな物になっているそうじゃ。わらわ独自の情報網、しかも情報の出所はあのコルティック社…世界が荒れる…こんなときこそ商機。逃すなよ…』


そういい残して陽気に出て行った。


これも武義の天運か………



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