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『党首様、僕の話を聞いてください。お願いいたします』



『今は、聞けぬ。先ほど裁きをと言ったが実はまだ言い渡せぬのじゃ。奴を連れてまいれ』

『はいはい、仰せのままに』


『エスさん…それにフェイ…』

『母上、今回の件は全て私が画策したこと。その者は私が騙し利用した』

『いえ、全ては私が。舞様の心に付けこみ利用しただけのこと』


『実にややこしい。フェイは全て自分の差し金と言ってきかん。舞がそうだと言えばフェイを処分して舞に罰を与えれば済むところなのじゃが…今聞けば舞も自分が行ったと言う。どちらかが洗脳されている可能性も考えると…ややこしいの』



『党首様、武義に決めさせてはいかがでしょうか』

後ろから聞こえる声は桂兄様。


『桂、おぬしもメダルを奪われた被害者ではないか…よいのか、武義に一任しても』

『自分の器位は自分でわかっておりますよ。党首様』


話を整理しよう。僕は桂兄様に会いに行ったとき。姉さんが僕のメダルを奪ったと結論付けた。エスさんだけに眠り薬の入ったイカ焼きを食べさせられたのは買ってきた人物のみ、全ては協力者がいれば姉さんが黒幕になれる条件が増える。そもそも、姉さんが本気で僕の護衛をしている隙をつくのはどれだけの腕前が必要か。



洗脳、姉さんにはそんな真似はできないだろう。しかしフェイならば可能ではないか…



『舞さん』

ハッカさんが巧兄様と一緒に入ってくると姉さんに近づこうとする。

『ハッカ、やめろ。今舞に近づくな』

『なんで、エスさん。命燐さん…もういい、もう』


エスさんの忠告を無視して姉さんに近づくハッカさん。次の瞬間…


『動かないで、エス。フェイを放しなさい、ハッカの首を折られたくなかったら。早くしなさい』

姉さんを縛っていたはずのロープはハッカさんの首に…


『舞…何やっているかわかってんだろうな』

『党首様、これこそ私が舞様を洗脳していた証…』

『ごちゃごちゃうるせーんだよ黙ってろ』

嘘だ…あのフェイを縛っているとはいえ一撃で意識を奪うなんて…





フェイ…ごめんなさい…あなたを巻き込んでしまって。



『舞様、私は本気です』

『こんな戦うことしかできない年のいった女をからかうものではない』




フェイと出会ったのはまだフェイが武義くらいの年の頃、一族の裏を預かる一派の4男だったフェイ。

母上の護衛をしていると一族の裏も表も否応なしに関わることになる、始めは子供と遊ぶように稽古をつけてやった。

フェイは私にとても懐いてくれた、私と同じく寂しかったのだろう…裏家業の生き残りは表と同様実力社会…幼い頃から厳しい訓練を重ねていたはず。私達は似た者同士だったのかも知れない。


フェイは成長するにつれ私に一緒になってほしいと言うようになった。

年頃にはよくある年上女性への憧れ。そんなものだろうと思っては幼き頃にくれた熊のぬいぐるみの件を持ち出してはからかってやった。




私達の関係が変わったのは武義が産まれた頃だろう…


『私はいずれ武義の護衛につくことになる。寂しくなるな』

『舞様…』

『母上のあんな幸せそうな顔は今までみたことが無い。私も武義のように母に愛されたかった』

私の頬をスッと撫ぜ、フェイが私を包み込む。

『必ず、必ず舞様に並べる存在になってみせます』

『お前はまだ若い、これからいい話などいくらでもある』



『舞様、私は本気です』

『こんな戦うことしかできない年のいった女をからかうものではない』



嬉しかった、とても。だから、私は距離を置いた。


『そこまで言うなら、党首直属にでもなってもらおうか』

『わかりました』

その日以来フェイは私の前に姿を現すことは無くなった。



どうせなれはしない…これでいい、成りたいといってそう簡単になれるものではない…

そのうち私のことなど忘れて諦めるに違いない…これでいのだ、これで…



私は武義の護衛となった。暫くしてフェイは私の前に姿を現した。




党首直属として…





『エス、フェイから離れなさい。早く』

エスさんはぎ苦々しい顔つきで一歩一歩姉さんを刺激しないように距離を保ったまま後ずさる。


『フェイ』

姉さんが声をかけフェイを起こす。

『全ては、私の筋書き通り。舞様すいませんでした』

フェイは何かを噛み、全て自分の罪であると言い通した。


暫くして、フェイは糸が切れた人形のように床に崩れ落ちる…

ハッカさんを放し、フェイに駆け寄る姉さんは泣いていた、大声をあげて。



誰も動かない。いや、誰も動けない。


『エスさん。舞さんを止めて』

その声を聞くより早く、瞬間移動でもしたかのように姉さんの手を掴むエスさん、掴まれた姉さんの手には一本のナイフ…


『放して、私は、フェイの元にいくのよ、放して』

あの姉さんがまるで駄々をこねる子供のようにフェイを抱きかかえ、ナイフを自由にしようともがいている。

『フェイ、フェイ、フェイ。私を置いていかないで、1人にしないで…フェイ…』

『いいから落ち着け、舞。聞いちゃいねーか』


エスさんはあきれたようにそれでも姉さんの手はがっちり固定している。

ハッカさんが姉さんの背を擦るが姉さんの目はフェイから離れることは無く…




『私は…なぜ、舞様…』

ナイフを放した姉さんの手をエスさんが放す。


フェイはまだ状況がわかっていない様子であったが胸に顔をうずめて泣く姉さんを優しく抱き寄せていた。



よくわからないことも多いけど僕はただよかったと思っていた。




『おい、命燐。約束は果たしたからな』

『相変わらずお節介じゃな、おぬしは』


まったく、お節介。変わらんのぉ、相変わらずいい男よ。

こうしてまた会えたのもなにかの導きか………武義の天運か…





再会したあの日の夕食後…

『待て待て、久しぶりの再開に燃え上がる気持ちはないのか』

『あるか、そんなもん』


そんなにあれ知られるのが嫌なのかの、かわいいと思うよわらわ。

それでも、ここは聞いてもらわんとな…


『約束…わらわは覚えておるぞ…』


奴の足が止まる、油の切れた機械のような動きでわらわのほうに向きを変える…


『俺に何を望む…約束を果たそう』




『舞を、わらわの娘を助けておくれ』

『わかった』


短く返事をした奴はそのまま行ってしまった。





私はなぜ生きている…目の前には舞様がいて、泣いている。

気がつけばこの腕で抱きしめていた。状況は理解できない、全て背負って毒を飲んだはず…

でも、今はいい。後のことはどうでもいい、やっとこの手に舞様を抱くことができている、愛おしい…どれほど夢見ただろう、この時を…



『さて、2人の処遇じゃがどうするかのぉ』

党首様の言葉に舞様を抱きしめる腕に力が入る、嫌だ。やっと掴んだのに離れたくない。



党首様の目に鋭い光が宿る。

『拉致監禁、強奪、傷害、情報漏洩。そしてわらわへの反逆…』


震えている、舞様が…強く強く抱きしめる。



『党首様、もう私の話を聞いていただけますか』

『武義…申してみよ…』


武義様が私達の前へ進み出る。


『この2人の処遇を私に任せて頂きたい。幾ら必要ですか党首様』



『舞についてはお前の護衛、騒ぎの調査にかかった経費でよい。フェイに関してはわらわ直属…安くは無いぞ。この場で即金用意できるか』


武義様の表情が曇る…


『武義君、不足分は僕が用立てしよう』

『桂兄様、いいのですか』

『いいよ。前にも言っただろう。僕は君の素質を買っているとね。その前にメダルを返してもらおうかな』


舞様の顔を見て、桂様に3枚、そして武義様に1枚メダルを返す。もう、後は武義様に運命を委ねるしかない…私達をどうされるのか。あのエスとか言う男がいる以上、強行的な手段は取れない、逃げることも命を絶つことも…


『金額交渉の前に僕所有のメダル3枚、武義君受け取ってもらえるかな』


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