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『コケコッコー、ニワトリも慌てて目覚める朝が来たぞー』


安心する声…でも、昨日なかなか寝付けなかったからもう少し静かにして欲しい…


『舞、何だ、引っ張るな俺にはみんなに朝を告げ、金を数えると言う使命が』

『まだ日の出前…力が余っているなら私に付き合うといい』

『俺はニワトリに、ニワトリになるんだぁ…』


巻き割りかな、朝食用の水の移し替えかな、朝食の調理だったりして…

……

………

2人っきりじゃない…


飛び起きる、結局ジーザさんアフロ被ったままで寝たのね…気に入っているんだ。

そんなことはどうでもいい、サッサと身支度しないと、慌てると髪の毛が絡まっちゃうわ。



よし。準備完了…いざ。




なぜ2人は戦っているのか…

舞さんの攻めをトリッキーな動きでかわすエスさん、まるで奇術師のよう。

黒い風がうねり、広がり、周りを回るように、そして風と踊るように動く舞さん。



しばらくそのダンスを眺める。



『もう少し、攻めて来てもいいが』

『冗談よせよ。どこにそんな隙があるんだよ』

『冗談はこちらの台詞。まあ、いい運動になった』


『ハッカ、食事の準備手伝ってくれる』

『あ、はい。手伝います』



『俺は、あいつらを起こしてくるかな。』

手をわきわきさせながら嬉しそうに戻っていった。



舞さんはそんなエスさんの背中を見ながら『得体の知れない男…』と小さな声で呟いていた。



拠点から騒がしい声が聞こえる、武義君もジーザさんも目覚めたみたい。急いで朝ごはん用意しなきゃね。



朝食後はみんなでお金を数える…エスさんは適当に数えようとするジーザさんに金とはを厳しく語りながら手と足でお金を綺麗に積み上げ数えていく…本当に足も使うんだなって。


あたしの分は舞さんが手伝ってくれて黙々と数えが進んでいく。

ジーザさんには武義君が付いているけど…実質は武義君1人だから一番遅そう。


1人で説教しながら一番早いエスさんが規格外だってことだけが分かったそんな午前。



『さーて、稼ぎますか』

『はい』『はいはい』


『ジーザ気合が足りないんじゃないか。今日一日で狩りつくす気で行くぞ』

『エス、それは物理的に無理でしょう。そこそこ大きめの奴をぽんぽんぽんって感じでいいじゃない』

『大き目のがいる位置は大体分かりますから案内しますね』

『ハッカ、足は大丈夫か。移動はゆっくりでいいからな』

『大丈夫ですよ。舞さんにテーピングもしてもらっていますし』


やさしさに甘えては駄目、頑張らないと。





『ここのワンダーもそろそろ終わりらしいな』

『発見されてからそこまで時間経ってないんだろう。ここ』

『お前知らないのかかわいい女の子と天使と悪魔の話だよ』

『なんだそりゃ』

『嵐のように駆け抜けて通った後にはアルコ種が一匹も残らないって…姿を見たら道を空けないと悪魔に呪い殺されるらしいぞ』

『そんな馬鹿な…』





『3日もかかるとはな…』

『3日しかかかってないよエス』

『かなり疲れました…』


3人で狩り出してから3日、私が道先案内で先行、ジーザさんが見つけ次第瞬殺、縦横無尽にエスさんが動き回り回収。


ワンダー内を駆け抜けた結果。そろそろこのワンダーは終わるとエスさんが判断した。今はみんなで武義君たちの拠点を片付けているところ。


それぞれに手を動かしながら自然とこれからの話になっていく…


『ジーザさんは本当に一緒に行かないの』

『ハッカちゃん、もう決めたことなんだよ。まあ、エスが僕が居ないと寂しいって言うなら考えなくも無い』

『はいはい、またどこかで。げんきでなぁ』

『この調子だしね。縁があればまた会えるよ』


私の頭を優しく撫でる綺麗な手の感触を覚えておこう。お互いに微笑み合う。


『ジーザ、手の動かしどころが間違ってるぞ。キリキリはたらけぇい』

『別れを惜しむ美しい二人、こんな画になる光景を破壊しようだなんて無粋だな』

『サボる口実に他人を巻き込むのは感心せんな。舞を見ろ素晴らしい働きだぞ』


両手に柱のパーツを抱え込みキビキビ動いている、その動きの軽やかさから軽い物を持っているような錯覚を覚える。


『男共、女の私より軽い物しか持てないのでは』

『姉さん…基準が…』


『聞き捨てならないね。僕は男だよ、舐めてもらっては困る。いざ』

あ、ジーザさんがつぶれた…武義君が部品を退けている…


『まあ、これくらいはいけるわ』

エスさんは舞さんと同じくらいの荷物を持って作業を続けた、舞さんとエスさん2人の張り合いにより片付けは1時間程度で終わった。



短い間だったけどいままであったものが綺麗になくなることは物悲しい気持ちを生まれさせる。


『では、行くよ。みんな元気で入れるといいね。バイバイ』


ジーザさんはエスさんと拳を付き合わせ歩き出して行った…こちらを一度も振り返らずに右手を軽く振りながら…



『最後までかっこつけてたなあいつ』

エスさんは軽くあきれた表情で言葉を漏らした。



『さて、武義これからの話だ』

『ですから、皆さんを僕の実家に、痛っ』


舞さんが武義君の頭にチョップする。

『護衛料』

頭を擦りながらハッとする武義君と腕を組んで大きく頷いているエスさん。



『俺と武義の間柄だからな。1日200ジル、3食付でどうだ』

『安い…何か裏はないでしょうね…』

『疑うのは大事だが、正面きって相手に言うのはどうかと思うぞ。裏はないから安心しろ、考えてみろ武義よ、舞がいる。護衛としてこんな楽なことはないだろう、里帰りするだけでわざわざ危険な場所に行こうというでもない、十分すぎだろう。なあハッカ』

『確かに、舞さんがいればそんなに危ないことはないと思いますけど…』

『ハッカさんも同じ条件でいいですか護衛料』

『え、私はいらないよ。友達の家に遊びに行くだけだから』



『私も女。守られたい…なんちゃって』



『姉さん…』

舞さんは自分の発言が恥ずかしくなったのか無言で私達3人をぐいぐい押して進んでいく。


『押すな押すな。とりあえずどこを目指すんだ』

『港町ジューンポート。そこから船に乗ります』


船旅なんて初めて、どんな感じなんだろう。その時はこれから何が起こるかなんて知る由もなかった…





『おそらく数日の内にここからターゲットは船に乗る。手順は事前に話した通りだ合図があるまで待機するように』


港町の倉庫の一角から夜の闇に紛れて数人の人影が音もなく出て行く。

天窓から入る月明かりを受けながら1人残った影は静かにその姿を消した。




港町ジューンポート

南の大陸との貿易拠点の1つ、中規模の港町である。港町らしい倉庫街と宿屋兼食事処が多くある。人の出入りの多い町。

護衛目的の腕に覚えのある人間が多く、このような町では小さな揉め事が多いのも例外のないこと。




旅は順調、危ないこともなく。盗賊や強盗などに遭遇することもない、特に困ることも、面白いこともない旅の大半なんてそんなもの。

姉さんと2人で商売して回っている時だって町にいて商売しているときの方が揉め事に遭遇する機会が多いくらいで町から町への移動中に襲われたのは年間で1件ぐらいか。

今は、姉さんにエスさん、ハッカさん。僕だってその辺のゴロツキに後れを取るような腕前じゃない。


旅は問題なく、順調だ。


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