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とにかく、僕は落ち込んでいるハッカさんにジーザさんから聞いた話ととりあえずはエスさんに刺激を与えないようにしようと言う話を伝えた。

ハッカさんは僕の話を上の空で聞いているのかいないのか分からないくらいにただ小さな声で『はい』と了承の返事をした…


空は徐々に赤みが引いていく。3人会話もないままエスさんの戻りを待つ…空気が重い、ハッカさんは人形のように表情を無くし、それを心配そうに見つめるジーザさん。


僕なんかにこの空気をどうにかできるわけもなく、ただ黙るのみ…

無力な自分を恥ずかしいと思う反面、今僕にできることは無い、しょうがないと開き直る自分が頭の中で戦うがこちらも決着がつきそうにない…時間がとても長く、長く感じる。



日が半分沈むころ、あの人は帰ってきた。



『よお、ジーザ待たせたか。換金してくるまでちょっと待っててくれ』

ハッカさんにも、僕にも目もくれず。

コルティックのキャラバンに入っていくエスさん…本当に記憶が…


『見ての通りさ…』

『はい』


僕は返事すらできない、ワンダー内で1人でこれを感じたハッカさんのショックは想像もできない。胸が苦しい、こんな再会…それでも、しっかりしなくては。無事を喜びたい、でも、大丈夫、きっときっと思い出すそう信じるしかない…



『なかなか、いい稼ぎになったよ。ほら、ジーザ半分』

半分、エスさんが直接狩りをしていないジーザさんに稼ぎを半分だって…


『お、そこにいるのはワンダー内にいた子じゃないか。足は大丈夫か』



『はい、大丈夫です』

僕らに表情が見えないように俯き返事を返すハッカさんは肩を震わせている。


『エス、この子達は僕らの仲間だよ』

真剣な表情で事実を伝えるジーザさんは正しく神父のような清らかな声で告げた。



呆然と立ち尽くすエスさんは暫くしてハッカさんを抱きしめる。

『心配をかけた』

頭を撫で、声を掛ける。


僕の方にもゆっくり近づきギュッと抱きしめる。耳元で短く囁かれた言葉に目を見開く。

『わかりました』小さく返事を返すと、エスさんは僕から離れた。



『ジーザ、こんな嬉しいことはない』

『そうだね、こうしてまた会えたことは、このことだけは神に感謝してもいいね』

『俺も神は嫌いだが、感謝するとしよう』

『武義達が店をしながら拠点を持っているからお邪魔しよう』


『いいのか武義』

『エスさん、僕ら仲間ですよ。姉さんも喜びます』

『すまない、お邪魔するよ』




日が沈んで暫くして武義達は彼を連れて戻ってきた。

ハッカも武義も元気が無い…そう簡単に失った記憶は戻らないか…

夕飯は豪勢にしよう、何はともあれ無事であることに変わりない。死んでいなかったならいいではないか。


会話が無く、テント内は空気が悪い…



『エス、ここのワンダーはどうだったんだい』

『広さもそこまで無いし、強行すれば奥まで日帰りでもいけそうだな。俺たちで狩りつくせばすぐ獲物が無くなりそうだ』



『ハッカちゃんはどんな感じで潜ってるんだい』

『中央から少し奥辺りを狩場にして日帰りです…』



『武義、エスがこの辺りの相場を気にしているんだけどどうかな』

『はい、ジーザさんこういった場所では良くある1,3倍辺りが相場になっています』



『武義はどれくらいで売り出しているんだ』

『1,1倍、ほぼ町売り価格ですね。人を集めて情報を集めたかったので』




会話が続いていない…会話が苦手な私が言うのもなんだがこれはいけない…

ハッカと武義は落ち込んでいるのか俯き加減でいるし、エスさんはどう接していいか戸惑っている感じ。ジーザさんにいたっては何とかしようと話を振ったりするが会話が続かないことでだいぶ焦っているのかあの飄々とした男が額に汗かいて必死になんとかしようとしている…珍しいものが見えた。



『みんな、久しぶりに再会できたのだ。こうも暗くては私の作った料理を出すわけには行かないが』

『そうだよ、せっかくあのときの5人が揃ったんだこれは祝いの席だよ』



『そうだろうか』



『そうだよ、ここは祝いの席だよ。何言っているんだいエス』




場の空気は重さをますます増し、さっきはああ言ったが手持ち無沙汰になった私はとにかく料理を並べることにした。冷めなければいいけど…





雲行きどころか、暗い、暗すぎる。舞は当てにならない、マイペースに料理の準備始めてしまっているし。


エスもハッカちゃんも武義もテンション低すぎだろう、こんなときに若い力で良かった良かったわーい的な雰囲気を出せないかなぁ…



『みんなでエスの無事を祝う、それの何がいけないのさ』




誰も意見を発しない…




『こんなときに、伝説のエンターティナーボブがいれば…』

エスがおもむろに黒いアフロをかぶりだす…この空気に黒いアフロは異様、悪魔の儀式のように…

中央のアフロエスが胡坐をかいて座り、その両端にうなだれるハッカちゃんと武義は邪心アフロ像に深い祈りを捧げているようで…


悪魔崇拝の絵が目の前に出来ていた。


舞はわれ関せずに取り皿を配っている…この女の神経もおかしい…




『みんな、気をしっかり持て。いったいどうしたんだい。武義、ハッカちゃん』




2人はピクリとも動かない…まさか、本当に得体の知れない何かが…




『ジーザ、この宴は断罪の宴…このアフロ神が裁きを下す…』


わけわからない、そもそもアフロ神ってなんだい。


『もじゃもじゃ、かーっ』

変な掛け声を叫びながらエスは僕に飛び掛りアフロを被せた…






時間は昼間に巻き戻る…



ああ…行ってしまった…

私の心は絶望に染まり、ワンダー内であることも忘れ地面に突っ伏した…



『自殺志願にしては若すぎるだろう。話しくらい聞こうか』


顔を上げると、私はよく知っている顔がこちらを見ている…そして目が合う…

『うがぁぁ、痛い、なんだ頭が割れそうだ。ああぁぁ』

エスさんが苦しんでいる、両手で頭を押さえて地面を転がる。


何も考えていなかった、気がついたらエスさんの頭を抱きかかえていた…



『大丈夫です…大丈夫ですから…エスさん…』





『ああ、ハッカ、ハッカなのか…』



『はい…ハッカです…』




私は今までエスさんを探して武義君と舞さんの3人で荒野を探していたこと、ジーザさんは別行動で探していたことを話した…

エスさんも今までどうしていたか、ジーザさんと会ってここに来る経緯とかを教えてくれた。


『そうか、俺のことは心配しなくてよかったのに。それにしても本当に一人前のカネホリになったんだな』


『まだまだですよ。足痛めちゃったし…』

『完璧にはいかないさ、人間だもの。生きて稼ぎにできれば一人前だ』


ちょっと乱暴に私の頭を撫でる。子ども扱いにはちょっとムッとするけど、思い出してくれたから許しちゃう。


『さーって。ジーザにはたっぷりお礼をしないとな』


エスさんの目が禍々しい光を放つ…

愛してる。とか聞き捨てならない部分もあるけど…きっと心配していたのは同じ…



『悪気はなかったと思うんです…』


エスさんの目の光は消え、ばつが悪そうに鼻の頭を掻きだした。


『確かに、みんなに心配かけた俺に一番の原因がある…か…』

『みんな、心配したんです…』

言ってしまった…

居た堪れないのか顔を背け頭をがりがり掻きだす。


『ごめんなさい、そういうつもりじゃ…』

『いや、いいんだ俺も無事に脱出できる気でいた結果がこの様だからな。ジーザに悪気にないのはわかる…悪ふざけは過ぎたがな』


また、目に光が戻る。


『この俺が働かない奴に稼ぎ半分なんてふざけたことを言わせた罪は裁かねばならない。絶対にだ』


やっぱり、お金が大事なのね。私達より…


『じゃあ、こういうのはどうです…』

エスさんに耳打ちする。

『いいアイデアだけれどぬるい、ぬるすぎる。耳かして…』



『そこまでやるんですか…』

『やる、決めた。ハッカ、頼んだぞ』

返事をする前にお姫様抱っこされた私は嬉しそうにこれからの作戦を話すエスさんの顔を見ながら、上手くできるか不安に思っていた。


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