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キャラバン…それは移動する店、簡単に言えばそうなるだろう。

なぜ、移動する必要があるのか。答えは子供でもわかる。


アルコ種の湧きは規模により様々だが大体二ヶ月から六ヶ月。当然店を建ててる時間はなく、湧きが終わればその店は要らなくなる…割に合わない。


そこで、キャラバンの出番となる。ソニミオの活用により移動の障害になるような重い部品を最小限に減らし移動する。目的地に着いたところで模型のように組み立て営業を始める。

キャラバンの大きさはそのままどんな規模で商売をしているか。どれだけの金を持っているかに繋がる。

最大級のキャラバンはコルティック社、これを超える物はないだろう。自社製品のソニミオを使い素早い移動を可能にし、荒野中の町にワンダー発見時の報奨金の提示することで稼ぎの最前線へ一番乗りする。

プルトロン鉱石の買取、武器販売のコルティック社は一時的にその町を支配しているといっても言い過ぎではない。



移動するキャラバンにはもう1つ利点がある…



それは、逃げる為…




『思ったより時間かかったな、結構賑わってるな稼げそうだぜ』

町まであと少しのところで全体を見渡せるような小高い丘から眺める。

小さなオアシスを囲むように町が作られ、町の北側にはライトグリーンとシルバーの大きなキャラバンが見える。街の南側には大小様々なキャラバンが展開されている。


『コルティックのキャラバンが北側ってことはワンダーは北側…』


コルティック社のキャラバンは必ずワンダーに近い場所に展開する。カネホリが稼いだ鉱石を持って町に戻る際に買取が行えるようにそして、狩りに行くカネホリに武器や弾薬を売るために…稼ぐよねー


北側を見てみる。目視できる範囲に大き目の穴が開いている。

『ありゃ、結構近いな。規模もそこそこ…3ヶ月くらいは稼げるかな』


口の両側を引き上げ笑う…嬉しいね…


位置関係を確認した俺はしばらくの拠点になるところを決めないとなと思いながら町の入り口を目指して歩きだす。




『ジョンさん、なかなか協力してくれませんよ。どうしましょう』

『まったく、これだからカネホリは…もともと全員は無理だと思ってたんだ協力してくれる奴だけでもいいから続けるぞ。あと名前で呼ぶな保安官といえ』

『はい、保安官。他の奴にも伝えてきます』

『頼んだぞ』


こんなことも約一週間か、時間が経つのは早いのか遅いのか。さすがに疲れが出る頃だな…

町長の方もキャラバンの管理と場所代関係の書類処理に追われているって話だから俺も頑張らないと、問題が起きてからではより大変だからな。


今俺が取り組んでいることはカネホリ達のリストの作成だ。声をかけ名前を聞く、それだけでも相手は堂々と名乗れる人物なのか、そうでないのか。問題を起こそうとしたときも顔と名前が知られていると思えばそこまで無茶なことはしないと書かれた本を読んだことがある…


現実はなかなか快く協力して名乗ってくれるカネホリは少ない。


本部に応援の要請もしたが手一杯だから、助手を雇って対応するようにと言われ。町の仕事の少ない若い連中を一時的に雇ってみたが…

あいつらが小さい時から知っているからか保安官の俺を「ジョンおじさん」扱いだしな。


それでも新しく稼ぎに来るカネホリの数も徐々に落ち着いてきた、今のところ大きな揉め事もない。裏を返せば小さなことはあるってことだが…あいつらも頑張ってるってことだろう。


『あんた、この町の保安官かい』


日中はクソ暑いこの荒野で身体のほとんどを隠すような大きなマント…随分と若いな、若干幼さを残す顔立ち…怪しいな。


『そうだが、何か用か』

『さっき若い兄ちゃんに、カネホリなら保安官に挨拶して来いって言われたからな』

『随分若いのにお前カネホリか』

『そういうのは聞き飽きてるんだ、俺も聞きたいことがあったからなついでだよついで』


態度がでかいな、こんな若さでカネホリやってるってことは色々訳ありだろうな…


『そうか、しばらくこの町に滞在するなら写真と名前を聞いておきたいんだが…』

『保安官も大変だな。こんな顔でよければ写真とってもいいぜ』

『協力感謝する』


『名前はエス。あんたの要件は終わったな。次は俺の番だ、安い宿を探している。安ければ安いだけいい、心当たりないか』


ピースサインをしながら写真に写り、屈託のない笑顔で安いを強調しながら俺に話しかけるエス。


『安い宿か…すでにかなりの数のカネホリがこの町に入ってきているからな、手頃な宿はもう一杯かもしれないな。ちょっと待ってろ。おい、ナヒタ。こいつをボレロ爺のところに案内してやれ』

『えーボレロ爺のところですか、なんで俺』

『案内だけでいいから頼んだぞ』


『なんか凄い嫌がってるけど大丈夫なのかそのボレロ爺って奴』

『安い宿を探しているんだろう。見た目はぼろだがいい宿だと思うぞ。ボレロ爺が泊めてくれればな』

『宿屋だろ、金払う客はこっちだろう。行ってみればわかるから行ってみるわ。そこの奴案内頼むぜ』


ボレロ爺の眼鏡にかなうといいけどな…




『俺はこの辺で、その先の町外れの建物だから』

『ありがとうな、おかげで助かったぜ』

『ボレロ爺は厳しい人だから気をつけろよ。じゃあな』


走り去る兄ちゃんを手を振りながら見送る。


さて、行ってみますか…希望としては朝食付きで50ジル以下…難しいかな。

そんなことを考えながら宿へ歩いて行く。


『俺は客だぞ、ちくしょう。二度と来ないからな』

『結構、二度と来ないでいただきたい』

『お爺ちゃん。お客さんすいません』

『ハッカ。謝る必要はない』


ガラの悪そうな、その上頭も悪そうな男とすれ違う…


大丈夫かな…俺…


あれがボレロ爺さんかな。スッと宿の中に戻っていってしまう。ハッカと呼ばれていた少女は俺とすれ違った男の背中を見ながら頭を下げていた。


『ごめんね、宿を探しているんだけどお幾ら。空きはありそうだけど…』

俺も少女の隣でさっきの男の背中をちらりと見る。苦笑いの少女と顔を見合わせとりあえず笑う。


『とりあえず中へどうぞ』

外観はお世辞にも新しいとは言えない小さな宿、しかし手入れはしっかりされていて管理が行き届いている様子だ。少女について中に入る。


『いらっしゃいませ』

白髪に白いひげ、大きなお屋敷の執事のような風格、着ている物も暑い荒野では珍しいタイトな物。


『安い宿を探している。保安官に聞いてきてんだがお幾ら』

『失礼ですが、お客様はカネホリですかな』

『ああ、そうだ。今日この町に着いたところだが、それが何か』

『ジョンの紹介か…』


ボレロさんは少し考えているようだ…

『お爺ちゃん、お客さんに色々聞くのは失礼よ』

『失礼、私はボレロ。そこにいるのは孫のハッカといいます』

『俺はエス』

『エスさん、申し訳ないが私はカネホリが好きではない。お引取り願いたい』

『もう、お爺ちゃん』

『お前は黙っていなさい。この宿は私の宿。口出し無用』


『わかったよ、ボレロさん縁が無かったと思って諦めるとするよ。参考までに宿代だけでも教えてもらえないか』

『食事無し、一泊45ジルでやっている。参考になったかね』

『教えてくれてありがとうな。それじゃ』



俺は2人の宿を後にする。

食事無し、一泊45ジルか…いいな…なかなか無いな…45ジルか…


しょうがない、ほか探すしかないか…しかし45ジル…


俺の宿探しが今、始まった。


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