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中にはシンプルな木の机と椅子が2つ向かい合わせで置かれている、それ以外には照明しかない。

手前の椅子に座って待つ。



『待たせたね。たんと召し上がれ』


目の前には俺の頭がすっぽり入るぐらいの器に刺激的な香りを漂わせている物を置く。

『で、前回からだと約1年になるよ時間がかかるがいいかい』

『ワンダーに関する情報だけがほしい』

『じゃあ、話題は1つだけだね。まあ、食べな』


おし、気合を体中に満たしていく。俺はやれる、俺はやれる、俺はやれる…

スプーンをつき立て一気にかき込む…意識が飛びそうだ。

おそらくこれはカレーだろう、カレーを意識が飛びそうなほど不味く作るのはある意味才能だ、一度おばちゃんに味の感想を言おうとして殴られた…


おばちゃん曰く『私の中で完成しているものに感想はいらない。黙って食べればいいんだよ』だそうだ。


『他の連中にも見せてやりたくなるいい食べっぷりだね』


口はいっぱいなので表情とジェスチャーで返事をする。


『そう急かさないでもちゃんと話すから、もう少しその食べっぷりを堪能させておくれよ』



食べきった…俺は食べきった。

『では、本題に入ろうか。ワンダーの話題として大きい物は規格外の鉱石がほいほい見つかって、氾濫を食い止めたカネホリ達の話。これ以外には無いね』

『詳細はわかっているのか』



『それがね、氾濫の前兆でコルティック社以外のキャラバンはさっさと逃げ出してしまったそうだよ。コルティックは情報を制限しているみたいだし、その町の人間も多くは語らないそうだ』


『その町の名前は…』



『チックスター。そこそこの規模の宿場町だね。行ってみるのかい』

『いや、多くの人が語らないなら、騒ぎを起こす必要も無い。金になった稼ぎ場が多分そこだろうってことがわかっただけで十分さ。御代は』

『あんたの場合は気持ちでいいよ、出口にいつものように置いておいておくれ』


『あいよ、いつもありがと。おばちゃん』

『いつでもおいで』




チックスター………か…

いまいち、ぴんとこない。いつものより大目の情報料を出口に置いた。

情報は貴重、その価値は様々な条件によって目まぐるしく変わってしまうがそれでも今回の情報は大金を払うに見合った内容だと思った。



チックスター、俺はその町で何をしていたんだろう…それを知るのは俺の金だけか…




旦那は上手い事抱きこんだ、餌は上等、あとは奴に喰いつかせるだけ。


旦那と別れたその足でバースのところに向かう、奴相手に下手な小細工は命を失う、正面から行って勝負しなくては…おっと、手が震えやがる。



『ガメル、なんのようだ。ボスは忙しい身だからな』

護衛の豚野郎め、雑魚のくせに一々偉そうで腹が立つぜ。


『申し訳ありません。黄金十二宮の件でとお伝えいただければ…』

豚野郎にそっと金を渡しながら言う。


『わかってるじゃねえか。急いでボスに話をしてやるから待ってろ』


お前みたいのが走ったら地面が揺れるだろうが、このボケが。

『よろしくお願いいたします』


暫くすると大きな足音が戻ってくる。

『おい、ボスがすぐ上がって来いとおっしゃってる。早く上がれ』

狭い廊下なんだから外へ出ろよこの豚が。

『では、失礼いたします』


バースの部屋までは階段を2つ上がる。1階にある用心棒の部屋の前を通り2階へ、そこから更に奥へ進み3階への階段を上がればバース専用のフロアー、俺は慣れた様子で3階まで進む。


『ガメル、さっきの話本当だろうな。ガセなら容赦しない』

ベッドの上で慌てて服を着ている女なんか初めからいないかのように全裸で話しかけてくるバース。


『バースさん、とにかく服を着ていただければと思いますが』

『このフロアーは俺の私室だから気にすんな』


気にするなって、ぶらぶらさせてたら気になるだろうが。

階段上がれば仕切りも無く広い空間にベッドや机が無造作に置かれ、周囲の壁にはバースのコレクションの古い武器類が所狭しと飾られている。

机には長い金髪の美しい女性。そして先ほど慌てて服を着た女性がバースにガウンを持ってくる。

『女性二人を相手とは相変わらず豪快でいらっしゃる、バースさんは』


大口を開けて笑い出すバース。なにか変なことを言ったか…

『やっぱり、間違えるよな。俺も始めは随分と疑ったぜ』


『僕は男だから、間違えないようにね。性別なんてたいした意味をもたないけどね』

こちらをチラッと見てそれだけ言うと興味ない様子で馬鹿でかい銃を弄っている。



『私はガメルと申します。以後お見知りおきを』

『名乗りは結構、君は僕の興味を引かないからね』

何だこいつは、下手に出てればいい気になりやがって…


『ガメル、こう見えて凄腕だ、間違っても相手にしないほうが身のためだ。そんなことより早く話せ』


こんな優男が、凄腕ね…まあ、いい、ここからが本題だ。


『細かいことはいい、条件を提示しろ』


おいおい、もう少し焦らしたかったのにいきなり切り込みやがって。

『ある程度お察しでは、私がバースさんに話を持ちかける理由はそう多くないでしょう』

『ガメル、そんなことはわかっているんだ。その上で聞いている…条件を提示しろ』


こっちの話を聞く気が無いな、話しを進めるしかないか。

『黄金十二宮乙女座の持ち主を見つけました。本人から現物を見せてもらいましたので間違いないと思います』

『どこのどいつだ』

『まだ言えません』



『ふん、続けろ』

『本人に見せるだけの約束を取り付けてあります。ここまでの情報でコイン一枚頂きたかったのですが…』

バースは無言で立ち上がると壁に埋め込まれた小さな引き出しから何かを取り出しこちらに投げてよこした。


『よいのですか』

『続けろ』

真剣な表情で続きを急かすバース、完全に喰いついた…こっちのペースだ。まずは一枚…



『私の裏の客です。いつにしますか、その調整で貴方のコイン残り二枚頂ければと思います』




一枚のコインをこちらに投げてよこす。

『一枚ですか…』

『なるだけ早く連れて来い、残りは本物とこの目で確認してからだ』

『私は紹介するだけですよ』

『わかっている。先の交渉は俺がする』


これで三枚手に入ったも同然。


『では、なるべく急ぎます』

『下には言っておくから、何時でも構わない入って来い』

だいぶ興奮しているな、肌がうっすら赤みを帯びている、コレクターとしての気持ちはよくわかる、あと一枚、待っててくれよ…


『今日はこれで失礼します』

階段を降りる背中から下に指示を出すバースの声が響く。旦那、無事でいれるかな…上客だから出来れば無事でいてほしいけど…あの様子じゃ無理かもしれねぇな。




つまらないね、本当につまらない。面白いことはないかな。


あの面白い時間を失ってから暫くは彼の行方を捜した、でもね金が有ってもどうしようもないことは結構多い、本当に知りたいことを調べるにも伝手がないと金だけあっても仕方がない。


僕はすぐに行き詰った、解ったのは普通にやっては分からないということだけ…


そして僕はここに居る、この荒野で一番大きな街、このアクアサークルに。



『バース、収集癖もいいけど、それくらいの熱意で僕の要件もお願いしたいね』

『うちは情報専門じゃねーんだ、出来る限り手下を使って調べさせている。まあ、待て。この件が片付いたらもっと盛大に人を使ってやるから』


『まあ、いいよ。せめて君を殺しに来る人間が来れば楽しめるかもしれないのにね』

『用心棒が殺し屋を願うなんておかしいだろうが』

『僕にとっては殺し屋より退屈の方が恐ろしいよ』


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