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荒野の奇跡と呼ばれた町がある。


荒れ果て、乾いた荒野の中心で豊富な水資源を持つ大都市、その名は…アクアサークル。


この町に着いてもう2ヵ月が経つ、この大都市でいるかどうかもわからない人を探す…


それは、荒野で一粒の砂金を探すに等しい行為だった…




『まだ戻ってないのでしょうか』

『手がかりが無い状態だから、焦ってはいけない』

『探しているのは動く人ですから、焦らずにいきましょう』


2人は弱気になる私を励ましてくれる…このままでいいのだろうか…

いつまでも頼ってしまって…



「自身の幸せを追って欲しい」あの人の言葉があの日からずっと頭から離れない。


エスさんが望まないことをしている、それでも逢いたい…



『ハッカさん、そろそろお昼でも食べましょう。腹が減ってはなんとやらですよ』

『私もそろそろご飯が食べたいと思っていた』


本当に申し訳ない…



『今日のお店は当たりだといいね』

私達はエスさんが好みそうな静かで安くて旨い店を探して大通りから少し中に入った店を選んでは聞き込みを兼ねて食事をしていた。


古い煉瓦作りの店からお肉の焼けるいい臭いがする…きゅ~

悩んでいてもお腹は減ることが私のお腹で証明されてしまった…


『ふふっ、今日はこの店にしましょう』

『はい…』

『この香りだけでも味は期待できますね。おいしそうです』


店内は昼間だけれど少し薄暗い、お客さんは私達の他に男の人が1人だけ。


『やっぱり旦那が薦める店は味がいい。おっちゃんが口下手じゃなきゃもっと流行るのにな』


席に座ると、筋肉が素晴しい盛り上がりを見せ付けるスキンヘッドのおじさんが近づいてきた。


『メニュー』

一言そう言ってメニューを差し出すと厨房へ戻っていった…


『なかなか、強烈な店主さんでしたね』

『客商売向きとは言えない』


メニューもシンプルに2種類…ハンバーグ定食と大盛りハンバーグ定食。

ドリンクメニューも無い。


『メニュー、いるのかな』

『迷わなくていいのはいいこと。店主』


ゆっくりと強者の雰囲気を纏わして近づく店主に引け劣らない堂々とした態度で迎え撃つ舞さん…ここはご飯を食べるところではなかったかと勘違いしそう…


『大盛り、3つ』

『ん』


ゆっくり店主は厨房へ下がっていく。

『なかなか、腕も立つようだ』

『姉さん…なんで大盛り3つにしたんですか』

『弱い部分を見せたくなかった。2人が食べきれない分は私が食べる』


時々、舞さんは変なスイッチが入る。結構食べるのにプロポーションはバッチリ、羨ましい…



『じゃあ、御代置いていくぜ。又来る』

そう言って始めからいた男の人は帰って行った。



暫くして、鉄板から音と油が飛ぶ、熱そうな鉄板を3つも器用に持って店主は私達の前に並べる。

『ライスはお代わり無料』

ニコッと笑い、すぐ無表情になると奥へ戻っていった。



『美味しい。この付け合せの野菜炒めが超絶…この内容で13ジル、素晴しい』


美しい食べ方なのに、スピードが…早送りの食事風景のようだ。

『万が一姉さんに食べられては大変です。いただきましょう』

『そうね、あのペースならありえるわ』


私達が三分の一ほど食べている頃には静かに、ライスのお代わりを手に持って私達を見守る舞さんがいた。


最終的に武義君と私は全部食べられず、舞さんは嬉しそうに食べてしまった。

食器を下げに来た店主に料金を渡し。


『あの、このお店に私と同じくらいの年の男の子で、大きなマントを着ている人を見たことはないでしょうか…』

店主は首をかしげ、食器と料金を持って下がってしまった。


『次、頑張りましょう』

『そうね、美味しかったし』

『そう、ここはいい店。次はデザートを食べに行きましょう』


舞さんはまだ食べる気らしい…




ハッカ達が去って暫くして。

店主は手に一枚の写真を持って店内に姿を現す…


誰も居ないのを確認するとまた奥へ戻っていった…




賑やかな大通り、オープンカフェで舞さんは色取りの美しいパフェを食べている。

武義君は砂糖とミルクがたっぷりのコーヒー、私はレモン水。


人の流れを見ながら、少し前から考えていたことを2人に告げる。



『2人とも聞いてほしいの。この街を出ようと思う』


『いいのですか、今のところ手がかりはこの街だけ…』

『それはわかってる。武義君、でも…いつまでも付き合わせるわけにもいかない』

『姉さん、食べてばかりいないで何とか言ったらどうです』

舞さんに詰め寄るように席を立つ。


『武義、男はドッシリ構える。落ち着きなさい』

武義君は舞さんを睨みつける…そんな視線は関係ないと表情を変えない舞さん。


『ハッカさんがそう言うのならこの街を出ましょう。私達だっていつまでもフラフラしてはいられない』

『姉さん。自分が何を言っているのか』

『黙りなさい。何か言えといったり、何を言っているのかと言ったり。何を焦っているのです』


武義君は黙って席に座る。


『ハッカさん、この街を出るとしても私達と一緒に行きましょう。きっとエスさんはお金の匂いのするところに現れるのではないかと思うの。私達商人もお金の匂いを嗅ぎ分ける。いずれ会えるのではないかしら』


私と武義君は頭を鈍器で殴られたような衝撃に襲われた…


再度パフェを食べ始める舞さん、私と顔を見合わせる武義君。次の日私達はアクアサークルを出て行った。





あの店に1人で行くのももう何回目かわからないくらいには通ったな。そういや旦那はどこ行ったのやら…半年に1回くらいは戻ってくるのにな。


食べ過ぎた腹をさすり、我が城「なんでも揃う店、ガメル本店」へ帰ってきた。

うちの店は大手ではないが中規模ではかなりいい線いっていると思う、資金力の差だがね…



『社長、お客様がWをご希望なんですが』

『新規か』

『いえ、既にお部屋にお通ししてあります』

『ちょっと着替える、失礼の無いようにお茶と茶菓子を出しなおしておくように』

『了解しました』


店奥の社長室で黒いスーツに着替える、着替える意味はあまり無い、俺の気分の問題だ。

Wを希望する客は少ないし、大体が知り合いで新規の客はほぼいない。俺が認められない客との取り引きは自分の首を絞めるからだ。

姿見に自分を映しその見た目を確かめる、上々…



足早に客の待つ地下の応接室へ。

『お待たせして申し訳ありません、お客様』


『このケーキはなかなか美味しいな、ガメル。相変わらず儲けてるみたいだな』

『ちょうど今日貴方のことを考えていたところです』



『俺に対してその畏まった物言いは不要だ。こんないいケーキ出すならその分安くしろよ』

『旦那は相変わらずの様子。安心しやしたぜ。ケーキはあくまでサービス、ビジネスとは別でさ。ご存知でしょう、旦那』




『そうだったか。俺もいろいろあった…みたいでな。少し気持ち悪いのさ。頭の中がな』


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