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エス…


君にはもう逢えないのかい…



あのでかい亀を消し去った後には下層の先の奴とそう変わらない鉱石が出た、どうでもいい。コルティックがうるさかったから、皆に了承を取って大小規格外すべて拾わせて換金した物を等分で分けた。


駆け出し達は喜んで僕にお礼を言いにきた、どうでもいい。

適当にあしらっておいた…武義がなんか上手くやってくれている。


ハッカちゃんは気を失って目を覚まさないらしい、ちょっと心配だね…


みんなでワンダー跡を探したりもした、もともと不思議空間のワンダーだ、何も見つからなかった。


あれから3日、ハッカちゃんが目を覚ました。

泣きながらエスのことを聞いてきた。正直面倒くさかった、僕に聞かれても僕も聞きたい…

でも、ハッカちゃんの気持ちもわかるから何も言わなかったよ。言えることもないしね。


もう、僕がこの町にいる意味もない。


ボブの店に顔を出す。ちょうどいい、武義もいるじゃないか。

『武義、ボブ。僕はこの町を出るよ。ハッカちゃんとボレロによろしく言っておいてくれ』



『エスさんのことはもういいのですか』

『よくないよ。でも、ここにいてもしょうがない。じっとしているのは性に会わないしね』

『皆で稼いだあの稼ぎはどうします』


『エスが武義に任せたんだろう、エスが受け取っていない物を僕が受け取ると思うのかい』

『そうですね。今ので何となくジーザ様の考えがわかったような気がします』



『生意気なことを言うようになったね、武義…生意気ついでに様付けはもういらない。僕らはチームだろう』

『ありがとうございます。ジーザさん』『ん、それでいいよ』



『ボブ、世話になったね。お礼にこれをやろう』

純金で出来た十字架をアフロに挿してやる。


『神の祝福がありますように、なんてね…じゃあね』

ボブは少し泣いていた、あの十字架結構重いのだけれどアフロに挿したままペコペコお辞儀するなんて、やっぱり面白いね。


そのまま僕は思い出深いこの町を出た…




ジーザさんがこの町を去って早いものでもう1月が経った…

あれだけ賑わっていたこの町は静かだ、本来の姿なのだろう。

ハッカさんは相変わらず元気がない、姉さんがたまに顔を出してなにやら話をしているが会話はあまりないらしい。姉さんもそんなに話すタイプじゃないから当然か…


姉さんの入れたお茶を一緒に飲んで過ごしているらしい。



そんな中、ボレロさんから来て欲しいと声がかかった…


『姉さん、何かあったのかな』

『内容はまだ聞いていない。とにかく呼んで来てほしいと言われた』


僕はハッカさんに会うのを意図的に避けていた。合わす顔がない…それが本音。




意を決して、宿の中へ入る。

そこにはだいぶ痩せてしまったハッカさんが興奮した様子で座っている。

『武義君、早く座って』声に張りがある。


『急に呼び出してすまなかったね。このままではと思いエスの部屋を片付けていたらこんな物が出てきたんだよ』



手紙…


「俺の仲間達へ」と書かれた封筒。


『この場にジーザ君が居ないが開けてみようと思う』

ハッカさんは待ちきれないのか手紙に手を伸ばし、ゆっくりと開け、読み上げる。




みんなへ


この手紙を読んでくれたのなら、今そこに俺はいないということだ。

何となく嫌な予感がする。根拠はない。


俺が今もこの世に居るのなら一度アクアサークルの自宅へ戻ろうと思っている。


生きていれば稼ぎは必ず取りにいく。生きていればな。



ハッカへ、俺がどんな状況であろうと俺の影を追わないで欲しい、ボレロと仲良く、自身の幸せを追ってほしい。これが俺の願いだ。




短い、エスさんらしい。仲間で5人、いやこの町の親しい人すべて気持ちが近づいたと思っていた…あの人は孤高、そういう存在だったんだといまさら思い出す。



誰も声を発しない…



机を激しく叩く音が響く。

『お爺ちゃん、私行くわ。アクアサークルに』

『お前のことだ、好きにするといい…』


ボレロさんはもう止められないと解っているのか即答した。

『武義君達はどうするの、これから』


姉さんと顔を見合わせる…

『私はハッカさんについて行ってみたいと思う。いい』


『私は嬉しいけど…』

僕がどうするのかを気にしている様子、きっと旅なんてしたことないだろうから同姓の姉さんが一緒なら心強い、でも自分の都合を押し付けるわけにもいかないと思っているんだろうな…僕は、僕はどうしたいのか…



答えは既に決まっている。僕はエスさんに稼ぎを渡したい。


『エスさんに分け前を渡したいと思います。一緒に行ければ嬉しいです』

女同士手を取り合って喜んでいる。


『困った娘だが、よろしく頼むよ2人とも』

ボレロさんは深く頭を下げた。僕もボレロさんに深く頭を下げる。


それから3日後、僕ら3人はこの町を出た、エスさんのことはまだ何もわからない、でも先に町を出たあの人もきっと同じ気持ちで進んだんだと思う、そう思いたい。





『ハッカちゃんも出ていったんですね』

『ああ、思い込んだら耳を貸さない感じは娘にそっくりだ』


そう言いながらもどことなく嬉しそうです、はい。かわいい子には旅をさせろってことですかね。

静かな酒場に男3人、あの休み無しの日々が夢のよう…いや、夢だったのかもしれません。


とびっきりの人達が私に与えてくれた刺激的な日々と言う宝物…夢幻だから、儚いからこそ私の心に、脳裏に強く焼き付けられる思い。


『日常が戻っただけなのに、なんかこう、やる気が出ないというかなんというか』

『心にぽっかり穴が開いた感じでしょうかね』

『ボブさん、そうそう、そんな感じだよ』

『保安官の気持ち、共感できますね、はい』


『2人ともまだまだ若いな…』

ボレロさんに比べたら我々などひよっこなのでしょうね。


『今は、ただあの男の無事を…いや、祈る必要もないか』

『ですよ、ボレロさん』

『心配するだけ無駄ですよ、はい』


『日常に乾杯』

『『乾杯』』


明日は店をお休みにしますかね。


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