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『一体、どうしたらいいのか…』

店は静まり返り、誰もがどうしたらいいのかわからないのでしょう、私も一体どうしたらいいのやら、困りましたです、はい。



『町長、私は、いや私達はエスという男を知っている。あの男がどうにかすると言ったなら…きっとどうにかするのだろう。私もワンダーの前で備えることにする。では失礼』


ボレロさんはそれだけ言うと私の店を出て行った。


『そうだな…町長、避難したい者はなるべく急ぐように町のものに伝えてくれ。俺もワンダーの入り口で備えることにするわ』


ジョン保安官も席を立つ、駆け出しのカネホリ達も1人、また1人と席を立つ。

何も話し合ったわけでもなく、何となく…惹きつけられるように…



私も用意しましょう。朝ごはんの差し入れの…それとも夜食がいいでしょうか、迷いますねいやはや。両方でいいですな。ジーザ様から料金を頂きましたしね。


この町に流れ着いて、こうして店を始めて、今の賑わいも、以前の静かな様子もオアシスに沈む夕日のように輝く大事な宝物…

昔の銃は使い物になるでしょうか…いやいや、自分に出来ることを…これが大事ですな。



『ワンダー組に差し入れを用意しますよ。皆さん手伝ってもらえますか』

『『『はい、喜んで』』』


腕が鳴りますです、はい。





準備する物は多くない、では行くか…

『お爺ちゃん…』

『お前は寝ていなさい』

『嫌よ、行くわ』

『お前自身のことだ、好きにすればいい』


まだフラフラしているが歩くには問題ないらしい、ハッカの気持ちを考えれば1人寝て待つなどできるはずもないか…


『無理と無茶だけはするなよ。エスが戻った時に悲しむ…』

『わかっているわ、お金を手に入れずに死ぬ人じゃない…絶対帰ってくるから』

『行くか…』


2人ゆっくりとワンダーに向かって歩き出す。




『ジーザ様…』



『武義…来たのかい。足の調子はどう』

『もう少し休めば大丈夫かと』

『そうか…』


本当に、氾濫が起こるのか。エスさんがどうするのか一切わからない、できることは備え待つことのみ…


暫くして、ボブさんの店で見たことがる様な人が1人、また1人と集まってくる。誰も会話しない、静かに時は過ぎる。



『状況はどうだ』

ボレロさんとハッカさんが姿を現す。


『まだ何も…』

ジョンさんも到着して、ジーザ様、ボレロさんとなにやら話をしている。


ジョンさんは集まったカネホリ達に声をかけて回っている。



『武義、ボレロさんと少しここを頼むよ』

ジーザ様はそう言ってコルティックのキャラバンの方に歩いて行った。

その向こうには町から離れる灯りが見える、きっと様々なキャラバンや避難する人達の灯りだろう。


『武義君、これからワンダーの入り口を包囲する形を取ろうと思っている。ジーザ君が戻ったら相談するそうだ』

『わかりました』


ハッカさんはここについてから一言も発していない、姉さんが付き添っている。僕の足もだいぶ回復してきている。



ジーザ様がコルティック社の者を数名連れて戻ってきた。


ジョンさんが皆を集めてくる、ジーザ様は無言で大量の弾薬を皆の前に並べだす…

『みんな聞いてくれ。ここに残る者は弾薬を持って備えてくれ、これは僕の奢りだ』

それを聞き皆自分の銃に合う弾薬を順番に取っていく。


『コルティック社の救援は早くて一週間はかかるそうだ。当てにはならない』

コルティック社の面々は居心地がとても悪そうだ…本来なら救援に時間がかかる現状では撤収したいところだろう。企業の面子もあるから他のキャラバンのようにさっさと動けない…ジーザ様が連れてきたのは実質の人質か。


『僕はワンダー正面に立つ。同士討ちを避けたいから横一列になる。絶対僕より前に出るな、粉々になりたくなければな』


有無を言わせない口ぶりに皆静かに頷くのみ。ここに集まっているのは全員で30名程度…そこまで複雑に人の配置は出来ない、それならばわかりやすいほうがいい。最良ではない、妥当、といったところか。


ワンダー入り口に対して並行に線を引く、そしてその中央に座る。

僕と姉さんはその右に、反対側にはハッカさんとボレロさん、ジョンさんが座る。その両サイドに1人また1人と腰を下ろす…



僕はソニミオからパーツを取り出し組み立て始める。

『武義、面白い物を持っているね。弾はどれくらいあるんだい』

『町を半壊するくらいは…足りるかどうかはわかりませんが。僕の主力武器なので…』

こういった局面でしか使用できないが役に立つはず。


『もし、エスさんが出てきたら危ないのでは』

ハッカさんからの指摘に組み立てる手が止まる。

『エスなら大丈夫だよ、きっと潜り抜けてくるさ。でも、大物が出るまで撃たないように』

組み立ての手を進める。




『差し入れです、はい』

ボブさん達が夜食の差し入れを持ってきた。特に動きが無いまま緊張感だけが高まっていたこの場所の空気が少し和む。

それでもジーザ様は嬉しそうにはしているが、緊張感を保ったまま入り口を見据えていた。


美味しい食事を食べ一息ついたころ、状況は動いた。


微かな地響き…


ワンダーから小さく光るものが少しづつ出てくる…


誰からともなく発砲が始まる…


ジーザ様は動かない。ハッカさん達は既に攻撃を開始している。



『ボブ、早く下がっていろ』

『私はここで』

アフロから銃を取り出し撃ち始める。


戦わない者はすぐに避難を開始する。


浅瀬に出るような小型に混じって中層に出てくる牛や大蛇、狼等のアルコ種も混じり始める…


それらはジーザ様の銃撃によってあっけなく消えていく…


ワンダー入り口は大小様々な鉱石が月明かりに照らされ幻想的な光景を見せていた。


今のところ出てくる量はそこまで多くない、近づけずに消えていくアルコ種…



暫くして、アルコ種の湧きは終わった………




喚起に沸く全員に鋭い声が飛ぶ。


『本命が出てくる。気を抜くな。武義、構えろ』

強い地響きが足の裏を刺激する、全員が入り口に集中する。


亀…大きい、ゆっくりとワンダーの入り口が狭いのか、崩しながら進んでくる…ゆっくりと一歩…

地面が揺れる。

甲羅から出てくる頭には鉱石の輝き、全体のサイズは下層の先で見た巨大アルコ種の倍…


『手を動かせ』

亀の頭に数発叩き込むジーザ様。それに続くように頭への集中砲火。


首を引っ込めた穴へ向かって僕もガトリングを打ち込む、頭が見えないのでどれほど当たっているのかまったくわからない、動きは止まっているが状態はわからずに時間だけが過ぎていく。効いているのかいないのか…


ガトリングの砲身がうっすら赤くなる、このままでは…


『撃つのをやめろ。俺が様子を見る』


1人亀の正面に向かって進む姿を緊張した全員の目が追っていた…



聴力を奪い去るほどの咆哮と共に頭が真っ直ぐジーザ様を飲み込もうと迫る、その体が砕け散ったかのように見えた…


しかしそこには頭を地面につけた亀の頭とその上で銃口から煙を出した銃を構えるジーザ様の姿…

そして大きな地震と共にワンダーが崩れ落ちる、ハッカさんが何か叫んでいるが聞こえない、そもそも立っていられない…





揺れが収まり、砂煙が晴れていく…見えた先には光る鉱石の中うなだれるジーザ様ただ1人。


この町のワンダーはこの日消滅した…


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