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1人仮住まいに戻る。
購入したベルトをリュックタイプに取り付ける、身体に合わせてみる…
試しに少し動いてみる、本体も少し固定を増やして…
だいぶいいな、後は腕に取り付けるタイプのソニミオも固定を増やしてっと…
動きはだいぶ楽になった、その代わりにベルトだらけになったな。
月が綺麗だ、少し走りこみにでもいこう…
それぞれが準備を整え、いよいよ下層の先へ向かう日の朝が来た。
僕らは予定よりも早いペースで進み、順調だった…順調だったんだ、あの時までは。
『エス、この辺りの奴は片付け終わったね』
『そうだな、思ったよりもいいペースだから少し早いが今日はここまでにしよう、武義』
心得たように夜営の準備を行う、念のためといってジーザ様とエスさんはもう一度周囲を確認に行った。
『武義君、なにか手伝えることある』
『では、食事の準備をお願いできますかハッカさん。姉さんはあまり料理は得意でないので』
『武義、余計な情報はいらない』
『でも、姉さんの入れるお茶は最高の一杯ですよ』
『私、お茶大好きなので楽しみです』
『食後に堪能してもらう、楽しみにしてほしい』
姉さんの表情がスッと和らぐ、いつもこの表情なら世の男は姉さんをほっては置かないだろうに…
『いい香りだね、楽しみだよ。武義、ワインはどんなのがあるんだい』
『馬鹿、ワンダー下層で何言っている。酒は駄目だジーザ』
ジーザ様の後ろからエスさんが拳骨を落とす…よかった、私物のワインを出さなくて本当によかった。
食事をしながらジーザ様が思い出したように話題を出す。
『そういえばハッカちゃんのソニミオどうだったのさ』
『言ってなかったか…言ってないな』
『ジーザさん、詳しいことはわからないそうです。開発者さんと通信で話したんですけど、しっかり調べないと駄目みたいで…推測では急激に高エネルギーを加えたことで容量が押し広げられたのではないかって』
『へー。開発者といえばキャスとか言う女か』
そこまで気にしてないような返事を返すジーザ様。
『知り合いか』
『オーダーメイドの時に少し話した位だけどね。見た目はいいけど僕の趣味じゃないね』
『時間がかかるから断りましたけど、結構しつこかったです』
『まあ、そんなところだ。ところで』
エスさんが今日手に入れた鉱石をみんなの前に出してみせる。それを使い込まれた皮袋に仕舞い、こちらに差し出す。
『これは…』
『武義、お前に預けておく』
ジーザ様とハッカさんが少し驚いている。僕は驚かない、ボブさんから聞いた情報があるから…この後はの流れは契約書だろう。いつでもペンを出せるように気持ちを準備する。
『どうした、早く受け取れ』
ん、よくわからないが受け取れといわれるので受け取る。
『あの…契約書とかは…』
『いらないだろう、お前はそれを独り占めする気か』
『いいえ、そのようなことは絶対ありません。初めの話の通りきっちり5等分にします』
『武義を商人として信頼する。今回の経費、稼ぎの管理はお前の役目だ』
返事が出来なかった。ただ1つ頷く。
『では、私の入れるお茶を味わってもらおうか。武義手伝いを』
ありがとう姉さん…
『これは素晴しいね。ワインが無くても何も問題ない』
『本当に、どうやったらこんないい香りが出せるんですか』
『今度教えてあげる』
『美味しいけど2人の盛り上がりについていけないな俺』
『繊細な者にしかわからない味』
『『なんでわからない』』
軽く落ち込むエスさんを無視してハッカさんとジーザ様はお茶を楽しいんでいる…
『エスさん、仮眠はどのようにしましょうか』
『俺とジーザが交替で見張りをするから、後は3人で話をしてくれ。おい、ジーザ順番決めるぞ』
『えー、エスと一緒に寝るからいいよ』『駄目だ。というか嫌だ』『釣れないな』
うーん女同士の方がきっといいよな…
『姉さん、ハッカさん先に休む、どうしようか』
『ハッカさんをゆっくり休ませたいと私は思う。見張りは私と武義の交替でいい』
『いえ、私も見張りします。私もメンバーですから』
『では、先に休みましょう。武義お願い』
僕の返事は聞かずに簡易テントにハッカさんを連れていく姉さん。少ししてジーザ様もテントの隣でマットを引いて横になる。
ワンダー内は夜でも暗くは無い、多少暗くなるが灯りが必要なほどではない。駆け出しの方が引き際を間違える原因にもなってはいるが…
今はエスさんと向かい合わせで座っている。エスさんは目の前に銃を置き他の銃の準備をしている。
『武義、わかっていると思うが再確認だ。今回の稼ぎはお前に管理を任せた。必ず稼ぎにしろ』
『どうしたんですか念を押さなくても僕は商人でありこのグループの一員ですから』
『わかっているならいいんだ』
何も問題なく2日目を迎えた。
『あれは…』
『笑えるだろう、あれは前にいたのと一緒だな』
『そうだね。思い出すよあの2人過ごした時間を』
『その言い回しはやめろ、ジーザ』
『それよりも、あれクジラですよね』
『そうだよ、クジラだ。面白いだろう』
『『はあ…』』
ハッカさんとため息が被ってしまった。
『それでも、あれから規格外が出たのは間違いない。さあ、やるぞ』
狩りは問題なく、ジーザ様の2丁拳銃は凄かった…
『やっぱり2丁あると時間半分になるね』
そんな訳ないと心で思いながらも、1つ目の規格外をエスさんから渡される。
それからも巨大なカエル。凄い速さで動く巨大イソギンチャク。ヌメヌメしたトカゲ?
『足の生えた巨大貝とか、何の冗談だろうか』
『これだけ変なのが多いと感覚が麻痺してくるね。実に刺激的だよ』
下層の先はこんなのばかりか、特記すべきはそのどれもが耐久力が高く、必ず規格外と思われる鉱石が出ること…
『かなりの稼ぎが期待できるな、武義、金は大丈夫か』
『さすがにこれだけの量ですと少し時間を頂きたいです…』
手持ちでは確実に足りない、国に一緒に来てもらったほうが安全に取り引きできる。
『エスさんこのペースで行きますと清算に時間がかかりすぎます。よければ皆さんで実家まで来ていただけるとありがたいのですが』
少し考えている様子を見せる…
『みんな、昼飯にしよう』
簡単な調理を手早く行い人数分用意する。
『そこまで広くない通路だから、帰りは早いだろうな、今のところ規格外だけで5個。成果としては十二分と考えるがどうだろう』
『進むか、戻るかって。僕は進みたいね、こんな変なワンダーの先に何があるのか見てみたいからさ』
『私は戻るのがよいと思う。前例が無い今の状態は危険を感じる』
『私は、お金を返せればいいので判断は皆さんにお任せしたいです』
現状の意見は2つに分かれている、エスさんはまだ発言していない…きっとその発言で決まる…
『武義、お前はどう考える。聞かせてくれ…』
急に意見を求められる、エスさんの目は真剣だ、適当な返事は求めていない…のどが鳴る。
『僕はもう少し進んでみてはどうかと考えます』
『では、もう少し進んでみよう』
僕達はもう少し進むことになった…




