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『では、演習を始める。相手をしてくれるのはボレロだ』

『手は抜かないから、殺す気でお相手しよう』


いつもの表情とは違う、戦う男がそこにいた。



ハッカと武義はその雰囲気に飲まれ気味だ…


『そう、威圧するなよ。本当に誰か死んだら困るだろうが。使うのはゴム弾だ。当たれば結構痛いがな』


『なんでそんな物持っているのさ』

『昔、大量に押し付けられたんだよ、半分騙されたみたいな感じで』

『へー、シャルロットとボトムレス用はさすがに無いよね』

『それはさすがに無いな』

『残念、仕方がないからリトルマッハ使うよ。弾頂戴』



『ん、その手はなんだいエス。僕をエスコートしてくれるのかな』

『金だよ、金。この世にタダの物があると思っているのか』



ん、全員がかわいそうな物を見るような目で俺を見ている…なぜだ…そうか、肝心なことを言っていなかったからだな。


『大負けに負けて。10発1ジルでどうだ』

みんな無言…あまりの安さに驚きすぎたか。



俺の肩にジーザが手をポンと置く…そして綺麗な金髪だなって思ったら、俺の視界は金色一色になった。

『ジーザ、いきなり頭突きとはどういうことだ』

『エス、どういうことだはお前だ馬鹿者。自分で演習をセッティングしておいて、それに使う弾を売りさばく、よく考えろ』


ボレロはそれだけ言うと俺の頭を軽く叩いた。


ふむ、確かに。マッチポンプだな…


ハッカが異様に優しい目で俺に100ジル渡してくる…

『さあ、演習始めましょう』


………なんだろう、俺はそこまで変なことをしたのだろうか。

俺以外はなにやら簡単な打ち合わせを始めているのだった。




『では、私が空に向けて撃ったらスタートとしよう』

エスはなにやら腑に落ちない顔をしているが始まれば大丈夫だろう。



大きめの岩で身を隠しながら少し先の岩に隠れる、この演習のポイントは連携を取らせないこと…エスとジーザと言う者はそこまで積極的に動かないと思われる。

ハッカと武義とかいった男の子の背後が取れれば私の勝ちだろうな。


では、狩りを始めようか…


一発の銃声、賽は投げられた…


エスはわざと足音を大きく近づいてくる、足元の石を右の岩に向けて投げると同時に左に移動する。

銃声が二発、かなりいい腕だ…一旦距離をとり、右側へ一気に駆け抜ける。エスの足音は私が通った後をなぞっているようだ、まるで猟犬…


少し高台から目標を確認、ライフルでの狙撃…鈍い金属音、ゴム弾とはいえ銃弾を叩き落すとは、あの女性只者ではないな。

感心している間も無く私がいた場所に二発…少し遅れたのがハッカか…


回り込もうとした私の正面にゆっくり銃を構える男、いつの間に…ライフルを打ち込み斜め前の岩陰に飛び込む。

『うわ』後ろからエスの声。今しかない。


ライフルをハッカ達の方へ向けて三発、ライフルを捨てて一気に死角から斜め後ろへ…


銃を抜きながら姿を現す。


私の銃は武義という男の子の篭手に銃口を逸らされていた、私の顔の前にはハッカの銃口…



『勝負ありだ』




『では、感想を聞こうかボレロ』

『聞くまでもないと思うが。感想としてはこの演習は無意味ということくらいか』


『それをわかって聞いているんだけどな』

『それならばいい。いい動きだった、久々に楽しめたよ』

『演習が無意味とはどういうことですかエスさん』


武義が質問してくる。


『アルコ種はボレロほど考えて行動しない。そもそも1対5で俺達が負けることはありえない』

『ではなぜこのような演習を』

『武義、基本的な動きや咄嗟の判断、今の短い一戦でもわかることは多い。そうだよねエス』


『そういうことだ』


『あえて言わしてもらうなら…エス、ジーザ君、同士討ちになりかけたあれはいただけないな』

『思った以上に貴方の動きがよかったものだからつい当ててみようかと思ってしまってね』

『褒め言葉として受け取っておこう』

『僕はお世辞は言わない主義なんだボレロさん』



なにやら、通じ合うものがあるのかいい雰囲気だな…


『エス君心配しなくても君の方が素敵だよ』

『はいはい』




『それでは本番行ってみようか、準備するからちょっと待って』

エスさんは大きな岩に色の違うペンキで小さめの丸を7色7つ、岩を一周するように書いた。


『それでは説明しようか』

エスさんは私達を集めて話し出した…


要約するとボレロさんが岩の上から適度に攻撃、それを避けながらエスさんが指定した色の丸に攻撃…必然的に私の出番はほぼ無い…


エスさんも近接攻撃が無いから岩の周りをぐるぐる回るような動きか…



『では行くぞ。まずは赤』

『次、青。次、緑…』


最初は様子見。岩の周りを回るように隣の色、隣の色と順繰りに動く、4色目にはハッカさんと武義はついていけていなかった。ボレロさんの攻撃も無い…

エスさんが止まる。


『ハッカ、武義何かわかったか』


2人が顔を見合わせる、武義が手をあげる。

『では武義、言ってみてくれ』

『はい、大きく動く必要がある僕達では反対まで回り込むことが出来ません』


『そうかい、やろうと思えば結構いけるもんだよ』

『規格外は黙っていろジーザ』


そう言われてジーザさんはとても嬉しそう。

確かに、指定の色にはすべて1発ないし2発当てている。


『その通りだ、ではどうするか、動く範囲は無理ない程度にする。これが大事だ』

『でも、それでは攻撃が少ない回数になってしまうのでは』


『ハッカの言いたいこともわかるが、それぞれに役割がある。この5人で言うなら俺は敵の引き付け、ジーザはメイン火力、ハッカは補助火力で武義はサポート、舞は護衛。それに実戦では俺がなるだけ鉱石を見える位置に誘導する』


実際に無理な動きをさせて意味を教える、わかりやすい。

どんな相手が来るかわからないから考えて動かない選択も出来ないと危ない。


『わかったら、続けるぞ3人で動いて無理のない範囲を探ってくれ』


『『はい』』



そのまま2時間ほど演習は続き。ボレロさんとなぜか悪ふざけをしたジーザさんの弾を弾いていた。私の真価は実戦でということ。




『それでは、今日はこんなところで終了するとしよう』

これはキツイ、荷物番かと少し拗ねていた自分の見通しの甘さがハッキリした。

荷物はソニミオ内とはいえ身体に固定できるようにしておかないと姉さんの動きはわかっていたがハッカさんもかなり身軽だ、口の広いリュックタイプのソニミオを使っているが、ベルト等を取り付けて背中で暴れないように固定が必要、靴も制動にすぐれたスパイクが少しついたタイプを用意しよう。


『どうかしたの』

ふと気づくとハッカさんが覗き込んでいる。

『わわわ、いえ、少し考え事をしていただけですので』

『武義、悪い癖』



『顔が真っ赤だよ、武義…うぶだね』

『ジーザさん、そういうのじゃないですから』

『ムキになるとは、怪しいね。みんなでボブのところに行こうよ。ボレロさんも是非一緒に飲みたいよ僕のお願い聞いてくれないかい』


ボレロさんは顎に手を当てて『たまにはいいだろう』といって戸締りをしにいった。


『僕は少し準備もあるので』

『強制はしないよ。自由を尊重するのも僕の流儀だからね』

『では、私も武義と一緒に…』『いや、姉さんは皆さんと一緒に行って来て』

『しかし…』

『姉さん、ここは比較的治安もいいし、護身くらいは出来るから大丈夫だよ』


いつも守られているわけにもいかないしな…



品物をを購入予定のお店を回り、あいさつをする。くどくならない程度に、小まめに顔を出す、顔を覚えてもらい礼を尽くす。親しくなれば相手だって良くしてくれる。

必ず、何かを買うことも忘れない、今回は自分用のベルト等も必要だからそれについても出来るだけ相手に相談する。

頼られて悪い気がする商人はいない…僕もそうだから。


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